パリ・恋人たちの影

皆さま(同世代の方)は1960年代はどんな映画をご覧になっていましたか?
私は圧倒的にヌーヴェルヴァーグが多かったです。女優になりたての頃、所属していた東宝の方に「カンヌ映画祭」に連れて行っていただき、「監督週間正式出品作品」でジャン・リュック・ゴダール、ロマン・ポランスキー、フランソワ・トリュフォー監督などに強烈な印象を受けました。
その時代『ヌーヴェルヴァーグの”恐るべき子ども”』といわれたのが今回の”パリ、恋人たちの影”の監督で16歳で短編映画監督としてデビューした、フリップ・ガレル監督なのです。68歳になった彼の最新作です。
共同脚本、撮影監督は「昼顔」「満月の夜」「勝手ににげろ・人生」など数々の名作を世に送り出し映画界をリードしてきたベテランたち。
モノクロの映像美に、いえモノクロだからこそ映る透明感のある色に、魅惑的に描く監督に脱帽です。ストーリーは骨子だけとりだせば、どうということのない夫婦とそこにかかわる男と女。ある意味フランスらしい物語。
主人公は中年の映画監督ピエール。その彼に寄り添うように妻マノンは彼の才能を信じ、第二次大戦中の対独レジスタンスに参加した老人の記録映画を撮っています(これが後の話に大きくかかわってきます)そんな彼が若い娘と恋に落ち、また妻も別の男と通じていて・・・それを知った夫は妻に詰め寄り男と別れさせる。
監督はインタビューで語っています。「私にとって女性と男性は対等です。社会はつねに男性には寛容ですが、女性にだって同じ権利があるはずです」
モノクロ・女優たちはノーメイク、ガレルの目は絶えず愛をテーマに撮り続けてきて、68歳になりその研ぎ澄まされた感性の中に哀しみや愛おしさが体現されていて、映画を観終わり傷つきながらも、孤独を抱えながら、愛に光りをあて続けてきた監督がとらえた世界は宝石のように見えました。
ガレル監督らしい素敵な映画を堪能できました。監督の息子ルイ・ガレルのナレーションが秀逸です。(渋谷のシアター・イメージフォーラム他にて)
映画公式ホームページ
http://www.bitters.co.jp/koibito/

豊かな人生を送るヒント

主婦の友社から出ている雑誌「ゆうゆう」が創刊15周年を迎えられました。
“おめでとうございます”
50代からの女性の上手な年齢の重ね方、生き方、暮し方などを紹介してくれる素敵な雑誌です。私も時々出させていただいておりますし、暮れにはひと足早い「クリスマス会」をわが家で読者の方々とお茶をご一緒して楽しいひとときを過ごします。
今回、創刊から現在までを振り返り、人気のあった企画をピックアップし、『豊かな人生を送るヒント』として一冊のムック本がでました。


「人生、面白がってこそ」では作家の素顔、佐藤愛子さん、瀬戸内寂聴さん、曾野綾子さん、田辺聖子さん。やはり人生の達人です。拝読し学ぶことばかり。
「50代からの友達づくり」は内館牧子さんと吉永みち子さんの対談。「私たち、性格も生活信条も違う。でも違うからこそ話していて面白い!」と吉永さん。『友達とは?』を教えてくださるお二人。私は大ファンなのです、お二人の。憧れます、こうゆう友情に。つい”おひとりさま”を怖がりすぎる・・・と内館さん。「友達はいなければ、いないでもいい」。そんなふうに思うことも実は必要じゃないかな」とおっしゃる吉永さん。お二人とも仕事を持ち、様々な人生を経験して・・・今日を素敵に生きていらっしゃいます。
「言葉が紡ぐ女優の人生」には市原悦子さん、草笛光子さん、八千草薫さん、岩下志摩さん、松坂慶子さん、浅丘ルリ子さん、木の実ナナさん、中尾ミエさん。
「生きる力が沸く 元気習慣」では私が尊敬する生活評論家、今年95歳の吉沢久子さんと消費生活アドバイザーの河部絢子さんとの対談。
「くよくよしない、ストレスをためない。きちんと食べて、ちゃんと寝ることが大事。」と吉沢さんはおっしゃいます。ある意味65歳になってから本格的に仕事に没頭できたのではないでしょうか。「基本的にはのんきな性格」だとか。でも吉沢さんの生き方には「人生のエッセンス」がいっぱい。そうですよね・・・くよくよしたってはじまりませんものね。思わず読みながらうなずく私。
「ひとり達人の極意」や、定年夫と楽しく暮す「妻の心得帳」などなど。
そして、人生を味わい深くする「映画の時間・本の時間」
私は映画の時間で出させていただいております。
「映画の”ときめき”は、私に栄養を与えてくれます」
私が今まで10代の頃から観てきた映画。
大人の恋の気分にひたりたいとき  『カサブランカ』
青春のきらめきに再会したいとき  『追憶』
セクシーな男性に魅了されたいとき 『ドクトル・ジバゴ』
人生に緊張感をもちたいとき    『クロワッサンで朝食を』
まだまだご紹介したい映画はたくさんあるのですが・・・。
そして、感動した新作映画のお話などを昨年インタビューしていただきました。映画にたいする想いや、魅力についてなど。私は出演するより観るほうが好き(笑)です。古い映画でも何度も何度も見直すと過去の自分を振り返ったり、そのときの自分に重ねたりして毎回感動を得られます。
『ゆうゆう創刊15周年スペシャル』(主婦の友社・定価540円)
お手にとってご覧ください。素敵な一冊です。

寒中お見舞い申し上げます。

皆さまはお正月どのようにお過ごしになられましたか。


元旦の明け方、庭に出てみると日の出前の光がほのかに茜色に染まり「初晴れ」の予感がいたしました。そう・・・元旦は箱根の山は穏やかな光が射し、富士山も素晴らしい姿を見せてくれました。


私のお正月は箱根神社に参拝し、お節をいただき、2、3日は「箱根駅伝」の応援。わが家のすぐ下が駅伝のゴール地点です。今年もたくさんの感動を選手の皆さんからいただきました。
そして、5日は恒例になっている上野の鈴本演芸場に平成29年正月初席「吉例落語協会初顔見世特別公演」を聴きに行きました。
お正月は多彩な顔ぶれ。粋曲は柳家小菊さん。三味線の音色に和服姿の小菊さんの都都逸から、柳家権太郎さん、お正月らしい太神楽社中の寿獅子舞い、そして・・・もう恋なのかもしれないというときめきをくださる柳家小三治師匠。
追っかけに夢中です!人間国宝の師匠には失礼なのですが、人間の可愛らしさ、愛おしさをこれほど体現してくださる方がいらっしゃるでしょうか。師匠の「噺のマクラ」の面白さといったら・・・日常の出来事や、興味のあること、普通にとりとめもなく話すだけなのに、胸をときめかせてくれます。
師匠の落語は、登場人物のもつ空気感というものまでじんわり伝わってきます。時代背景、場所の雰囲気、人々の息遣いまで感じとれます。”そこに生きている人たち”の会話を聴いて、思わずクスッとしてしまう。
『笑う門には福来る』と昔から言われますが、新年を迎え演芸場に笑い声が響きます。
先週のある新聞に「笑う門には健康来る」と掲載されていました。医学的に「笑い」は様々な健康効果があるそうですね。新年を迎え、今年は去年よりも「明るくよい年にしたい」と願う人たちのような気がしました。さぁ~、皆さんも大きな声を出しで笑ってみましょう!


そして、演芸場では紙切りの林家正楽さんの”お客さまのご注文”での紙切りが続きます。門松、鶴、可愛い女の子は「ピコ太郎」のご注文。
正月初席のトリは小三治師匠からお弟子さんの三三師匠へとバトンタッチされました。
人生のすべてがあるといわれる落語の笑いの中には、人間に対する優しさのようなものがあります。だからこそ、大人が心から笑えるのではないでしょうか。
今年は世界中で様々なことが起こるであろうと予測されます。
落語のように「人間に対する優しさ」で解決できないものでしょうか。
七草粥をいただきながら、豊作や無病息災を祈りました。
2017年が皆さまにとって幸多かれとお祈り申し上げます。