『新しい年によせて』


2023年が始まりました。いかがお過ごしでしょうか。

昨年は、当たり前と思っていたものの大切さを改めて実感させられた年でした。

コロナ、ウクライナ侵攻、気候の激烈な変動、迫る世界的飢餓……。人々の暮らし、それぞれの地域で育まれた豊かな文化、人の命が、今も危機にさらされています。

日本の脆弱さもあらわになりました。自給がのぞめないエネルギー価格が急上昇したのをはじめ、さまざまな輸入品が不足、急騰し、暮らしを直撃しました。

「輸入が止まったらどうするの? 農業を振興し、自給率をあげ、安全安心な食を生産し続けてもらわなければ、未来を担う子どもたちの命が守れない」という思いから、私は40年前から、食と農に携わってきました。がんばっている農家を支えたいと、農に携わる女性たちとネットワークを作り、さまざまな活動も行ってきました。

世界規模での自然災害発生、人口増加による需給ひっ迫など、食を取り巻く問題は今後、さらに厳しさを増していくともいわれますが、残念なことに、抜本的な食の国家戦略、外交戦略は作られないまま、今に至っています。

「食料を自給できない国は真の独立国ではない」といったのはフランス元大統領ジスカール・デスタンでした。

今年は、みんなで食と農に向き合いませんか。

求めるのは「安ければいい」食・農ではなく、「命を守る・本物の」食・農です。

国民が必要とし消費する食料はできるだけ国内で生産しなくてはならないと、JAは「国消国産」を掲げ、全力で取り組んでいます。

私の仲間も、農家民泊、農家カフェ、農家レストランとビジネスを広げ、各地で活躍しています。そのお子さんやお孫さんが次の担い手として農に向き合っています。

時代のニーズを見据え、さらに新しい形で農を活性化させている若者もいます。

安全で確かな食べ物を子や孫に渡すために、本物を作るこうした生産者を、私たち消費者がしっかり支え、強い農業を作っていかなくてはなりません。

食の安全保障こそ、今、いちばんに取り組まなくてはならない課題だと思うのです。