私のお買い物・小田原

箱根の自宅の一角にオフイスを移して10年以上がたちました。仕事は東京起点のことが多いので、箱根からバスで下山し小田原、そして東京~地方へとしょっちゅう移動しているのですが、以前は通りすぎるだけだった小田原がいつのまにか自分の街になっていることに最近気がつきました。


新幹線に乗る前には時間に余裕がある時は駅の地下街「ハルネ小田原」の『菜の花ビレッジ』に寄り道。ショップでは素敵な器やカジュアルな洋服を拝見。奥にある「ムーンカフェ」では焙煎したての珈琲の味わいはもちろん、販売されている和菓子と一緒にいただきます。珈琲を飲みながら自由に手に取れる雑誌や本・・・すべてが行き届いていて、テーブルには野の花が活けてあり、ほっと私の心をなごませてくれます。お店のお嬢さんたちの優しさも嬉しいです。お饅頭を一個だけ購入して、東京に向かう新幹線でいただくことも。


一日お休みの日はキャリーバックを引いてバスで下山しやはり地下街のJAかながわ西湖直売所『朝ドレファーミ』には新鮮な野菜が揃っていますし、朝摘みたての花があります。だいたいひと束300円くらいで、自分で新聞紙に包んで持ち帰ります。庭に咲いているような花なのですごく嬉しいです。
駅の1階にあるスーパーでは地元の魚が販売され、まさに『地産地消』です。遠くからエネルギーを使い運ばれてくる海外の品はフードマイレージが先進国の中で一番の日本は考えなければいけませんね。
いずれにしても、慌しい時代には見過ごしてきた『地元の街・小田原』は歴史もあり、古い建物も保存されていて快適です。


そうそう・・・あとお薦めは繁華街からちょっとはずれた国道一号線沿いにある『勝寿司』は、魚大好きな私をいつも大満足させてくれるお店です。カウンターとテーブル2つとこじんまりしたお店ですが、入り口にはご主人自らが摘んだ野の花が飾られ、店内は清潔で清々しいです。「地魚セット」が2400円。ランチなど嬉しいですね。もちろんわさびは、おろしたての本物。ご主人のお人柄もあって地元のお客さま多いのですが、近頃、観光客も増えてきました。
この頃はお休みの日はこうして地元で過ごすことが多くなりました。これなら80代になっても90代になっても楽しめそうです。そうありたいです・・・ね。

信州の旅

先日、長野県にある八十二銀行の財団法人八十二文化財団に招かれ、長野市内での講演に行ってまいりました。最近は子育て時代と違い、時間にもゆとりが持て、また以前のように日帰りでバタバタと出かけなくても良い環境になってきました。
初夏の日を浴びてそよぐ若い葉、新樹、まさに今年一番美しい新緑の日でした。「これは1泊で信州プチ旅行をしたいな~」と思いたち新幹線に乗り込みました。長野の手前、上田駅下車。そこには東御市和(とうみしかのう)で農園カフェレストラン「ヴィラデスト ガーデンファームアンドワイナリー」を営んでおられる玉村豊男さんの奥様、抄恵子さんが出迎えてくださいました。
抄恵子さんとは園芸の師匠村田ユリさんの門下生仲間。といっても私は落第生。植物のことなど何ひとつ勉強せず・・・抄恵子さんはそこでしっかり学び、現在の素敵なヴィラデストのガーデンをつくられたのでした。
もう27、8年ほど前になるでしょうか、初めて農園をお訪ねしたのは。軽井沢の追分から上田に抜ける林道から横道に車を走らせたのは偶然でした。私は舗装されたまっすぐな道よりも、がたがた揺れるような曲がりくねった遠回りの道が好きで、選んでそういう道を探してしまうところがあるのです。
20代後半から30代にかけて4度の出産をし、子育てをし、家をつくって、女優という仕事を続ける・・・我ながらよくやったと思います。 30代後半から心因性のアレルギーに悩まされるようになったのは、こうしたもろもろの無理を重ねてきてしまったのです。夜中に音楽をかけながら車を飛ばし・・・細い横道沿いを進んでいくと目の前に、はっとするような美しい農場が開け、思わず車を止めました。それが今は亡きユリおば様との出逢いでした。
ユリさんは当時70代。ポタニカルアートやフラワーアレンジメントの先駆者であり、エッセイストとしても知られ、ジャーマンアイリスの専門家でもありました。それらは後に知ったことです。お会いした瞬間、私はこの方をずっと知っていたような気がしたのです。お会いできたことを御代田の大地に感謝し、それから長いお付き合いがはじまりました。
あるとき、疲れ果てて夜遅くユリさんの家に着いたことがありました。
その時ユリさんは、ご自分の庭で採れたハーブを木綿の袋につめ、それをお風呂に入れて「気持ちいいわよ、お入りなさい」と進めてくださいました。ゆっくりお風呂に入ったあとベッドに入ると、枕の下にも、また別のハーブがしのばせてありました。ハーブの香りに包まれ、そっと抱きしめられるような気持ちになり、その晩、数年間なかったような深い眠りにいざなわれました。寒い夜、暖炉に薪をくべ、暖かい火に一緒にあたりながら、ワインを飲んだりおしゃべりをしたり。
その頃に玉村ご夫妻と出逢いました。4人で豊男さんが腕をふるってくださる料理でワインとおしゃべりをし豊かな時間でした。ユリさんは昼間はほとんどの時間を畑で過ごしていました。手を土色に染め、額に汗を光らせていました。ユリさんがいてくれると思うだけでほっと体から力が抜けるようになりました。
今、私はユリさんと出合ったころの、ユリさんの年齢になりました。40代の私のために、自分の空間と時間をすっと差し出してくださったユリさんのような大人に、私もなれただろうか。そういう人生を歩んできただろうか・・・と思うのです。
近所に住む抄恵子さんは足繁く通い、植物の勉強をしっかりとなさり現在の美しいガーデンができあがったのです。年は私が上ですがまるでお姉さまのよう。


美味しいランチをいただき、庭を散歩させていただきました。


モッコウバラのアーチの奥にはアルプスの山々が雪をかぶり、リナムが一面に咲き、カリフォルニアポピー、シジミバナ、ルバーブ、ジャーマンアイリス、セイヨウミミナグサ、キャットミント、ベロニカ、オダマキ・・・・など等、抄恵子さんの愛情が降り注がれたガーデンでした。
上田から長野、そしてM夫妻の住む黒姫でのんびりさせていただき、翌日の朝、皆さまが待っていてくださる長野市内のホールへと向かいました。600名満席の方々の笑顔に迎えられ『明日を素敵に生きる』をテーマにお話をさせていただきました。もう、会場の皆さまこそ素敵に生きていらっしゃいます。お顔が輝いていらっしゃいました。
皆さまに「逢えてよかった」素敵な出逢いをありがとうございました。

フローラル

青葉を渡る風に、初夏の心地よさを感じるこの季節。GWも終わり、また日常生活に戻りましたね。このGWはお仕事だった方もいらっしゃることでしょう。ご苦労さまでした。
私は前回も書きましたが、小さな旅、掃除、映画・・・そしてGW最後の8日は鎌倉に行ってまいりました。鎌倉鶴岡八幡宮東門を出てすぐにある娘のショップ、”フローラル“で『一日花屋さん&アンティークガレージセール』が開かれていたからです。


8日は「母の日」。asuka yamanakaさんのお花を子供たちがプレゼントしてくれました。暮らしの中で花のない生活ほど寂しいことはありません。庭で摘んだ花をそっと花瓶に活け”幸せ”と思わずつぶやいている時もあります。でもasukaさんのなんて素敵なお花なのでしょうか・・・。子供たちに感謝した日でした。そして、母親でいさせてくれて”ありがとう”とも思った日でした。
思えば昭和57年6月に出版した本「浜美枝の育児エッセイ・やまぼうしの花咲いた」からずいぶんの年月が経ちますが、つい最近のようでもあり・・・
前書きでこんなことを書いています。
「親と子のあいだに自然を介在させることで、双方がどんな育ち方をするのか、最も密着度の高い関係に自然という巨大な存在があることで、親子関係がどんなふうになっていくのか、観てみたいという試みもありました。本に書かれた育児法やしつけの論理を超えたものが伝えられないか。さまざまな壮大なもくろみを含んだ移転でもありました。もちろん、まだまだ答えのでるような段階ではありません。私自身も含めて四人の子供たちも、箱根の移りゆく自然に夢中ですし、親子関係も、自然の存在をかたわらに置いて、相当密着感の強い時期です。」
ぼちぼち40歳になろうとしていた私。
子供たちは皆、その年齢を超えていたり、間もなく迎える年齢になっていたり・・・
子育てのもっとも濃密な10年は、闘いの十年であり、夢見心地の十年であり、大自然のいのちのサイクルからみれば、たったの十年でした。
フランスの哲学者であり文学者でもある、シモーヌ・ボーヴォワール女子の名言に”女は初めから女ではなく、女になっていく”というのがありますが、まさに母親もまた然り。”母親になっていく”ものだとつくずく思います。
鎌倉からの帰り道、匂うような初夏の風のさわやかさが私を包み込み”山から母の日のプレゼント”もいただきました。「残花(ざんか)」は春に咲いた桜が、散り残っていることを指す春の季語だそうですね。
散り残っている。
そうね、素敵に散り残りたいと思った母の日でした。
次回の「一日花屋さん&アンティークガレージセール」は5月28日(土)に
予定しているそうです。私も”お店番”に行きたいな~と思っておりますがお天気にもよりますね。
詳細はフローラルにお問い合わせください。

おしゃべりと掃除、そして映画

皆さまはゴールデンウイークをどのように過ごされましたか?
旅行に出かけられた方、家でのんびりされた方、都内で楽しまれた方。いろいろでしょうね。私は前半は30年来の群馬の友人宅で彼女と心おきなく”おしゃべり”をし、久しぶりの楽しい時間でした。
そして、後半は日ごろ気にながら中々手をつけなかったキッチンの隅々(見てみぬふり)や大好きな器やグラス磨き・・・など。まとまった時間がないとできなかった事いたしました。そして一日は山を抜け出し”映画の”はしご”をしました。
スポットライト・世紀のスクープ』と『グランドフィナーレ』。
「出演するより観るほうが好き」な私。
60代になったあたりから自分の時間が増えて、映画を楽しむ機会が多くなりました。そして映画を観たあとの余韻を楽しむために近くのカフェに立ち寄り、白ワインやコーヒーを飲みながらプログラムをめくり、出演者や監督など製作人の想いをじっくり読む・・・至福のときです。だから映画はいつも「ひとり」で。
私は昔からジャンヌ・モローが大好き。彼女の最近作2012年に公開された「クロワッサンで朝食を」は素敵でした。ジャンヌ・モロー演じるパリの老夫人は、新しい家政婦の用意した朝食のパンが気に入らない。「こんなスーパーで買ったものではなくパン屋の焼きたてのクロワッサンでなければ食べない」と激しく拒否をする。
「これは単にパンにこだわっているのではなく、自分自身の人生へのこだわり、これだけは譲れないという生き方。フランス女性らしい自立心をもち、一筋縄ではいかない人生を背筋を伸ばして歩きつづけている、いい女。ジャンヌ・モローそのもの。」
私はこう思っているのです。
映画は大きなスクリーンで観るにかぎる・・・でもあとどのくらい山を下り映画館に行けるでしょうか。90歳でも出来たらいいな~。いけなくなったら家で観る映画のDVDを少しずつ集めています。「カサブランカ」「追憶」大好きなオマーシャリフの「ドクトル・ジバゴ」、そしてジャンヌ・モローの全ての作品。
まだまだ旅は出来ます。映画の舞台になった場所を旅したい!カサブランカのモロッコや青春の思い出のローマ。インドは「マリーゴールドホテルで会いましょう」を2度も見ました。政情が不安で行けなくなってしまったトルコ、など等。
映画の”ときめき”は、私に栄養を与えてくれます。


スポットライト 世紀のスクープ
今回観た映画『スポットライト』は巨大権力に立ち向かう記者の覚悟、これぞ新聞記者の正義、ジャーナリズムの勝利。真実に基づいた記者たちの取材活動の記録。ピュリツアー賞受賞の記録を映画化。
ボストン・グローブという新聞社。真実の究明という地味な作業を丹念にトム・マッカーシー監督は抑制のきいた演出に真実が見えてきます。実在の記者からOKをもらったそうです。カトリック神父による児童の性的虐待と真実。巨大なカトリック教会全体を巻き込んだ事件。おさえられた演出、劇映画としての本物のドキメンタリータッチがあります。米アカデミー賞で作品賞、脚本賞受賞。報道のあり方を考えさせられた作品でした。日本でも「報道の自由」が問題になっています。2時間8分の映画は時間の長さをまったく感じませんでした。秀逸!


もう1本は『グランドフィナーレ
さすがアカデミー賞に輝く名優たち、カンヌに愛されたイタリアの奇才パオロ・ソレンティー監督。今年83歳のマイケル・ケイン風格と老いに向かって生きていく有名な老作曲家。親友の映画監督のミック。
舞台はスイス・アルプスの麓にある高級ホテル。「老いること・生きること」の意味を素晴らしい映像美で魅せます、ユーモアをたっぷりに。その映像美が心の心理を見事に描いているのです。そして、大事なシーンでなんと!ジェーン・フォンダが登場し、2人のフィナーレが待ち受けています。(ご覧になる方のために詳しくは書きませんね。)
とにかく、80歳を超えた男を愛おしく、感じました。そして老いを生きる意味を考えました。傑作です。
やはり、映画って素敵ですね。
と、いうわけで私の休暇はおわりました。
6月には講談社から本が出版されます。「孤独って素敵なこと」ぼちぼち最終校了があがってきます、ドキドキ・・・。
満開の山桜も散り、初夏の若葉をつけた葉桜。風にそよぎながら太陽の光に透ける青葉が心地よい季節です。