玉村豊男『私の好きな、箱根風景』展

玉村豊男さんのライフアートミュージアムに”箱根風景”を観に行ってまいりました。

草や花は現物を目の前に置いて写生するそうですが、今回の箱根の風景は写真に撮りアトリエで製作したそうです。

私にはどの絵も見慣れた風景。旧街道、箱根神社の鳥居、本殿、そして、山の頂上からの湖、芦ノ湖に浮かぶ船、関所など・・・毎朝の早朝ウォーキングで出会う風景です。優しい筆致で描かれています。

元箱根の「芦ノ湖テラス」の内にあるミュージアムの名称は「ライフアート」。

玉村さんはおっしゃいます。

「その土地に生きる人々の暮らしの情景を描くことにもよるのですが、私の絵が家の中にさりげなく飾られて毎日の暮らしに少しでも潤いを与え、私自身も自分の暮らしそのものをアートとして表現できたら、と思い、美術館にこんな言葉を冠することにしました」と。

そうなのです。私も一室に玉村さんの絵を4枚飾らせていただいておりますが、パリに暮す人、野の花、ブドウ、アルルの女性。心をホッとしてくれ癒してくれる絵画なのです。

玉村さんご夫妻とはもうかれこれ30年ちかいお付き合いをさせていただいております。

1945年・東京生まれ。1971年東京大学仏分科卒業。在学中にパリ大学言語学研究所に2年間留学。通訳、翻訳業をへて、文筆業へ。エッセイスト、画家、ヴィラデストガーデンファーム&ワイナリーのオーナー。

1991年東部町(現・東御市)に移住しハーブや西洋野菜を栽培し、ガーデンの花々は四季折々美しく咲き誇っています。そして、広大なブドウ畑。最近は東御市内にワイナリー、パン屋さん、チーズ屋さんなど素敵なお店が次々にオープンしておりますが、玉村さんがこの30年間にまいた種が育ってきたのですね。

湖畔のミュージアムでこのような”箱根風景”を拝見すると自分の住む街を再発見いたします。

箱根では噴火警戒レベルが1から2に引き上げられましたが、黒岩祐冶知事は「立ち入り規制は広い箱根のごく一部。安全を最優先としつつ丁寧で正確な情報発信に務める」とおっしゃっています。

26日の箱根関所の開設400年を祝う大名行列も予定通り行われ大勢の見物客で賑わっておりました。

箱根はツツジ、石楠花が終わり、これから紫陽花の季節です。そして私の大好きな”やまぼうし”の花が全山、真っ白い帽子をかぶったように咲き始めます。初夏の爽やかな箱根に小さな旅にお越しください。

そして、玉村豊男さんの”箱根風景”に出逢ってください。

玉村豊男ライフアートミュージアム
http://www.ashinoko-terrace.jp/museum.html
4月15日~8月31日
平日 10:30~17:00
土・日・祝 9:00~17:00

入館無料・無休
バスは「箱根神社入口」下車、徒歩2分

老いた家 衰えぬ街 住まいの終活

東京で次々にマンションが建てられている一方で、最近全国的に、空き家の問題がニュースでも大きく取り上げられています。全国の空き家の数が過去最高を更新したとあります。

総務省の住宅・土地統計調査によると、昨年10月時点で首都圏(1都3県)でも約200万戸の空き家が存在しているそうです。今、戸建ての4軒に1軒が空き家予備軍というデータもあり、この問題を先送りしてはいけないところまできています。

そこで『老いた家 衰えぬ街』をお書きになった野澤千絵さんをラジオのゲストにお迎えしお話を伺いました。サブタイトルが『あなたの家は大丈夫ですか?』です。

「全国の空き家予備軍ランキング」が掲載されています。関東では1位が横浜市栄区と東京都品川区、そして練馬区へと続きます。全国では2013年の時点ではおよそ720万戸。ある程度の予測はしておりましたが、はるかにそれを越え、この問題は国民みんなで考えなければいけないのですが、”何が問題なのか”を詳しく野澤さんからお聞きいたしました。

野澤さんは兵庫県のお生まれ。1996年、大阪大学大学院・修士課程終了後、ゼネコン勤務を経て、2002年東京大学大学院・博士課程終了。現在は東洋大学・理工学部建築学科の教授です。

専門は都市計画・街づくりです。そもそも、どうしてこれだけ空き家が多くなってきたのか?と伺うと実家の相続をきっかけに空き家化することが多いそうです。

就職や結婚で実家を出る時から空き家化は始まり配偶者の実家などでも同時多発的に起るとのこと。もし、実家を相続して、そのまま住むなら問題はないのですが、住まない場合が多く、そこが問題だとか。

本当はその時点で、売却するなり、人に貸すなり、何か動いたほうがいいのですが、心の整理がつかず、『とりあえず、置いておくか』のケースが多いとか。コストがかかるから、相続放棄する・・・とにかくお話を伺うと問題山積!です。

ラジオではじっくりお話をうかがいました。ぜひ、お聴きください。そして、ご著書ではさらに詳しくアドバイスもされております。

放送は6月9日 日曜10時半~11時
文化放送「浜 美枝のいつかあなたと」

飛騨路を旅して

木曾川と一緒に山々を分け入って進む高山線は、木の国へと人を誘うルートです。

豊かな水の流れ、芽吹きの葉の美しさは輝くばかり。木は誇らしくそびえ、枝を広げています。季節は春がすぎ初夏。緑濃く葉を茂らせて、まもなく実りの時を迎えます。

人にたとえるなら気力にあふれ充実した時代というところでしょうか。田んぼには苗が植えられ水面はキラキラ太陽の光が射して、それは美しい景色です。車窓からのこの風景に最初に出会ったのは、もう半世紀も前のことです。春夏秋冬このルートを何度旅したことでしょう。どんな風にもみぞれにも雪にもひるむことなくひたすら走り続ける列車。

多く旅をしていると多くの木々にであいます。あの木げんきかしら、あの木はどんな顔になったかしらと、再会を楽しみにする木が私の旅先には何本もあります。

新潟の山、山形の、石川の、富山の、北海道の、熊本の、山々、そして樹々。また逢ったときの嬉しさは、懐かしい人々に再会したときのうれしさに似ています。

岐阜と富山の県境に、御母衣(みほろ)ダムがあります。その傍らに樹齢500年とも言われる庄川桜が今年も見事に咲き誇ったことでしょう。村が湖底に沈む直前に移植されました。作家、故・水上勉さんの「桜守」でしりました。

庄川上流の村々の家、小・中学校、神社、寺、木々や畑がすべて水没していく運命の中で500年もの樹齢を誇る老桜樹は幾人もの男たちの桜へのひたむきな思いによって移植され、今もなお季節がめぐるたび美しい花を咲かせてくれます。

”桜守”木の存亡に生命(いのち)を燃やすひと。ずいぶん前に行ったとき、その桜の木の下で、水没した村のおばあちゃん達がお花見をしていました。木の幹にさわり『あんた、今年も咲いてくれたの~』とつぶやいている姿に胸が熱くなりました。

今回は「ITC-J飛騨高山クラブ30期記念」に招かれての講演でした。岡山、大阪、京都、名古屋そして飛騨の女性たち。「育み そして育まれ」をテーマに女性の方々と語りあいました。

せっかくの久しぶりの高山、前泊し高山市内を散策したのですが、インバウンド、人・人・人・・・海外からの観光客で中心地は人で溢れていました。でも、古い町並みや日本で唯一残る陣屋は当時の姿そのままに、”飛騨匠の心”が息づく技を見ることができます。


心落ち着く「飛騨国分寺」は1250年の昔、聖武天皇の勅願によって建立されました。本尊薬師如来御像、そして円空上人作の弁財天など拝観させていただきました。樹齢1200年のイチョウの木は天をつくかと思えるほどの高さです。

最後は私のお気に入りの蔵を改造して作られた素敵な喫茶店で、手づくりの黒蜜でくずきりをいただき、そしてコーヒーを。ご主人との会話も楽しく充実したひとときでした。

往古(おうこ)と現在(いま)をつなぐ飛騨路への旅でした。

お二人に ぞっこんです!

私は今、二人の男性に惚れ込んでいます。こんなことは、もちろん初めてです。

お一人は坂本長利さん。今年の1月11日、このブログに書かせていただきました。坂本さんは1時間半近いお芝居を、たった一人で演じきる舞台俳優です。

土佐に住む盲目の馬喰が、自分の半生を悔悟と誇りを込めて振り返る「土佐源氏」。1967年の初演から半世紀以上、国内外で公演を積み重ねてきました。

今年の1月は東京の高円寺、そして平成もカウントダウンの先月29日には、川崎の新百合ヶ丘で1210回目の舞台がありました。両方とも、私は”追っかけ”ました。

何という舞台!坂本さんが寸分の隙もなく、時間と空間を従えていました。盲目の元馬喰は、言葉だけではもどかしい、微妙な心のざわめきや迷いを、手足の指先までも動員して演じていました。円熟味などという表現を、軽々と飛び越えていました。

ちなみに坂本さん、この10月には90歳を迎えられます。「百歳までやりますよ!」と。とても小柄な方が、舞台では何故あれだけ凛として、大きくみえるのでしょう。

新百合ヶ丘の会場を出るとき、私の背筋がピンと伸びました。私、”追っかけ”はこれからも続けます!

https://kyowado.jp/tosagenji_2011.html

二人目は、ジャン=リュック・ゴダールさん。

言わずと知れたフランスの天才映画監督で、「ヌーヴェル・ヴァーグ」の旗手。私が「勝手にしやがれ」や「気狂いピエロ」に初めてお目にかかったのは、もう50年以上も前のことになります。

旋風、いえ台風。若かった私など、彼の強烈なイメージやメッセージに訳も分からず煽られ続けました。

その昔、指揮者のカラヤンを「かっこよすぎるカラヤン」と表現した詩人がいましたが、私にとっては「かっこよすぎるゴダール」でした。初の長編作品「勝手にしやがれ」では監督と出演者を兼ねていましたね。

そのゴダールさんの4年ぶりの最新作が公開されるというので、取るものもとりあえず行ってまいりました。

題名は「イメージの本」。衰えない感性というものが世の中には存在するのですね。この映画の特徴は「コラージュ」。”糊付け”と訳すそうです。様々な映画や絵や写真、そして文章などを引用してつなぎ合わせる。90分近く、そのセンスと感覚にまたまた振り回されました。ちなみに映画の字幕では、「イメージ」を「映像」と訳していました。

ゴダールさん、今年の12月には89歳を迎えるとのこと、これからも作品を作り続ける!と話しているそうです。

こうして、二人の素敵なおじいちゃまに惚れてしまった私。今よく、「人生100歳時代」などと言われますが、それは単なる目標ではないですよね。

「そこまでに何をやりたいのか?プロセスが大事だよ!頑張りなさい」と叱咤された思いで、平成の終わりの街を大股でシャンと歩きました。

映画公式サイト
http://jlg.jp/

東寺~空海と仏像曼荼羅

間もなく端午の節句、菖蒲の花が美しい季節。葉は細長く剣型で、独特の芳香を放つので、邪気を祓うといわれ菖蒲湯に入り、邪祓いをいたしますね。

皆さまはゴールデンウイークはどのようにお過ごしでしょうか。ちょっと遠出をなさる方、近場で楽しむ方、仕事を休めない方、それぞれですね。

私はラジオの収録があるので東京に出かけました。そして、念願の『東寺~空海と仏像曼荼羅』展を上野の東京国立博物館へ観に行ってまいりました。

国宝の数々、まさに密教の世界へと誘ってくれます。まるで密教の森の中へとさまよっている感覚です。

弘法大師・空海が構想した立体曼荼羅を21体のうち15体が京都・東寺から博物館へ。端正なお顔立の国宝「帝釈天騎象像」など東寺で拝顔するのと違い仏像と仏像のあいだを回廊のように、自由に歩きながら360度観られるのです。

中国から伝わったといわれるエキゾチックな毘沙門天。国宝「両界曼荼羅図」は彩色なされている最古のものだそうです。曼荼羅の外側には星座の十二宮が描かれていてギリシャからインド、中国へと伝わったといわれます。

広々とした空間に一体一体と対峙でき、照明がゆったりと当てられ、台座が低いので細部まで観られます。仏を見上げるのではなく、すべてを受け入れ癒してくれるような仏さま。

国宝「天蓋」は仏像の頭上に揚げられていた飾り。ヒノキ材を蓮華の形に彫刻されている美しいもの。密教美術の奥深さを感じ、密教の世界感を体で感じることのできる特別展でした。空海の直筆の手紙の前では多くの方が見入っていました。

秋になったら高野山に行きたいな~と思いました。そうそう、伏し目のイケメン国宝「帝釈天騎像」はフラッシュをたかなければ撮影可です。私の大好きな仏さま。

今読んでいる本が 「荒仏師運慶」(梓澤要著)なのですが、鎌倉時代の仏師、運慶は21体の仏像を数十名の仏師を引き連れて修理にあたったといわれています。空海の構想に運慶の息吹。ロマンを感じます。(6月2日(日)まで)

天皇陛下の30日の退位に伴い時は「平成」から「令和」へと移り、『令和元年』となりました。上皇さまのお言葉を拝聴し国民への感謝と次代に向けた思いを伺い胸がいっぱいになりました。これからは上皇后さまとご一緒にゆっくりとお過ごしください、と祈り1日は夜明けとともに歩いて箱根神社に参拝いたしました。平和で災害のない令和でありますように。

東京国立博物館公式サイト
https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1938