メリークリスマス

そして、医療従事者の皆様方へ。

皆様の献身的なお仕事が、いかに私たちの日々の生活を支えてくださっているのか、改めて教えられました。旅行や会食などとは無縁の毎日。年末年始もほとんどないことを存じております。心より感謝申し上げます。この思いが皆様の元へ届くことを心より願っております。

お身体に気をつけてお過ごしくださいませ。

私は今年、喜寿を迎えました。大病をすることなく、ここまで無事に歩んでこられたことに、感謝の気持でいっぱいです。何か記念に残るものをと思い、漆芸家の浅沼ゆう子さんのペンダントをもとめました。わずか2cmの可愛い天使。バロックの淡水真珠に蒔絵で天使が描かれています。お洋服のボタンまで。

まもなく一年が終わろうとしています。2021年が良い年になりますように。

そして、私のつたないブログにお付き合いくださった皆さまに心より御礼申し上げます。寒さも厳しくなってまいりました。ご自愛のうえ、来年こそよい年になりますようお祈りいたします。

はるにれ

長女が幼稚園に通っている頃に、『はるにれ』(写真・姉崎一馬、福音館書店)という絵本をよく読みました。読むといっても、その絵本に文字もなく、絵もなく、あるのは写真だけ。その写真が素晴らしく、語りかけてくるものの力強さに圧倒され、子どもよりも私のほうが夢中になってしまったのです。

主人公は北海道の十勝平野に立つハルニレの大木。

春、ハルニレは命の開花をします。芽吹きの葉の美しさは輝くばかり。夏に向け、枝は緑の葉を青々と繁らせ、充実の時をむかえます。

そして秋、葉は色を変え、まろやかに穏やかに変貌しはじめます。茂り実り、燃えるように色づき、ある日一陣の風が吹き、季節は冬に。ハルニレの木は、寒風に耐えつつ凛と枝を伸ばし、太い根は雄々しく大地をつかみ続けます。

そんな一本の木の、一年のさまざまな表情とドラマを、私たちに見せてくれる本でした。

私にとって木は特別なものです。

樹齢何百年という大木のそばに行くと、その太い幹にそっと体をすり寄せたいという衝動にかられます。手で触れると、何か人知を超えた天空の意思を感じ、その木からエネルギーのようなものが体の中にどっと流れ込むのを感じます。

太古に通じる水脈から命を得、時空を超えて屹立する木には、人を癒し、浄化し、勇気や元気をくれる力があるように思います。

コロナ禍のなかにあって、私たちは息苦しさを感じ、乗り越えようとしています。あと少し、あと少し・・・深呼吸をして。人は人と出あうことで悲しみを分かち合い、喜びを倍にできる・・・あと少しです。

『はるにれ』の木が見守ってくれています。

映画『おもかげ』

微妙に揺れ動く女性心理をこれほど繊細に描ききるとは。監督の感性が、どきりとするほどスクリーン全体に溢れ出ていました。スペインのロドリゴ・ソロゴイェン監督は最新作の「おもかげ」で、主人公の心のひだを一枚、一枚、丁寧に解きほぐしていきます。

マドリードに住む女性の元に、6歳の息子から一本の電話が入ります。息子は、別れた夫と2人でフランスを旅行していました。しかしその電話の内容は、どこかの海辺で父親と離れ離れになり、迷子になってしまったというものです。しばらく話すうちに電話は切れてしまい、連絡は一切取れなくなります。

これが冒頭のシーンです。まさにスリルに富んだ、”サスペンス映画”を思わせるスタートです。そして、この約15分間のシーンは基本的に編集をしておらず、いわゆる”ワンカット”の映像なのです。いやでも緊張感が高まり、迫真の展開に引き込まれていきます。

そして次ぎのシーンは、10年後に飛びます。まだ見つからない息子の姿を追い続けながら、フランスの海岸でレストラン従業員として働く女性。そこで遭遇する少年に、彼女は息子の面影を見るのです。周囲を巻き込みながら、二人は精神的なつながりを急速に深めていきます。

実は最初のシーンは、ソロゴイェン監督が3年前に作った短編映画でした。ヨーロッパ各国で高い評価を得ましたが、監督はこの短編をそのまま導入部に置いて、今回の作品を企画・制作したのです。テーマは一人の女性が生き抜いていくことの苦悩と、再生への決意でした。

彼女の心の葛藤は、海岸に繰り返し打ち寄せる大西洋の荒波が見事に代弁していました。撮影、編集など技術陣の確かな力量が遺憾なく発揮されていたのです。

多くの謎が謎として残されたまま、ストーリーは進みます。悲しみも憎しみも、そして愛情や希望さえも、彼女は身ひとつで受け止める覚悟をかためたのでしょう。一見、唐突とも思われるラストシーンは、おそらく監督の問いかけだと感じました。受け止めは、見る側に委ねられたのです。

今年39歳のスペインの監督は”心理劇”の名手といっていいでしょう。そして、息子の影を追い求める女性を演じた同じスペインのマルタ・ニエトさん。彼女は母として女性として、揺れ動く心模様をドラマティックに表現していました。ヨーロッパでは既に多くの賞を受けるなど、実力派としての評価が定着しています。彼女も来月、39歳の誕生日を迎えます。この同年コンビに、これからも目が離せなくなりました。

映画公式サイト
http://omokage-movie.jp/

紅葉の美しい箱根

箱根の紅葉は芦ノ湖からはじまる、と言われています。

早朝のウォーキングでまだ人のいない湖畔沿いを堪能してから家へと戻ります。

「そろそろ強羅の紅葉が見ごろを迎えたころだわ」と11月下旬の晩秋の晴れた日に出かけてきました。

この頃は「小さな旅」を楽しんでおります。近くて混まない時間に・・・贅沢な楽しみ方ですね。

普通ですとバスで国道一号で乗り換え1回で行けるのですが、”旅気分”を味わいたくて旧道をバスで下り、箱根湯本駅まで行き、登山電車で強羅駅までのコースです。

2019年10月の台風19号で湯本~強羅間で甚大な被害をもたらした箱根登山電車。当初は2020年秋に復旧の見通し、と言われておりましたが3ヶ月前倒しで7月23日に全面開通しました。

「当初はどこから手を付けていけばよいか、分からなかった」という関係者。バスから見上げると沢から流れ落ちた大量の岩石、崩れた陸橋、「復興は可能なのかしら?」とも思ったほどでした。

昼夜を問わず復旧工事をしている姿を目にしておりましたので、「ぜひ乗ってみたい」と思いました。スイッチバックをしながら登る登山電車。その健気な姿に感動をおぼえました。車窓からも美しい紅葉が見られます。

強羅駅からは坂道を(けっこう急です)を上っていくと「箱根美術館」に着きます。(ケーブルに乗れば一駅)

日本古陶器を中心に展示されいる箱根美術館は国の登録記念物にされた庭が美しく、苔と紅葉で多くの方が季節には訪れます。苔の緑と200本以上のモミジ、竹庭に紅葉が映えます。11月中旬から見ごろを迎えますが、まだ12月上旬までは美しいです。

コロナ禍のなかでも、密をさけ美しいものを観る、感動する”小さな旅”は私にはとても大切なひとときです。

寒さも深まり晩秋から季節は初冬へと移り、あたりも枯れ色が増してきました。 「冬紅葉」も散り遅れて枝に残る季節。日本の一番美しい季節ですね。

箱根美術館 公式サイト
http://www.moaart.or.jp/hakone/