本に囲まれて!映画に魅せられて!

家で過ごしましょう!という呼びかけは、私たちの生活に確かな足跡を残したようです。「新しい生活様式」は自分自身で一つ一つ見つけだし、続けていくことが大事ですね。

わずかな期間でしたが、この冬からの暮らし方はあたかも着慣れた洋服のように、私たちの身と心に寄り添ってきた感じがいたします。日々の積み重ねは不思議なものですね。

先日、本棚の整理に再び挑みました。やはり、この時だからこそ可能な”大掃除”です。時間がありますものね。「こんな本が隠れていた!」「わ~懐かしい!」など、大騒ぎ?の様子は、このブログでも一度ご紹介しましたが、何度繰り返してもわくわくするのが、”本との再会”です。やはり、私は本が好き!そして、本に囲まれているのが大好き!なのだと感じています。

そんな時に思い出したのが、映画「ニューヨーク公共図書館」でした。100年以上前にオープンし、現在6000万の蔵書数を誇る図書館に密着したドキュメンタリー映画です。

今年90歳を迎えたフレデリック・ワイズマン監督は、本を読む人や借りる人ばかりではなく、この図書館を行き交う様々な人たちにカメラとマイクを向けます。

著名人が参加する討論会、そして就職フェアやダンス教室など、多彩な催し物が企画されています。中には、イギリスの人気歌手、エルビス・コステロのトークショーやパンクの女王、パティー・スミスの講演会なども開かれるのです。

そのほか、経済的な理由でネット社会に対応できない人への機器の貸し出しなどもやっており、活字の分野に限定しない、様々な文化活動の姿が描きだされています。

世界で最も”敷居の低い”図書館といわれる理由が次々とスクリーンに現れてくるのですが、この映画にはもう一つの特徴があります。それは、会話やナレーションの翻訳を除くと、著名なゲストスピーカーや有名歌手などの字幕紹介がないということです。

図書館の職員も含め、登場人物はすべてこの空間に参加する一個人だという監督の強い意志なのでしょう。

「公共図書館」は運営費の半分が一般市民からの寄付によって賄われているそうです。「公立」ではなく、「公共」の理由がそこにあります。3時間半の超大作には、途中10分間の「背伸びタイム」も設けられていました。心優しく重厚で、そして、あっという間の200分でした。

ところで、この映画には図書館の中で子どもたちが声を上げながら喜び楽しむ姿や、赤ん坊の泣き声までも収められています。物音一つ立てず、静かに本を読み続ける環境はこれも大切でしょうが、語り合い、表現できる自由な空間も同時に求められるのではないかと思ったのでした。

この映画は昨年の5月に公開され、地味ながらも大きな反響を呼びました。その感動を、やはりこのブログに書かせていただきました。そして1年後の今、これからは新しい生活の仕方、これまでとは違う考え方が登場してくるでしょう。

公平で自由で平等な知的空間!「ニューヨーク公共図書館」の試みは、意外に早く私たちの前にも姿を見せるかも知れませんね。

だから私、「もう一度観たい映画」にリストアップいたします。

映画公式サイト http://moviola.jp/nypl/

箱根から失礼します!?

毎週日曜の朝にお伝えしている「浜美枝のいつかあなたと」(文化放送)は、東京・浜松町のスタジオがホームグランドです。私は大きすぎず狭すぎずの、あの空間が大好きです。ゲストの皆さんやいつもご一緒の寺島尚正アナウンサーとの距離感も快適です。

でも先月からは感染症拡大防止のため、私はスタジオを離れ、自宅からの電話出演となりました。やはりこの時期、密閉空間を避けるのは当然のことですね。

番組が始まって20年は経ちますが、初めてのことです。しかし、出演者の方々や寺島アナ、そしてスタッフの頑張りでリスナーの皆様のもとへ毎週、番組をお届けしております。

箱根の自宅からの会話、少し慣れてくると、私にはそれほどの違和感はありません。窓から見える木々や山々。時々、深呼吸をしながらのやり取りを自分なりに楽しんでおります。

寺島さんが以前私に聞いくださったことがありました。

「浜さんは、なぜ箱根に住むことになったのですか?」

「本当に好きだからです!」とお答えしました。

映画にでるようになってしばらくたったころ、時間ができると、無性に一人になりたくなりました。そこで、自動車の運転免許を取って小さな中古車を手にいれました。暇ができれば湘南海岸から山道を駆け上がり、箱根周辺に向ったのです。

私は海派ではなく、山派でしたね。1962年3月に開通した自動車専用道路の「箱根新道」は走りやすく周囲の風景を見ながらの運転は最高でした。

そんなことを繰り返すうちに、街の人たちとも知り合いになり、移住するなら箱根だと思うようになりました。ここには「日時計」はなく、「年時計」はともかく、「季節時計」が動いていると感じるようになりました。長い冬からゆっくりと季節は春に移行します。自然のデリケートな変化は、まさにドラマチックです。

その後、私は結婚し、子供を持ち、彼らを大自然の懐にゆだねたいと思ったのが今から40年も前の事でした。それでも、最初は家の建築も簡単にはいきませんでした。

今でこそ古民家再生の技術が蓄積されていますが、当時は2×4が全盛の頃で、古民家という言葉も一般的ではありませんでした。試行錯誤を重ね、費用の問題もありました。最初の3年は台所も風呂も完成しておらず、プロパンガスの簡易ガス台でご飯を作り、近くの旅館にもらい湯にいったほどでした。「ママ、毎日キャンプみたいだね!」子どもたちと顔を見合わせながら笑ったことも、今では懐かしい思い出です。

そしてこの春、我が家の庭には、コメ桜、モクレン、ツツジ、そしてシャクナゲが満開です。まもなく箱根バラが咲きはじめます。

わが家の屋号は「やまぼうし」。

箱根の山がふんわりとヤマボウシの花で覆われるのは初夏ですが、見事な開花は10年に一度といわれています。「友情」という花言葉を持つヤマボウシ、この夏はどのような姿を見せてくれるのでしょうか。

箱根への私の想いを書かせていただきました。
もうしばらく、在宅生活を続けましょう。

5月24日(日)午前9時30分から、文化放送「浜美枝のいつかあなたと」で箱根のお話をさせていただきます。どうぞお聴きください。箱根の写真は息子が撮ってくれました。

もう一度見たい物語

私、映画館には3ヶ月以上行っておりません。
普通ですと、少なくとも年に20本は観ますので、まさに”自粛”の日々ですね。

最近スクリーンを見つめたのは1月31日、渋谷でした。「男と女~人生最良の日々~」。クロード・ルルーシュ監督も主演のアヌーク・エーメさんも、とても素敵でした。半世紀以上前の大ヒット作の単なるリメークではありませんでした。時を経て、変わるものと変わらないもの。それらが穏やかに、時には淡いユーモアを交えて描かれていました。いい映画でした。以前、このブログで紹介させていただきましたね。

しかしそれ以降、わたしの映画館巡りは中断しているのです。
特にこの一ヶ月は”家篭もり”状態が続いています。

そんな中、映画を観たいという願いを何とか実現しようと、「私の、もう一度観たい映画」を思いつきました。これまで観た中で是非とも見直したい映画を、DVDで改めてじっくり鑑賞する。今のように時間があればこそ可能な、ある意味では贅沢な”企画”です。

まず取り寄せたのが、あの「カサブランカ」でした。ハンフリー・ボガートとイングリット・バーグマンが登場する、誰もが知る名画です。パリとモロッコのカサブランカを舞台に繰り広げられるこのロマンスは「君の瞳に乾杯!」という不朽の名訳や「As time goes by」の心に染みわたる主題曲なども加わり、映画史に残るものとなりました。

私が初めて観たのはおそらく30代の前半、もう40年以上も前のことだったと思います。場所は銀座の「名画座」でした。モノクロ画面に釘付けとなり、光と影の深みに吸い込まれていったことを、今も記憶しています。その後も何度か映画館に通い、文字通りの”リピーター”になっていきました。

何年か後になって私がモロッコへの短いひとり旅を経験したのも、どうしてもカサブランカの街をこの目で見てみたい!という一念からだったのです。そしてDVDによる、「自宅映画館」のトップバッターとなったわけです。

今回は歴史の年表を横に置きました。なぜなら、「カサブランカ」が制作・公開されたのは1942年(昭和17年)、私の生まれる前の年でした。その頃、欧州各地だけではなく、南太平洋では日米などが激戦を繰り広げていたのですね。

ラブストーリーの装いで、マイケル・カーティス監督は何を伝えたかったのでしょう。多国籍の人々のつながりを通じて、祖国への想いと人としての生き方を訴えたかったのかもしれません。「カサブランカ」がアカデミー賞の3部門を受賞したのは昭和19年春のことでした。そして、日本での公開は終戦の翌年、昭和21年だったそうです。

70年以上たっても色褪せない作品とはどのようなものか?一時停止が可能なDVDの画面を前に、心ときめく幾つものシーンを一つ一つ見つめ直しました。

自粛の期間は、まだしばらくは続きそうです。私の「もう一度観たい映画」のリストは、これから何本くらい増えるのでしょうか?外に出たい!と叫びたい反面、実は楽しみな気分も同居しているのです。

感謝をこめて

家でインターホンが鳴ると、孫と遊んでいる時などは一緒に出ていきます。確認してドアを開けると、5歳の孫は相手の顔がすぐにわかり、その方の名前を呼んで、「こんにちは!」と挨拶します。宅配便の担当者の方です。

いつも、お世話になっております。これからは、来ていただく頻度が一層多くなりそうです。日常の生活がどれほど助けられているかを、この1ヶ月で改めて実感しました。

”出歩かないでください!”と子供たちから厳命?をうけていますが、やはり気にいった本は読みたい。でも、書店には行けないとすれば、やはり、取り寄せですよね。

今、ワインを楽しむのは勿論、自宅です。以前から信州育ちの”日本ワイン”を愛飲している私は、取り寄せの、”宅飲み”が専門となりました。豊潤さを満喫し、信州を応援するためにも、”日本ワイン”を一人静かに、いただいております。

このところ、季節が段々暖かく、いえ、暑くなってきました。こうなると読書やワイン、時には家のベランダに出たいですよね!ということで、先日、シンプルなデッキチェアを取り寄せました。それほど高くなく、とても気に入っております。

ところで、各地の農村女性から貴重なものを送っていただくことがあります。「キムチ漬けましたよ」「よもぎ餅作ったわよ」「山菜採ってきました。たらの芽とこごみよ!」これらはみな、土の匂いの消えない、自然の恵みです。

この30年、農と食をテーマに農村女性との研究会や研修旅行を続けてまいりました。その仲間たちと結んだ絆、繋がりこそが私にとって大切な財産となっています。

「家にいましょう!」はこれからも、まだまだ続きそうです。その中で、少しでも心豊かに過ごすにはどうしたらいいのか?おそらく、私たちが一人一人が問われているのでしょう。

読書もワインもデッキチェアも、そして農村の豊かな生産物も、日常の暮らしを彩る数え切れないほど多くのものが、宅配便の方々の手によって届けられています。感謝の念を決して忘れることはできません。

日が長くなってきましたね。まだ明るい夕方ですが、少し飲むことにいたします。

この春はとても大切な春!

ゴールデンウィークの真っ最中。いつもでしたら、この時期の箱根のわが家は、ひっそりと静まり返っています。一緒に住んでいる息子一家が、車で3、4日の旅行に出かけるからです。

でも今年は随分、勝手が違います。我が家には”外出禁止令”が出されました。私は孫たちに本を読んであげたり、近所の公園で遊んだりと、静かな日々を送っています。その公園は少し山に入った所にあるので、40年も前から、ほとんどその佇まいを変えていません。かわいい鹿が時折、顔を見せるほどです。孫たちと過ごす時間は確かに増えて、彼らも喜んでいるようです。でも、それ以外はできるだけこれまで通りの生活を続けたいと思っております。

一日のスタートは大切です。5時前に起床し、部屋の窓を大きく開けます。空気の入れ替えは、新しい日の始まりの合図ですね。そして、ストレッチやスクワットを20分ほど。そのあとは、山歩きです。雨の日を除けば日課ともなっているウォーキング。杉木立を通り抜けて湖に着くと、たくさんの人たちが静かな水面に釣り糸を垂れています。その姿を眺めながら、帰路につくのです。およそ一時間の、心満たされるひとときです。でも、この連休は釣り人たちの姿が全く消えてしまいました。皆さんのそれぞれの”自粛”がここ箱根でも続けられています。

社会が波立ち、多くの心がささくれ立つ時、何気ない日常のリズムを大事にすることは、決して無駄ではないと信じています。そして、「家にいよう!」の声が世界中に響き渡る中、家庭内でのギクシャクやイライラを多少なりとも和らげるとすれば、それは「手作り料理」ですね。私も手料理の回数が、これまで以上に増えました。団欒での”おいしいね!”の声を一つでも多く耳にすることができれば、それは感染への力強い抵抗力になるのかもしれません。

最近、テレビの画面を見ていると、手を握り合って町を歩いているカップルの姿をしばしば目にします。年齢を問わずです。誰しも同じ、決して人ごとではないのですね。不安の中、皆さん繋がりを求めていらっしゃるのでしょう。社会の行方がよくわからない今、でも当然ですよね。100年、200年先の歴史の教科書に確実に出てくるような”大ニュース”が日々、目の前で起きているのですから。歴史の目撃者、いや、当事者なのですよね、私たちは。

この毎日は、私たちの暮らしや生き方を見つめ直す、またとないチャンスだと思います。孫たちが大人になったとき、「皆で肩を組んで、助け合っていくことが大事だよ。あの時、そんなことを周りの人たちは話していたね」と思い出してもらいたいのです。

だから、この春はとても大切な春!

先日、一羽のキジが久しぶりに我が家を訪ねてきました。私たちを元気づけようと、心配して様子を見に来たのかもしれません。

大丈夫です!私たち、元気ですよ!