話す力

テレビキャスターの草野仁さんをスタジオにお招きしお話を伺いました。
草野さんはキャスター歴46年。話のベテランです。
草野さんは1944年、旧満州・新京市生まれの長崎県育ち。
東京大学卒業後、1967年にNHK入社。
NHK入社の時は記者希望だったそうです。
アナウンサーになる前、人前で話すことが好きではなかった草野さん。
まずは鹿児島放送局でアナウンサー人生が始まり「話すこと」をとことん突き詰める研究を始められ、翌年の年頭、鹿児島県知事へのインタビュー。緊張しすぎて「県民がほんとうに聴きたいこと」を聞きだせず大きな教訓を得て、そこから「話す力」の大切さを実感したのだそうです。
スタジオの草野さんは、まず相手の目をしっかり見てご挨拶くださいます。
笑顔が素敵です。
草野仁が教える「話す力」のポイント
・挨拶
 ~挨拶はなるべく自分から先に!
・謝り方
 ~怒られたら、まず「すみませんでん」と謝る。
 ~わからないときは、「すみませんでした」の後に、「教えてください」をつける
 ~こちらが悪いときには、即刻、誠意を尽くして、心から謝る。
・苦手な人との接し方
・雑談力のつけ方
・スピーチ
どんなことでも家族で話せる環境をつける
草野さんは4人兄弟の4番目で運動が得意な青年でしたが、お父様は大変厳しく、目の上のたんこぶのように感じて過ごしていましたが、基本的に信頼感をいだいていらしたとのこと。なぜかというと「自分の話をきちんと受け止めてくれていた」と感じていたからです。真剣に考えてくれているかどうか・・・。これは人間関係でも同じですよね。
草野さんの語り口は、いつでも落ち着いていて、わかりやすく、温かみを感じます。あの「世界ふしぎ発見!」でもそうですね。
有名人のエピソードは役立ちますよ!・・・と。
・松井秀喜さん
松井さんの言葉には「このことだけは相手に伝えたい」という強い気持ちが入っています。そうですよね、インタビューの言葉ひとつひとつ丁寧に答え人柄の素晴らしさを感じます。
・川上哲冶さん
川上さんは監督時代、インタビューにあまり答えませんでした。選手に同じ話を繰り返すと、だんだんきかなくなってきたそうです。禅を学び、禅に例えて野球の話をしたら態度を改めたとのこと。
・黒柳徹子さん
断然「雑談力」のあるかた。それは半端な勉強量ではないと、「世界ふしぎ発見」で気づかされたとのこと。
・吉永小百合さん
ご挨拶で心をつかまれたとのこと。
などなど・・・。
実は今回収録にあたって、私はとても悩んでいました。
なぜかと申しますと、もう25年ほど前のことですが、草野さんとご一緒の仕事で東北への新幹線の中でのこと。そのころの私は、仕事、子育て、家庭のことなど悩みが多く、それ程親しくはない草野さんにその悩みをお話してしまいました。それは、”暖かく包み込んでくださる”ような、お話にあったからです。
「話す力」は「聞く力」と同じなのでしょうね。
いつかはお詫びを申し上げなければ・・・と思い続けておりました。
もうお忘れかもしれないし・・・と思いながらも思い切ってお話いたしました。
「そうでしたね、お子さん時代に空襲に遭われご苦労なさったのですよね」と。
それだけでした。
私もラジオの番組でお話を聞く立場におります。
とても良い勉強になりました。
話す力」は小学館新書から。
放送は文化放送「浜美枝のいつかあなたと」。日曜の10時半~11時まで。
11月17日・24日の2週にわたり放送いたします。
ぜひお聴きください。


鎌倉への小さな旅

娘のアンティークショップ 「フローラル」が箱根やまぼうしから鎌倉に移転いたしました。
鎌倉にはこれまで何回か海沿い、お寺巡り、花の季節と行っておりますが、四季折々表情の違う街との出逢いがあります。今回はあらためてショップまでの道のり、小さな旅をしてきました。
小田原から東海道本線に乗り大船へ。
車窓から見る湘南の海・・・。息子達が湘南の海近くに住んでおりますので孫と一緒に海まで散歩したり、海岸で砂遊びをしたり・・・。箱根の山では味わえない楽しみがあります。今度はさらに、その先に鎌倉が私のフィールドに入ってきました。
「私の小さな旅」は目的に直行するのではなく、寄り道から旅が始まります。喫茶店であったり、花屋さんであったり、パン屋さんであったり・・・。
けっこう嗅覚には自信があります。あまりハズレ・・・がないのです。と、いうより何というのでしょうか「ウン?何か違うな」と思ったらパス。「気になるな~」と思ったら入る。それだけのことです。では、ショップまでの短い私の旅をご案内いたしますね。
大船駅で横須賀線に乗り換えて北鎌倉を通過します。ここは以前に北条時宗が創建した「円覚寺」でお話をさせて頂いたことがございます。駅から歩いてすぐ。線路沿いを観光客の方々が散策していたり、買い物カゴをさげて歩く人、生活の香りがして好きな沿線です。


二つ目の駅が鎌倉。駅を降りてロータリーを渡り、小町通りは人・人・人。若宮大路を真っ直ぐに進み、まずは「鶴岡八幡宮」へ向かいます。


以前蓮の花の美しい時期に行ったことがあります。石段を上りお参りをし、鎌倉の街並みが見えます。八幡さまで結婚式をあげたカップル・・・素敵ですね。


そして八幡さまの真横に鎌倉彫りの『博古堂』さんがあります。もう25年ほど前でしょうか。手作りの職人さんを訪ねるテレビ番組でお訪ねしたことがあります。木と漆、使うほどに艶をおびて美しくなる鎌倉彫。私はそのときに先代に作っていただいた箱型の鏡台と手鏡は今でも使っています。深い艶が魅力的です。


そして、金沢街道を歩いていると私好みの素敵な喫茶店に出逢いました。散歩途中、喉を潤したくなりました。お店の名前は「Life」。水出しのアイスコーヒーの美味しいこと。伺うとコーヒー好きのオーナーが北海道から自家焙煎した豆を取り寄せ、専用のドリップで7~8時間かけて淹れられるとのこと。美味しいはずです。その後もう一杯、ホットコーヒー「ブラジル」をいただきました。落ち着いたお店で30分近くお邪魔してしまいました。あまり教えたくない・・・などと思ってしまいました。


金沢通りをさらに進み、美味しそうなパン屋さんを見つけました。ドイツパンの「ベルグフェルド」。クロワッサンに「二度楽しめる」と書いてありました。
「ンン?二度?帰りに買っていこう!」・・・と。


そしてちょっと手前の肉屋さんと八百屋さんの間の狭い路地を入ってすぐ右に小さなショップ「フローラル」があります。


彼女はアンティークが好きでイギリスに買い付けに行きます。
アンティーク・ヴィンテージの食器やカトラリー、ティ&コーヒーカップやグラス。世界各国の素敵な手仕事の品。アクセサリーもとても好きです。私はカップ&ソーサーを一客とトレーを買いました。トレーの刺繍の美しいこと。
やっぱり女性は”ラブリー”が好きです。


そうそう、帰りに買ったクロワッサン、サクサクとしっとりが二度味わえるのです。始めて食べた食感。娘に教えてもらいすぐ近くにフランス風のパン屋さんに寄り、やはりパリ風のクロワッサンを一つ買いバスに乗って(バス停は岐れ路”素敵な名前ね。)帰路につきました。
鎌倉にいらしたら「FLORAL」フローラルにお立ち寄りください。
小さな・小さな可愛いショップです。
電話0467-91-5181
OPEN 11:00~18:00
火曜お休み
詳しくはHPをでご覧ください。
http://www.floral-antiques.jp/

土門拳記念館

土門拳記念館の開館30周年記念企画講演会に招かれ山形県酒田市に行ってまいりました。酒田市内から鳥海山を見ながら最上川を渡り、飯森山公園の中を抜けて行くと記念館があります。


酒田で土門拳先生のお話をさせていただけるなんて・・・夢のようです。
    『人の歴史は出逢いの歴史』
誰の人生も、振り返ってみると、いつも偶然のようにして出逢った人に導かれて「忘れられない出逢い」の積み重ねで、その歴史を形作っていくものだと思います。
もし、あの人と出逢わなかったら、今日の私はなかったかもしれない・・・と感ずる人との出逢いの思い出を、誰もが必ず持っているのではないでしょうか。
写真家・土門拳さんとの出逢いは、私にとってまさにその後の人生を決定づけるそんな出逢いでした。
16歳になって間もないときのことでした。
立ち寄った本屋さんでふと手にとった一冊の写真集。「筑豊の子どもたち」と題されたその本が、なぜか私の心を惹きつけました。
昭和三十年代のまだ日本全体がとても貧しい時代でした。
ザラ紙に刷られたモノクロ写真の一枚一枚から、生き生きと表情豊かに何かを語りかけてくる炭鉱の子どもたち・・・。
写真集の表紙は、小学四年生のるみえちゃん。
電灯代わりのろうそくに、マッチで火をつけるるみえちゃんと、それを見守る三つちがいの妹・・・。姉妹のもの憂いた佇まいと無邪気さ、美しさと底知れぬ悲しみ、一枚一枚の写真が、悲しさと子供達の愛らしさを伝えていました。
私はまだ幼く、これらをなんと評していいものか、言葉をみつけることさえできませんでしたが、厳しい現実にさらされて、それをたたじっと見つめ、向かい合う子供たちの姿に、戦後の日本が抱えて、そして忘れさろうとしたもののなにかを、私は感じていたのかもしれません。
それらの写真はその時の私の日常からは遠い別世界のようであり、またとても身近なもののようであり・・・・多感な少女の心に強烈な印象を残したことだけは確かだったように思います。
そして私はそのときはじめて、社会派カメラマンという職業に興味を抱き、また「土門拳」という偉大な写真家の名を、はじめて知ったのでした。
“お逢いしたい”・・・と思いました。
それから間もなく運命の時はあまりにもさり気なく、予期せぬ早さでやって来ました。「婦人公論の表紙撮影で京都に行くよ」。と東宝の人に言われ、そこにカメラマンとして、思いがけない「土門拳」という名が記されていたのです。
あんな写真集を出された方に、この私が撮って貰えるなんて・・・と、女優という仕事に就くことになった幸運を、有難いと思いました。あの頃は、たった一枚しか使わない表紙の写真を撮るのに三日間という予定を組んだ優雅な時代です。
初日は素晴らしい天候でした。
「あ~今日で先生とはお別れだわ」とがっかりしたのですが、イメージする陽の光ではなく中止になりました。
先日の講演のあと、第2部でお弟子さんでいらした藤森武さん、堤勝雄さんから伺うと撮影の場所が苔寺でしたから、晴れていると陽の光が違うとのこと。妥協を許さない先生の仕事ぶりを身近で感じることができました。
「ついて来るかい?」と、京都の町を散歩に出掛けられる気楽さで誘ってくださいました。
連れていってくださったのは四条通の「近藤」という骨董のお店でした。
あの日以来、通い続けた私にとってかけがえのないお店。
『ものには本物とそうでないものと、二つしかない。本物に出会いなさい』と先生のお言葉。
骨董と私の最初の出会いは京都でした。
土門拳記念館では『古寺巡礼』、とっておきセレクションが2013年9月11日~12月15日まで開催されています。

そして出会いの結実「女優と文化財」、婦人公論の表紙になった女優たちの写真展も同時開催されています。


私は信楽の大壷と一緒に、苔寺の庭で・・・と、やく50年前の自分と出逢いました。
「室生寺に始まり室生寺に終わる」
といわれます。
病に倒れられ車椅子での撮影、「室生寺雪の鎧坂金堂見上げ」も大好きな写真。古寺巡礼の写真の一枚一枚に本物の日本人を撮ろうとする土門先生の気魄がせまってきます。風景には穏やかなお姿が重なります。


写真を追って室生寺、京都のお寺・・・と私の旅はつづきます。
四季おりおりの「土門拳記念館」には何度かうかがいました。建築としての記念館も素晴らしいのです。鳥海山を池の水面に映し、土門先生と交友のあった方々。イサム・ノグチの彫刻、勅使河原宏氏の庭園、父上の蒼風氏のオブジェ。飯森山公園の美しい風景。
もっともっとこの空間にいたい・・・そんな思いで帰路につきました。

石井麻子のニットアート展


箱根に一足先に秋がやってきました。
空がぐんと高くなり、朝夕、空気がきんと涼しくなり、赤とんぼがすいっと飛び始め・・・・・山が燃えるような色に染まるのも間もなくです。
明け方、庭の草木が露で光っています。
今年も石井麻子さんの素敵で可愛らしい天使たちが箱根の我が家に舞い降ります。私のクローゼットには石井さんの天使たちが仲良く一年中微笑んでくれています。
着るととてもラブリー・・・幸せな気持ちにさせてくれます。
パリにも天使は同行してくれました。
そんな石井さんの作品と、今回は田部さんが世界を旅して見つけた素材を使った素敵なアクセサリーも一緒です。田部さんはニューヨークで彫金を学び、インドや中近東を旅して素材とイメージを探求する旅が大好きな方。
女性はいくつになっても”ラブリー”が好き。
心地よい秋の箱根にお越しになりませんか。
10月19日(土)は3人でギャラリー・トークもいたします。
詳しくは「やまぼうし」のHPでご覧ください。
http://www.mies-living.jp/events/2013/knit.html