『片岡鶴太郎~こころ展』と『箱根三三落語会』

『片岡鶴太郎~こころ展』を明日10月29日から11月4日まで
箱根「やまぼうし」で開催いたします。

今回の展覧会は鶴太郎さんと私、お互いに「椿」が重なります。
彼は寒さ厳しい2月の早朝、お隣の庭に鮮やかに咲く朱色の
「椿」に出会い、その美しさに感動し、
「この花が描けるようになりたい」と思われ、
それが画家としての原点となったそうです。
私が17歳の時に出逢った古信楽の壷。
それから50年以上を共に歩んできたこの壷には「寒椿」が
よく似合い、毎年冬になるとそっと椿をいけて楽しんでいます。
今回の展覧会にこの壷に椿を活けた「蹲二椿」を描いてくださいました。
絵画、ガラス、陶器と素敵な作品の数々が出品されております。
ぜひお越しをお待ちいたしております。
http://www.mies-living.jp/events/2011/kokoroiro1110.html

そして来月12日は「箱根三三落語会」を開催いたします。
30名様限定のとても贅沢な落語会。三三師匠の素晴らしいお噺に加え
落語終了後に師匠とご一緒する食事会もまた魅力の一つです。
“まくら”を聴いているような、素顔の師匠のお話を伺うことができます。
http://www.mies-living.jp/events/2011/hakonesanzakai1111.html

『瀬戸内の”国宝と美術”を巡る旅』

雑誌「サライ」(小学館)の撮影で瀬戸内を2泊3日の旅をしてまいりました。
このごろは時間が許す限り飛行機よりも新幹線。
新幹線よりも在来線で・・・が多くなりました。
“寄り道”の旅が心地よいですし、車内での時間が至福のひとときです。
スタッフとは広島で合流し宮島口からフェリーで厳島神社へと向かいます。
海を渡る風が心地よく、旅の始まりの素晴らしい予感がいたします。

何度も訪れているのに発見はありますね。
前回は、裏の路地のちいさな”もみじ饅頭”のお店を見つけて一休み。外国人も何人かご一緒でした。
旅の発見は裏道にあり・・・が私のモットーです。
今回は、牡蠣のおいしそうな焼ける匂いに誘われて見つけたお店。
さっそく入り白ワインと焼いた牡蠣で乾杯!
なんて・・・国宝の厳島神社のことは「サライ」を是非お読みください。

尾道では、国宝の寺「浄土寺」へ。
ここは映画「東京物語」のロケ地にもなっています。
目の前を山陽本線が走っています。


直島の「直島・地中美術館」
この美術館はかねてから訪れたい・・・と思い続けていた場所です。
自然と融合した、島の人とアートが一体となり、訪ねた人を迎え入れてくれます。現代アートも自然光に優しく包まれていました。
いつか、夢ですがこの島にしばらく滞在し心置きなくこの空間に身をあずけたいと思いました。
美術館の屋外には、草木や睡蓮が浮かぶがモネの庭をイメージして作られていました。約200種類以上の草花が一年中咲き誇っているとのこと。パリ郊外のモネのアトリエも訪ねましたが、直島も素敵です。

倉敷の「大原美術館」
ここにはたくさんの思い出があります。
10代のころからどれほど訪ねたでしょうか。
今回も「エル・グレコの受胎告知」に出逢えました。
悲しいこと、辛くて耐えられないほどの悩みを抱えていた時、幸せに胸を震わせていたころ・・・この絵に支えられました。
最後は道後温泉。「正岡子規記念博物館」へ。
ここは30年ほど前、オープンの時におじゃまして以来、何度か訪ねています。
漱石と子規がどんな会話を交わしていたのでしょうか、座敷に座り想像します。
平安時代に想いを馳せ、また美しい美術に魅せられ、美味しい料理とお酒を堪能。素敵な旅ができました。
詳しくは是非「サライ」をご覧ください。11月10日発売です。

柳家小三治師匠

皆さまは三連休はいかがお過ごしでしたか。
私は日曜日に上野・鈴本演芸場に落語を聴きに行きました。
柳家小三治師匠の追っかけを始めて12年になります。
連休の真ん中、箱根の山から下りるのはさぞ混んでいるのではと思い、新道経由のバスで早めに小田原に向かったのですが、意外にスイスイと着き、新幹線に乗り、東京駅で時間まで少々のビールと一緒に遅いランチをいたしました。
地下鉄に乗り、上野広小路駅の階段を上ると、演芸場の前の道にはすでに長蛇の列。でも、30分並んで座れて聴くことができました。立ち見も出る満員御礼。
鈴本演芸場、新宿末廣亭、独演会にも、可能な限り駆けつけます。
前売り券は電話をひっきりなしにかけ続け、気合でとります。
立ち見で聴くこともありますし、当日券を求めて今回のように窓口に並ぶこともあります。
人生半ばを過ぎてから、これほど胸をときめかせることに出会えるとは思いませんでした。
なぜ、これほど小三治師匠に惹きつけられるのかしら。
心が震わせられてしまうのかしら。
これまで何度も自問してきました。
師匠が登場しただけで、さっとその場の空気の色さえ変わってしまいます。
派手なしぐさもありませんし、見せ場を強調することもありません。
気がつくと落語の世界に心地よく誘われ、そこに人々の姿が生き生きと見えてくるのです。
そしてすするお茶の熱さや風の冷たさまで肌で感じ、人々の暮らしのさんざめきを聞き、夕餉の匂いまで胸いっぱい吸い込んでいるような・・・。
橘連二さんの写真集『柳家小三治 』(河出書房新社)を開いた途端、その答えが改めてわかったという気がしました。
ため息がもれそうに美しく神々しいといいたくなるほどです。
後姿や、膝の上で握られた手の写真に、胸をつかれました。
そう、人間・柳家小三治師匠の深い魅力がにじみでているのです。
だからこそ、その横顔がふっとのぞける”まくら”にも私は魅了されるのでしょう。
たった12年の落語愛好家にすぎない私には難しいことはわかりません。
いえることはただひとつ。
これからも小三治師匠の追いかけはずっと続けるということ。
写真集ご覧になってください。
きっと私のこの想いを分かってくださるはずです。
そして、寄席でお逢いできたら嬉しいですね。
幕が下りるまで、頭を下げ続けていらした姿が目に焼きついております。
美しい日本人の姿、カタチ・・・
素敵な休日でした。
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幸せパズル

素敵な映画を観ました。
“日本から一番遠い国”アルゼンチンの映画です。
監督はこの映画がデビュー作となるナタリア・スミルノフ、女性監督のオリジナル脚本。
何気ない日常の暮らし中から見えてくる、女性のふとした戸惑い、悩み喜び。女性監督ならではの機微が表現されていて、2010年のベルリン国際映画祭で「傑作!」と大絶賛を受けたそうです。
パンフレットには
「自分だけの時間が、妻でもなく、母でもない、”本当のわたし”を教えてくれる。」とあります。
南米・アルゼンチンの首都ブエノスアイレス。
主人公のマリアは専業主婦。夫と2人の息子の幸せを生きがいに暮らしている女性。ジグゾーパズルの才能に目覚め生活が一変します。
現代アルゼンチン、およびラテンアメリカ社会の女性解放について 監督のナタリア・スミルノフはインタビューに答えています。
「誰にでも自由は必要で、誰もが正当に扱われなければならない。しかし我が国では未だに、”マチスモ神話”が根強く残り、家庭内暴力が多く、人々の文化や結婚生活に大きく影響しています。
女性が生活できるだけ収入を得て、自立し、大人の人間として生きられる環境が必要です。家族が皆去った後の人生がどれだけ悲劇的か。ひとり残され多くの女性達は50歳を境に発狂するほどの苦しみを味わうのです。情熱の対象をひとつも持っていない専業主婦がたくさんいます。専業主婦であることが間違いではないのに、バランスをとるのは難しいのです。”母親たちが幸せなら、世界はもっと良くなりますよ。”」・・・と。
主人公のマリア(マリア・オネット)は夫・ファン(ガブリエル・ゴイティ)に愛されています。
マリアの微妙な心のひだを完璧に演じています。
表情だけで演じきる主人公マリアに共感し、ひとりの人間の揺るぎない生き方に感動を覚えます。
笑顔が美しい・・・
涙が美しい・・・
ラストシーンはその表情が見られるでしょうか。
小さなことでもいい、自分だけの充足の瞬間を持つこと・・・の大切さを教えてくれる素敵な映画でした。