近畿大学

「近畿大学・総合社会学部」で、客員教授をつとめさせて頂き、明日から始まる授業で4年目を迎えます。
「自分らしさの発見~暮らし・旅・食がもたらすもの」というテーマです。
まず、私が学生にはじめに話したことは
「机の上の学問だけでなく、現場に赴き、この目で見、
耳で聞き、肌で感じながら多くのことを学んでほしい」
ということです。
それは、私自身がそうして人生を歩み、学んできたからです。
「大地を歩き、人に出会い、話を聞き、語り合い、その中から見えてくる
切実な現実から導き出された問題解決にこそ、真の力が宿る」と。
キャンパスを港としてフィールドワークにでかけましょうよ。
そして、この3年間それを行動に移してきました。
三重県・答志島の寝屋子制度。

若狭・三森の我が家での2泊3日の合宿。

参加した生徒のレポートでは
「多くの知識を学んだというよりは、本当の自分の肌で
「自然の大切さ」みたいなものを感じることができた」
「囲炉裏や縁側があって、昔は当たり前だったのに
少なくなっているのが寂しい」
「専業農家の話を直接聞き、新規参入した若者に話しが聞け、
都会暮らしの自分たちには「農・食」は遠い存在だったけれど、
TPPの意味、など大切なことだと感じた」
「大学の4年間で、私は地域経済をどのようにすれば
活性化できるのか、経済がなりたつ農山漁村のことを学びたいし、
やはり現場を歩く大切さを実感した」
等など様々な感想が寄せられました。
農業にはまったく縁のなかった彼ら。
日本の社会は全体が大きな転換期を迎えています。
人びとを支えている歴史、風土、地域共同体のありよう。
同時に、それらを通して自分が見えてくること、
自分が何を大切にし、何を美しいと感じ、何を求めて生きているのか。
人は一人で生きているのではない、多くの人に支えられて生きているのだということを、常に感じてほしい。そして、生きる力を育んでほしい。
食・農・に関心が薄い・・・といわれる大学生。
でも、私の実感としてはそのような環境に恵まれていないだけで、彼らは生きることに一生懸命です。
IT時代で、人と人が目を合わせて語ったり、笑ったりするコミュニケーション力が不足しているだけ。失敗しても試行錯誤を繰り返しても、またいつからでも人は立ち上がることができる。そうした健やかな心を支え、育ててくれるのは、人と人の温かい絆が生まれる現場。
大学を卒業すれば、多くの学生さんは社会にと羽ばたいて出ていきます。
だからこそ、どんなこことがあっても、いつも心に希望を抱き、前に進んでいける、しなやかな心と知性を、大学で身につけていただきたいと私は願っています。
私が講義を担当させていただくのですが、学生たちとのやりとりを通して、「私もまたもう一度学び直すことができるのではないか」・・・とわくわく胸をときめかせています。
残された1年、楽しみながら頑張ります。

一途一心、命をつなぐ

天皇陛下の執刀医・天野篤さんが「一途一心、命をつなぐ」(飛鳥新社)を
上梓されました。
文化放送「浜 美枝のいつかあなたと」(日曜10時半~11時)にお招きしお話をお伺いいたしました。
心臓外科医として30年。これまでに手掛けた手術は6000例を超える天野さん。去年2月18日には、天皇陛下の心臓バイパス手術を執刀し、その名が全国に広まりました。
そんな天野さんですが、『挫折から始まった』とおっしゃいます。
天野さんは、1955年、埼玉県蓮田市のお生まれ。
日本大学医学部を卒業後、関東逓信病院(現NTT東日本関東病院)で研修を行なった後、鴨川市の亀田総合病院、松戸市の新東京病院などの民間病院で、20年近く勤務。
昭和大学横浜市北部病院・循環器センター長・教授を経て
2002年から、順天堂大学医学部の教授です。
スタジオに現れた天野先生は穏やかな笑みをうかべ、
ダンディーで素敵な方です。
3浪目で心から医師になりたいと思われたそうです。
挫折もいくつか経験し、最も大きな挫折は、心臓外科を志す動機であり、
支えであったお父様をご自分の判断ミスもあって失ったことだそうです。
お父様は、3回目の手術で亡くなってしまいます。66歳の時。
天野さんは、すでに心臓外科医になり、手術には立ち会ったそうです。
トラブル続きの手術。”今なら絶対に助けられた”・・・と。
2011年3月11日、午後2時46分。
東日本大震災が起こったときも、手術をしていました。
手術室は大きな横揺れに見舞われ手術機器がずれ動き、血液は波打ち、
皆で必死に体を押さえ、中断するわけにはいきません。
なんとしても手術を続けなければなりません。
「お前ら死んでも、この患者さんは助けるからな!持ち場をはなれるなよ」
そんな言葉が口をついて出たそうです。
「患者さんの命は今、自分の手の中にある
心臓を止めたままで終わらせることはできない。
預かった命はちゃんと元気にして戻さなくてならない。
前身全霊を傾けて命を守る義務がある」
そんな思いで手術を無事に終え、
「大丈夫ですよ、きちんと乗り切りました」と家族に告げると、
涙を流して喜んだそうです。
人の役に立つことができる”手術という力”を持てたことを心から感謝している・・・ともおっしゃいます。
手術をするだけが外科医ではない・・・とも。
小学生の頃はプラモデル作りに熱中。家庭科は5。
手先はとても器用だったそうです、子どものころから。
日本中が注目した手術。
2月18日、東大病院において東大と順天堂大学の合同チームによって
天皇陛下の冠動脈バイパス手術が行なわれました。
結果は、皆さまもニュースでご覧になったでしょう。
“いつも通りにしっかりやれば、絶対に何も起こらない。心配しなくていい。”
お仲間と前夜はイタリアンに行き、リラックスして手術に臨んだそうです。
“いつも通り”
これが難しいのですよね。
ここまでがんばってこられたのは、好きなことをやっているから、好きだから、とことんがんばれる。諦めずに、目標に向かって進んでいける。
やっぱり大切なのは「愛」
「この人のために少しでもいいことをしてあげよう」
「がんばっているから、できるだけ力になってあげよう」
相手に対するおもいやり。
「愛」があれば、普段はできないようなことができたり、難しい局面を乗り越えるパワーが生まれるわけです・・・と。
そして、「天皇陛下の執刀医」と呼ばれることについて、「光栄なことですが、脱皮しないといけないと思っています。これまで以上に、一心臓外科医としての道を極め、努力し、得がたい機会の恩返しがしたい」とおっしゃいます。
スタジオを出、通路までお見送りすると「浜さん、僕はお正月は真っ暗な中、家内と一緒に箱根神社に初詣に行くんですよ」と笑顔でお話くださいました。
後姿がとても清々しく、とてもチャーミングな天野先生でした。
「先生、患者さんのために、これからも頑張ってください」・・・と心の中でお願いしました。
4月28日と5月5日、2週にわたり放送いたします。
ぜひ、お聴きください。

八ヶ岳・夢宇谷へ。

早春のある日、箱根から山中湖、河口湖を抜けて
八ヶ岳に行ってまいりました。
一面の菜の花畑が広がる大地。
足もとで咲く可憐な菫。春の息吹を感じつつの小さな旅。

森を抜けると私の大好きな「夢宇谷(むうだに)」につきます。
夢宇谷・・・とは夢の広がる谷、という意味でつけられたそうです。
オーナーは世界中をエネギィッシュに飛び回っている幸義明さん。
森を切り拓き、自ら創作場を造り、そして、蒐集した骨董や世界の
作品がところ狭しと飾られています。

今回はイスタンブールから届いた
「アナトリアン・キリム・パッチワーク」を見たくてでかけました。
幸さんもトルコのめずらしいこの絨毯が好きで自ら選んできたそうです。
アナトリア地方のキリムのパッチワーク。
オールド絨毯を切り取り、パッチワークしてつくられたカーペットです。
パッチワークですから、造り手のセンスで作品が変わります。
素敵な色づかい、風合い、トルコならではのセンスが魅力的でした。
帰り道、桜が舞い散り、春風とともに家路につきました。
夢宇谷 Weekends Gallery 「MUU」
山梨県北杜市大泉
TEl:0551-38-0061
ご興味のある方はお問い合わせください。

天草のスーパースマイルを訪ねる旅

熊本県天草に行ってまいりました。

90歳を迎えた味噌名人の横山さん。
84歳の野崎さん。
そして、惣菜一筋笑顔のチャーミングな吉永さんも80代。
皆さん天草にお住まいです。
長野から、宮城から、東京、岐阜とそして熊本・天草の方々。
総勢30名ちかくの集まりでした。
皆さん、持ち寄りで美味しい・それはそれは美味ばかりの手作りの料理。
採れたての魚や貝などテーブルに溢れるほどのお料理でした。

30年ほど前に「これからの農を支えるのは女性の力」と思い、農・食の問題を勉強してまいりました。
スタートしたときはには、個人的な興味だったものが、いつしか社会的な関心へと高まっていきました。農業を営む多くの人々と知り合い、生の声をたくさん耳にするようになりました。
30年の間に農業がどう変化したのか、生産者と消費者の両方から見ることができました。政府関係の各委員や農業関連のジャーナリストとも交流が生まれ、各種の研究会で勉強させて頂きました。
その間に、だんだんとわかってきたことがあります。
それは、農業が、何より、生命とかたく結ばれている、”母なる業”であること。
そして農業のあり方が、この国に住む人間の環境を左右すること。
農業こそが私たちの未来の鍵を握っているということ。
私は20年ほど前から、主に女性たちで、農山漁村に伝わる「食」をテーマに、生産者と都会の消費者とで交流しあう「食アメニティ活動」を行なっているのですが、ここに集う女性たちの素晴らしさにはいつも目を見張ります。
彼女たちは、自分の手で作った素材や山々から摘んできた素材を丹念に処理し、手間をかけて、素材を生かした味わいを生み出します。ひとつの無駄もなく、産物を使いきろういうその姿勢は見事なばかりです。
「グリーンツーリズム」を学ぶためにイギリス・ドイツ・イタリア・オーストリア・オランダ・フランス、そして韓国でも女性たちとの交流を深め学んできました。
そんな仲間が全国にいてくださいます。
真摯に生きてきた女性たちならではの知恵と工夫。
女性のおおらかさとたおやかさ、土に根ざした強さとでもいうのでしょうか。
合理性や効率を追求しがちな男性社会にはない、命を育む者が持つ底力ようなものを感じています。
今、日本は岐路にあります。
「農は命に直結している」・・・ことだけは忘れないでください。
バスの車窓から見た美しい海は忘れられません。
皆さん、ありがとうございました。
また伺いますね。
スパースマイルの皆さま・・・お元気で!