ご挨拶

箱根の山々の緑が日一日と、濃くなっています。
我が家の庭も、あたり一面、百の緑に覆われ、石楠花、ツツジ、アジサイと、とりどりの花が個性豊かに咲きはじめました。
この季節、毎朝、ベッドの中でまどろむ私の肩を優しくゆらしてくれるのは、鳥の声。お日様が上がり始めるほんの少し前から、静かな空気を柔らかく揺り動かすように啼き始め、明るくなるころには、まるで輪唱のように、あちらこちらから可愛い声が聞こえます。
箱根の家に住んで、三十年が過ぎました。百数十年もの歴史を刻んだ十二軒の古民家の材料を全て譲っていただいて建てた家。その家で育てた子どもも、すべて成人し、社会人になりました。
十六歳で女優になり、夢中で走り続けてきた年月でした。その中で、柳宗悦氏を心の師として民芸に惹かれ、人の暮らしを支える道具の世界に飛びこみました。また写真家・土門拳さんに導かれて、骨董の楽しさを知りました。こうした魂に響くような出会いが、今の私の暮らしと箱根の家にまでつながったのだと感じます。
昨年、『私の骨董夜話ー人との出会い、ものとの出合い』リヨン社)を出版いたしました。この本は、民芸や家、そしてそれらを間に置いて、おつきあいくださった大切な人との出会いと、そして時を越えて私のところにきてくれた道具について、三年という年月をかけてまとめたものです。この本を書きながら、私は、少女として、母として、妻として、そして何よりひとりの女性として、様々な思いを抱えながら生きてきた自分を、改めて、振り返ることができました。
本を書くことで、ひとつ区切りをつけることができたからでしょうか。箱根の家を、さらにいとおしく思う気持ちが、不思議なくらい、胸にあふれてきたのでした。日ごろ使っているグラスのひとつひとつ、棚に飾って楽しんでいるつぼや皿にも、これまで以上に、深く穏やかな愛情を注いで暮らしていきたいと今、強く感じています。
また、この春に出版した『やさしくて正直な「食の作り手」たち』家の光協会)には、これまで四十年間以上にわたって、日本全国を旅し、農と食を考えてきた私の、もうひとつの側面を綴りました。農は、そして食は命そのものーーー。しみじみ、そう思います。
そうした日本の農業を支えているのは実は女性たちです。日本のスローフードを支えているのも、それらの女性たち。食アメニティ・コンテストを通して知り合った農に関わる女性たちをはじめ、農山漁村に住むひたむきな女性グループとのネットワークも、私の大切な宝物です。
そんな私の箱根の暮らしや、四季折々の楽しみ、そして農や食、女性たちとのエピソード、さらには旅での出会いなどを、このホームページに綴っていきたいと思います。
箱根の花の香り、そして爽やかな緑の風も、お便りとともに、あなたに届きますように。
浜 美枝

『浜美枝 プロフィール』


浜 美枝 (Mie Hama)   女優   昭和18年 東京生まれ
【主な主演】
昭和35年(1960)   東宝よりデビュー
昭和42年(1967)   映画「007は二度死ぬ」
昭和50年(1975)   フジテレビ「小川宏ショー」で小川宏氏と司会
昭和55年(1980)   毎日放送「いい朝8時」で八木治郎氏と司会
昭和58年(1983)   NHK総合テレビ「脱線問答」レギュラー解答者
             TBSラジオ「浜美枝のいい人みつけた」
昭和59年(1984)   NHK教育テレビ「日曜美術館」司会
平成05年(1993)   テレビ東京「町おこし 村おこし」
平成06年(1994)   NHKハイビジョン「世界とってもクラフト」
平成10年(1998)   文化放送ラジオ「浜美枝のあなたに逢いたい」
平成13年(2001)~  文化放送ラジオ「浜美枝のいつかあなたと」
             日曜日 10:30~11:00出演中
平成16年(2004)~ 主婦の友社・ゆうゆう「美しく生きるための処方箋」
平成18年(2006)~ 主婦の友社・ゆうゆう
             「もっとシンプルにナチュラルに生きる」
【委員・会員】
◇農林水産省「美の里づくりコンクール審査会委員」
◇農林水産省・(財)農村開発企画委員会共催
   「食アメニティコンテスト審査委員会会長」
◇(財)農村開発企画委員会評議委員
◇食アメニティ全国農村女性ネットワークの会会長
◇農政ジャーナリストの会会員
◇NPO 良い食材を考える会会員
【著書】
□やまぼうしの花咲いた(文園社)
□美しい暮らしを探す旅人(求龍堂)
□逢えてよかった(文化出版)
□旅のおみやげ(世界文化社)
□旅のおみやげ2(世界文化社)
□いい人みつけた(文園社)
□マナーはおしゃれに(開隆社)
□正直な作り手の味(集英社be文庫)
□花織の記(文園社)
□浜美枝 農と生きる美しさ(家の光協会)
□娘たちへ-毎日の幸せおかず(講談社)
□私の骨董夜話(リヨン社)
□四季の贈り物(PHP研究所)
□やさしくて正直な「食の作り手」たち (家の光協会)
□子どもの「おいしい!」を育てる (すばる舎)
□凛として、箱根暮らし(主婦の友社)