今年を振り返って

2015年クリスマス
行きずりに聖樹の星を裏返す    三好潤子
「クリスマスツリー」だと音数が多すぎるので、俳句では「聖樹・せいじゅ」と詠まれることが多いそうです。「聖樹」私は山の中に住んでいるのでこの方がしっくりきます。箱根の芦ノ湖のそばに居を定めて40年近くの月日がたちます。子供が幼かったころは小雪舞うなかで雪遊びをしたり・・・、和ろうそくに灯りをともしクリスマスケーキを食べたり・・・懐かしい思い出です。今朝など垣根に植えられた山茶花が真っ赤な花をつけています。クリスマスがなぜ冬なのか、冬至の祭りと深い関係がある、と本で読んだことがあります。
春の訪れを待ちながら、静かにこの2015年を振り返ります。
私はクリスチャンではありませんが、24日のイブの日は築地の聖路加病院の中にある教会で静かに今年を振り返ります。近くに事務所があったから散歩コースでよく行きました。今年も早朝山を降り教会でひとり静かに過ごしました。


2015年は自然災害や豪雨による多くの方が被災され尊い命も奪われました。世界に目を向ければ無差別なテロで犠牲になられた方々がおられます。
天皇陛下は23日、82歳のお誕生日を迎えられました。
今年の四月、天皇皇后両陛下が、元日本の植民地で太平洋戦争の激戦地だったパラオ共和国を訪問し、元日本兵や遺族の見守る中、日本の慰霊碑だけではなく、アメリカ軍の慰霊碑にも献花されました。そのときの「ここパラオの地において、私どもは、先の戦争でなくなったすべての人々を追悼し、その遺族の歩んできた苦難の道をしのびたいと思います」というお言葉を聞き、父のことを思いだしました。
私の父は無事、復員することができましたが、しばらくの間、立ち直ることができませんでした。そして亡くなるまでの間ずっと、戦争のことはひとことも口にしませんでした。戦争が終わって帰ってきた兵の中に、過去の辛い経験を生々しく思い出して不安や恐怖、睡眠障害といった精神的ストレスPTSD(心的外傷)を抱えている人が多くいることも知られるようになりました。父もまた、そうした状況にあったのかもしれないと、今になって思います。晩年は穏やかに暮らし83歳で亡くなりました。
皇居・宮殿での記者会見で天皇陛下は「様々な面で先の戦争のことを考えて過ごした」と仰られておられます。
戦後70年の節目を迎えたこの1年。
世界の平和を祈ります。
イブの日は息子のお嫁さんが作ってくれたクリスマスケーキ(聖菓・せいか)を家族でいただきました。


今年も私の思いを綴ったブログをお読みいただき感謝申し上げます。
良い新年をお迎えくださいませ。

『終わった人』

刺激的なタイトルの本。
「定年って生前葬だな」という書き出しではじまります。
この度、『終わった人』をお書きになられたのは、脚本家の内館牧子さんです。正直、「キビシイ・・・タイトルだわ。」と思いましたが、ページをめくると愛と定年男性へのエールであることがよく分かります。
内館さんは1948年、秋田市生まれ。東京育ち。武蔵野美術大学を卒業後、13年半のOL生活を経て、1988年、脚本家デビューなさいました。
「思い出にかわるまで」
「ひらり」
「出逢った頃の君でいて」
「私の青空、」など数々の人気作品があります。
大相撲にも造詣が深く2000年から10年間、横綱審議委員を務め、現在東北大学相撲部総監督を務めておられます。
最新小説が「終わった人」なのです。これから定年を迎える人、あるいは夫とともに歩ん妻や家族、若い世代など、どんな人が読んでもリアリティあふれる描写に引き込まれました。内館さんの観察眼や物語の展開に時間を忘れ読みました。これはぜひ直接お話を伺いたい・・・とラジオのスタジオにお招きいたしました。
本の帯には「大手銀行の出世コースから子会社に出向、転籍させられそのまま定を年迎えた田代壮介。仕事一筋だった彼は途方くれた。妻は夫との旅行などには乗り気ではない。『まだ俺は成仏していない。どんな仕事でもいいから働きたい』と職探しをするが、取り立てて特技もない定年後の男に職などそうない。生き甲斐を求め、居場所を探して、戸惑い、あがき続ける男に再生の時は訪れるのか?」・・・とあります。
ジムやカルチャースクールに通ったものの、エリート意識が抜けず、満たされない日々が続いていたところに年下の女性との出会いがあり、ある会社からの誘いがあり・・・と後は読んでお楽しみください。
スタジオでは寺島尚正アナウンサがー『現役時代から、定年後は別の人生が始まると覚悟しておいたほうがいいのでしょうか?』と真剣です。シリアスな話の中にユーモがあり「う~ん、分かるな奥さんの気持ち」・・・など私は普遍的なテーマも内館さんの手によると、・・・こんなに人が愛おしくなるのね・・・と思わずうなずいていました。
スタジオに現れた内館さんはチャーミングで素敵な方。7年前に大病をされて、13時間の大手術をなさり2週間もこんこんと眠り続け、奇跡的に目を覚まされたそうですが、お元気で、今でも何にでも興味を示され、学び、ワイン教室、最近は将棋にも夢中とのこと。すごいバイタリティーです。
「勉強することが大好きなの」とおっしゃられます。
故郷についてや、「終わった人」のラストにも関係してきますが、私は伺いました。
「熟年離婚する夫婦と離婚を踏みとどまる夫婦には、どんな違いがあるのでしょうか?」・・・と。
その答えは、ラジオをお聴きください。
そして、将来避けられないテーマ・・・をご夫婦で語りあってください。
文化放送「浜美枝のいつかあなたと」
日曜日、10時半~11時まで。
放送日は12月20日と27日の2回にわたります。
1回目は本を中心に。
2回目は内館さんご自身についてです。


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映画 『アンジェリカの微笑み』

今年106歳でとうとう亡くなったマノエル・ド・オリヴィイラ監督の長編映画です。舞台は監督の故郷ポルトガル。監督が101歳のときの幻の傑作です。構想から60年のときを経て、いま私達の前に現れました。
ポルトガル、ドロウ河流域の町を舞台に、ユダヤ人青年イザクが、若くして死んだ女性アンジェリカの遺体の写真撮影を頼まれたことから、彼女の虜になってしまう物語。彼女の美しさに魅入られ、思いを募らせる彼に応えるかのように幻影が現れます。半世紀以上を経て、この脚本を監督自身が現代の物語に書き直し、映画化したものです。
100歳を超えてもこの瑞々しい感性はどこからくるのでしょうか。ドロウ河の印象的な風景、モノクロームの幻想シーン。主演のイザクを演じているのは監督の孫。アンジェリカはスペインの人気女優ピラール・ロベス・デ・アジャラ。
ふたりが抱き合って川の上を飛ぶモノクロームのシーン。夜が来て、明け方近く、イザクがベッドで寝ていると小鳥が迷い込んみ、飛び去るのと入れ違いに彼女が天井近くに現れる。差し伸べてもつかめない彼。そこから一気にストリーは展開していきます。  宗教、生と死、愛、政治的な背景。私はポルトガルのユダヤ人について何ひとつしりませんでした。ひとつ間違えば怪異になるテーマをオリヴィラ監督は見る者を映画的な、映像のもつ至福のときへと誘ってくれます。
この映画の感想はなかなか表現が難しいです。
ただ、生きている幸せを感じさせてくれたこと。平和について。愛について。社会を取り巻く様々な側面をもっと知らなければ・・・と気づかせてくれたこと。イメージの美しさに魅力を感じ、早々と箱根の我が家に戻ってきました。黄昏の山の稜線を眺めて106歳で亡くなったマノエル・ド・オリヴィラ監督は私達にどんなメッセージを託してくださったのでしょうか・・・。
やはり、映画は好きです。人生の一部です。
http://www.crest-inter.co.jp/angelica/

箱根のクリスマス

昨日3日、少し早い「箱根のクリスマス」で主婦の友の雑誌「ゆうゆう」の読者の方々が、我が家「箱根やまぼうし」にお越しくださいました。全国からのお客さま40名です。


時には1泊の豪華客船で。そして我が家のクリスマスは、もう何年にもなります。ゆうゆうのオリジナルツアー、1泊2日の旅です。


このツアーでは、皆さまにまずは私のお気に入りのケーキとコーヒーを召し上がっていただき、翌日に訪れる予定のラリック美術館から学芸主任の橋本さんにお越しいただき、我が家で事前に特別レクチャーをしていただきました。そうすることで作品をより深く理解できます。ラリック美術館10周年を記念する素敵な「ミュシャとラリック展」です。
夜は芦ノ湖湖畔のクラッシックホテル「山のホテル」での美味しいディナー。私もシャンパンで乾杯のご挨拶し、皆さんと楽しいひとときをご一緒させていただきました。
お一人での参加の方もいらっしゃいます。女性は泊まりでの旅はなかなか大変です。でも、1年間頑張ったご自分への”ご褒美”。私も心をこめてお花を活け、飾りつけをいたしました。
皆さんとても素敵な笑顔・笑顔・・・。
女性が育児と仕事と、普通の結婚生活を平和に支えていくのは正直いって並大抵のことではありません。専業主婦でも同じです。そんな時代を経て、少しはご自分の時間がもてるようになった今。それが”ゆうゆう”世代です。
いつも思うのですが心から”ご苦労さま”と、抱きしめて差し上げたい気持ちになります。素敵な時間をご一緒させていただきありがとうございました。そして、今回は参加できなかった読者の皆さま、いつかご一緒したいですね。
1年間ご苦労さまでした。