80歳にむけて

先日、79歳の誕生日を迎えました。

80歳まであと1年。
年齢とは不思議なものですね。

朝に夕に、顔を見せてくれる孫の成長を思うと、今も確かに時が流れていると、実感させられます。体が少しずつ変化しているのも感じます。同時に、正直に言えば、自分がこの年齢になったということに驚き、戸惑っているもうひとりの自分もおります。

若い頃から、私は幸運なことに、男女を問わず、年長の方々にとてもかわいがっていただきました。お訪ねするとみなさん「よく来たね」「待っていたよ」と快く迎えて下さり、私が知りたいことを惜しみなく教えてくださいました。そのおつきあいの中で、心まで静かにいやしていただくこともたびたびでした。

数年前から、今の私の年齢だったあの方々は、いったい、何を思い、日々をどう過ごしていらしたのだろうと考えるようになりました。

自由で柔軟で、新しいものや若者の提案もおもしろがって積極的に受け入れてくれた尊敬する先人――年齢が体に刻まれていても、その経験と知恵に磨かれた叡智と感覚には、若い者にはない輝きと奥深さがありました。

「もう80。まだ80」

そんな風におっしゃって微笑んでいらした方の透明な表情も忘れることができません。

もっと話を聞きたかった。もう少し踏み込んで、みなさんの来し方なども知りたかった。もっともっと――

それが叶わぬ今になって、そうした思いが私の中でふくれあがっていきました。

喜寿から二年の間。以前とはひと味違う、ゆったり旅をしてきました。

これからはもうひとつギアをゆるめていこうと思います。

今だからこそやってみたいを思えることが新たに生まれました。

共に時を過ごした仲間、現役でがんばっている若者たち……これまでに出会った人たちをもう一度お訪ねし、これからのことに思いをはせ、ときには思い出も分かち合いたい。自分が携わった活動の行方も見届けたい。あとを託す人たちの思いを知りたい。語り足りなかったことをほどいて分かち合い、懐かしい人たちの心のひだにもそっと触れてみたい。

私の心を震わせた絵画や彫刻などにも、もう一度、目にしたい。その作り手の生涯も辿ってみたい。

日本の四季に彩られたさまざまな暮らしの中に身をおき、心ゆくまで味わいたい。

体が動き、ひとり旅ができる間に、できる限り各所に足を伸ばしたい。

人に会い、自分に会うこれらの旅をする中で、私はいったい何を感じるのでしょう。

そうした私の発見や感動などを、これからも随時、このブログで発信してまいります。これまでのように、素敵な映画や美術展などをご紹介することも考えています。

ただ、暮らしのギアチェンジにあわせ、ブログの更新もちょっとゆっくりにさせていただくことにしました。

約20年間、週に1度、更新していましたが、これからは月に1度に。

お伝えしたいことがたまってしまい、ときに饒舌になってしまうのではないかという不安もありますが、これからもぜひ、おつきあいくださいませ。

浜美枝の新しい時代の始まりです。