老いた家 衰えぬ街 住まいの終活

東京で次々にマンションが建てられている一方で、最近全国的に、空き家の問題がニュースでも大きく取り上げられています。全国の空き家の数が過去最高を更新したとあります。

総務省の住宅・土地統計調査によると、昨年10月時点で首都圏(1都3県)でも約200万戸の空き家が存在しているそうです。今、戸建ての4軒に1軒が空き家予備軍というデータもあり、この問題を先送りしてはいけないところまできています。

そこで『老いた家 衰えぬ街』をお書きになった野澤千絵さんをラジオのゲストにお迎えしお話を伺いました。サブタイトルが『あなたの家は大丈夫ですか?』です。

「全国の空き家予備軍ランキング」が掲載されています。関東では1位が横浜市栄区と東京都品川区、そして練馬区へと続きます。全国では2013年の時点ではおよそ720万戸。ある程度の予測はしておりましたが、はるかにそれを越え、この問題は国民みんなで考えなければいけないのですが、”何が問題なのか”を詳しく野澤さんからお聞きいたしました。

野澤さんは兵庫県のお生まれ。1996年、大阪大学大学院・修士課程終了後、ゼネコン勤務を経て、2002年東京大学大学院・博士課程終了。現在は東洋大学・理工学部建築学科の教授です。

専門は都市計画・街づくりです。そもそも、どうしてこれだけ空き家が多くなってきたのか?と伺うと実家の相続をきっかけに空き家化することが多いそうです。

就職や結婚で実家を出る時から空き家化は始まり配偶者の実家などでも同時多発的に起るとのこと。もし、実家を相続して、そのまま住むなら問題はないのですが、住まない場合が多く、そこが問題だとか。

本当はその時点で、売却するなり、人に貸すなり、何か動いたほうがいいのですが、心の整理がつかず、『とりあえず、置いておくか』のケースが多いとか。コストがかかるから、相続放棄する・・・とにかくお話を伺うと問題山積!です。

ラジオではじっくりお話をうかがいました。ぜひ、お聴きください。そして、ご著書ではさらに詳しくアドバイスもされております。

放送は6月9日 日曜10時半~11時
文化放送「浜 美枝のいつかあなたと」

飛騨路を旅して

木曾川と一緒に山々を分け入って進む高山線は、木の国へと人を誘うルートです。

豊かな水の流れ、芽吹きの葉の美しさは輝くばかり。木は誇らしくそびえ、枝を広げています。季節は春がすぎ初夏。緑濃く葉を茂らせて、まもなく実りの時を迎えます。

人にたとえるなら気力にあふれ充実した時代というところでしょうか。田んぼには苗が植えられ水面はキラキラ太陽の光が射して、それは美しい景色です。車窓からのこの風景に最初に出会ったのは、もう半世紀も前のことです。春夏秋冬このルートを何度旅したことでしょう。どんな風にもみぞれにも雪にもひるむことなくひたすら走り続ける列車。

多く旅をしていると多くの木々にであいます。あの木げんきかしら、あの木はどんな顔になったかしらと、再会を楽しみにする木が私の旅先には何本もあります。

新潟の山、山形の、石川の、富山の、北海道の、熊本の、山々、そして樹々。また逢ったときの嬉しさは、懐かしい人々に再会したときのうれしさに似ています。

岐阜と富山の県境に、御母衣(みほろ)ダムがあります。その傍らに樹齢500年とも言われる庄川桜が今年も見事に咲き誇ったことでしょう。村が湖底に沈む直前に移植されました。作家、故・水上勉さんの「桜守」でしりました。

庄川上流の村々の家、小・中学校、神社、寺、木々や畑がすべて水没していく運命の中で500年もの樹齢を誇る老桜樹は幾人もの男たちの桜へのひたむきな思いによって移植され、今もなお季節がめぐるたび美しい花を咲かせてくれます。

”桜守”木の存亡に生命(いのち)を燃やすひと。ずいぶん前に行ったとき、その桜の木の下で、水没した村のおばあちゃん達がお花見をしていました。木の幹にさわり『あんた、今年も咲いてくれたの~』とつぶやいている姿に胸が熱くなりました。

今回は「ITC-J飛騨高山クラブ30期記念」に招かれての講演でした。岡山、大阪、京都、名古屋そして飛騨の女性たち。「育み そして育まれ」をテーマに女性の方々と語りあいました。

せっかくの久しぶりの高山、前泊し高山市内を散策したのですが、インバウンド、人・人・人・・・海外からの観光客で中心地は人で溢れていました。でも、古い町並みや日本で唯一残る陣屋は当時の姿そのままに、”飛騨匠の心”が息づく技を見ることができます。


心落ち着く「飛騨国分寺」は1250年の昔、聖武天皇の勅願によって建立されました。本尊薬師如来御像、そして円空上人作の弁財天など拝観させていただきました。樹齢1200年のイチョウの木は天をつくかと思えるほどの高さです。

最後は私のお気に入りの蔵を改造して作られた素敵な喫茶店で、手づくりの黒蜜でくずきりをいただき、そしてコーヒーを。ご主人との会話も楽しく充実したひとときでした。

往古(おうこ)と現在(いま)をつなぐ飛騨路への旅でした。

お二人に ぞっこんです!

私は今、二人の男性に惚れ込んでいます。こんなことは、もちろん初めてです。

お一人は坂本長利さん。今年の1月11日、このブログに書かせていただきました。坂本さんは1時間半近いお芝居を、たった一人で演じきる舞台俳優です。

土佐に住む盲目の馬喰が、自分の半生を悔悟と誇りを込めて振り返る「土佐源氏」。1967年の初演から半世紀以上、国内外で公演を積み重ねてきました。

今年の1月は東京の高円寺、そして平成もカウントダウンの先月29日には、川崎の新百合ヶ丘で1210回目の舞台がありました。両方とも、私は”追っかけ”ました。

何という舞台!坂本さんが寸分の隙もなく、時間と空間を従えていました。盲目の元馬喰は、言葉だけではもどかしい、微妙な心のざわめきや迷いを、手足の指先までも動員して演じていました。円熟味などという表現を、軽々と飛び越えていました。

ちなみに坂本さん、この10月には90歳を迎えられます。「百歳までやりますよ!」と。とても小柄な方が、舞台では何故あれだけ凛として、大きくみえるのでしょう。

新百合ヶ丘の会場を出るとき、私の背筋がピンと伸びました。私、”追っかけ”はこれからも続けます!

https://kyowado.jp/tosagenji_2011.html

二人目は、ジャン=リュック・ゴダールさん。

言わずと知れたフランスの天才映画監督で、「ヌーヴェル・ヴァーグ」の旗手。私が「勝手にしやがれ」や「気狂いピエロ」に初めてお目にかかったのは、もう50年以上も前のことになります。

旋風、いえ台風。若かった私など、彼の強烈なイメージやメッセージに訳も分からず煽られ続けました。

その昔、指揮者のカラヤンを「かっこよすぎるカラヤン」と表現した詩人がいましたが、私にとっては「かっこよすぎるゴダール」でした。初の長編作品「勝手にしやがれ」では監督と出演者を兼ねていましたね。

そのゴダールさんの4年ぶりの最新作が公開されるというので、取るものもとりあえず行ってまいりました。

題名は「イメージの本」。衰えない感性というものが世の中には存在するのですね。この映画の特徴は「コラージュ」。”糊付け”と訳すそうです。様々な映画や絵や写真、そして文章などを引用してつなぎ合わせる。90分近く、そのセンスと感覚にまたまた振り回されました。ちなみに映画の字幕では、「イメージ」を「映像」と訳していました。

ゴダールさん、今年の12月には89歳を迎えるとのこと、これからも作品を作り続ける!と話しているそうです。

こうして、二人の素敵なおじいちゃまに惚れてしまった私。今よく、「人生100歳時代」などと言われますが、それは単なる目標ではないですよね。

「そこまでに何をやりたいのか?プロセスが大事だよ!頑張りなさい」と叱咤された思いで、平成の終わりの街を大股でシャンと歩きました。

映画公式サイト
http://jlg.jp/

東寺~空海と仏像曼荼羅

間もなく端午の節句、菖蒲の花が美しい季節。葉は細長く剣型で、独特の芳香を放つので、邪気を祓うといわれ菖蒲湯に入り、邪祓いをいたしますね。

皆さまはゴールデンウイークはどのようにお過ごしでしょうか。ちょっと遠出をなさる方、近場で楽しむ方、仕事を休めない方、それぞれですね。

私はラジオの収録があるので東京に出かけました。そして、念願の『東寺~空海と仏像曼荼羅』展を上野の東京国立博物館へ観に行ってまいりました。

国宝の数々、まさに密教の世界へと誘ってくれます。まるで密教の森の中へとさまよっている感覚です。

弘法大師・空海が構想した立体曼荼羅を21体のうち15体が京都・東寺から博物館へ。端正なお顔立の国宝「帝釈天騎象像」など東寺で拝顔するのと違い仏像と仏像のあいだを回廊のように、自由に歩きながら360度観られるのです。

中国から伝わったといわれるエキゾチックな毘沙門天。国宝「両界曼荼羅図」は彩色なされている最古のものだそうです。曼荼羅の外側には星座の十二宮が描かれていてギリシャからインド、中国へと伝わったといわれます。

広々とした空間に一体一体と対峙でき、照明がゆったりと当てられ、台座が低いので細部まで観られます。仏を見上げるのではなく、すべてを受け入れ癒してくれるような仏さま。

国宝「天蓋」は仏像の頭上に揚げられていた飾り。ヒノキ材を蓮華の形に彫刻されている美しいもの。密教美術の奥深さを感じ、密教の世界感を体で感じることのできる特別展でした。空海の直筆の手紙の前では多くの方が見入っていました。

秋になったら高野山に行きたいな~と思いました。そうそう、伏し目のイケメン国宝「帝釈天騎像」はフラッシュをたかなければ撮影可です。私の大好きな仏さま。

今読んでいる本が 「荒仏師運慶」(梓澤要著)なのですが、鎌倉時代の仏師、運慶は21体の仏像を数十名の仏師を引き連れて修理にあたったといわれています。空海の構想に運慶の息吹。ロマンを感じます。(6月2日(日)まで)

天皇陛下の30日の退位に伴い時は「平成」から「令和」へと移り、『令和元年』となりました。上皇さまのお言葉を拝聴し国民への感謝と次代に向けた思いを伺い胸がいっぱいになりました。これからは上皇后さまとご一緒にゆっくりとお過ごしください、と祈り1日は夜明けとともに歩いて箱根神社に参拝いたしました。平和で災害のない令和でありますように。

東京国立博物館公式サイト
https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1938

ノートルダム大聖堂

皆さんもニュースなどでご覧になったことと思いますが、パリ・シテ島にあるノートルダム大聖堂が火災のため一部が焼け落ちました。

私はパリ在住40年以上の友人にお見舞いのメールを差し上げたら、たまたま火災の2日前に八重桜が満開の寺院に行きその美しさを写真に収めて私に送ってくださいました。

『夕食をしている時に尖塔の燃え落ちる映像が飛び込んできて大聖堂がどうなるか不安になったわ、貴重な一枚になってしまった』ということです。

ゴシック建築を代表する建物。パリのシテ島にあり、周辺の文化遺産とともに1991年ユネスコの世界遺産に登録されています。フランス語で「我が貴族」つまり「聖母マリア」を指します。

私もパリ滞在中は小さな台所つきのアパートを借り、オルセー美術館やオランジェリー美術館などをまわり、ノートルダム寺院の裏側にまわり小さな公園で大聖堂の美しい姿を観ながらひと休み。そばのカフェでオニオングラタンスープかサンドウィッチとカフェオレなどをいただきお気に入りの散策コースです。

火災では大聖堂の屋根と尖塔が崩落しましたが、有名な薔薇(ばら)のステンドグラス・パイプオルガンなど数々の貴重な文化財は消失をまぬがれました。多くの宝物は運びだされたのです。

マクロン大統領は「ノートルダム寺院をさらに美しく、再建する。今から5年以内に完成させたい。我々はできる」と語りました。

世界中の文化遺産は地球に暮す私たちの宝です。一日も早い復活を祈ります。

ポーラ美術館×ひろしま美術館 印象派、記憶への旅

寒暖の差が激しい初春、私の住む箱根は先週はいきなりの真冬日。雪が一日降り続きましたが、それでも日差しが徐々に増してきて、吹き渡る風も穏やかになり、柔らかな風に誘われて一日ポーラ美術館で『印象派、記憶への旅』展を楽しんでまいりました。

今回の展覧会は、絵画を鑑賞する以外にもとても興味深い展示がされています。

「箱根の自然と美術の共生」をコンセプトに、2002年に開館したポーラ美術館は都心から車で約1時間半。強羅から、ひめしゃら林道を通り、木漏れ日坂を抜けたところに建っています。

建物を取り囲むように670m遊歩道が延び、四季折々の景色が楽しめます。私が山暮らしを始めて40年ちかく経ちますが、箱根の風景はもちろんのこと、こうしていくつもの美術館に囲まれて、ふっとその気になったらバスで訪れることができる・・・最大の魅力です。

モネ、ゴッホ、マティス、ピカソ、ルノアール、シスレー、スーラ、ロートレック、ゴーガン・・・などなど。19世紀の画家たちの旅と記憶、都市や水辺の風景に向けられた”画家たちのの視線、風景の印象や移ろいゆく光の変化”などが楽しめます。

ポーラ美術館は3点のゴッホ作品を収蔵していますが、今回私がとても興味深くぜひ知りたい!と思ったのは同館と東海大学との共同でこの3作品について科学調査を行ったのです。

赤外線、紫外線、X線、蛍光X線、透過光写真などを使って、絵画に残された筆跡や制作の痕跡をたどり、「記憶への旅」で作品がもつ記憶をカンヴァスの裏側から読み解いていく、というものです。

ゴッホの『草むら』。ゴッホは耳切り事件の後、アルルの病院に入院し、病院の庭で見たと思われる草花や、草の茂みを色鮮やかに緑、黄色を用いて、強いタッチで描いています。

展覧会では写真でカンヴァスの裏に残った謎のサイン。サインのような文字。そして本来ならば「裏打ち」されているのにこの作品はなされていません。謎!です。そして、今回の調査で、「草むら」の下に緑色の葉がある「黄色い花の野原」のような作品の上に「草むら」を描いたことが分かります。なぜなのでしょうか・・・精神を病んでいたゴッホ。弟テオに作品を送るさい木枠から外して送ったといわれます。その裏側に秘密が隠されているのでしょうか・・・。

37年という短い生涯を終えたフィンセント・ファン・ゴッホ(1853~1890)。

南仏アルルに到着して手掛けた『ヴィゲラ運河にかかるグレーズ橋』は喜びが伝わる作品です。

橋の上の人物、その奥の低木、洗濯女たちの輪郭は赤が使われ明るい陽光に満ちた絵。浮世絵に影響を受けたとされる作品ですが、赤い絵の具などに「水銀」が含まれていることが今回の調査で分かりました。

絶頂期から死の一カ月前に描かれた『アザミの花』。斜光写真から「草むら」などよりかなり厚塗りされているとのこと。こちらも「裏打ち」されておりません。ゴッホがどんな絵の具を使い、どのように描き、そのときの心情を想像し、画家ゴッホを身近に感じ、絵画を楽しむ。

今回の展覧会は見どころがいっぱいありました。変わりゆく街、パリを描いた作品、光の新しい表現、水辺の風景・・・画家たちの「記憶への旅」を体感しながら私も一日の”旅”を経験してまいりました。

この展覧会では一部を除いてフラッシュをたかなければ写真撮影が可です。

残念ですが、ゴッホ、ピカソなどは不可でした。写真で存分に味わってください。でも、できたらこれからの箱根はゴールデンウイーク後位に満開に咲く山桜、そしてコブシ、紫陽花、初夏にま真っ白い大きな帽子のように咲く”やまぼうし”などをご覧になりながら本物の絵画と出逢いにいらしてください。

帰りには間もなく新緑を迎える庭をうららかな陽光を浴びて散策し、家路に着きました。

美術館公式サイト
https://www.polamuseum.or.jp/

映画『記者たち~衝撃と畏怖の真実~』

2001年9月11日のアメリカから送られてきたあの映像に衝撃をうけ、同時テロの後、「イラクが大量破壊兵器を保有している」ことを発表しイラク戦争へと突入する報道を私は当時何も疑わずに画像を見たり、新聞を読んでいました。

当時のブッシュ政権は、テロ組織アル・カーイダの本拠地があるアフガニスタンだけではなくイラクも攻撃し、多くの一般人も巻き添えにしての進攻でした。「大量破壊兵器」は本当にあったのか・・・。

あれから時を経て、今回の映画「記者たち~衝撃と畏怖の真実~」を観ました。ロブ・ライナー監督作品。「スタンド・バイ・ミー」「恋人たちの予感」など娯楽作品の数々を世に送り続けヒットさせてきた監督が、執念で映画化したといわれるこの実話を基に映画化された作品に、正直に言って私はとても大きな衝撃をうけました。

満員の劇場内。第一印象は「よくこのような映画をつくることができたこと」への驚きと米国の民主主義の底力、”真実を伝える覚悟”にまず驚きと畏敬の念をいだきました。

あの戦争は”嘘”だったこと。大手メディアは軒並みこの権力の暴走を止めることなく報道を進めていましたし、私は日本の報道でそうだと思い込んでいましたが、政府のウソを鵜呑みにするなか、中堅新聞社ナイト・リッダーのワシントン支局は、そのニセ情報に疑問を抱き、4人の記者が当時のニュース映像などを交え、米政府が情報を捏造していたこと、大手新聞社が政府の方針を追認していた実態を明らかにしていきます。

封切に来日した監督はインタビューで「政府を批判する内容だけに制作は難航した。撮影数日前に、一部の出資者から降りると言われ、自腹を切って制作した。それでもこの映画を作る価値はあると思った」と語っています。

撮影にあたり出演予定だったワシントン支局長役の俳優が急遽降板したので「どうしようかと思っていたら、妻が『あなたがやればスケジュールもあいているでしょ』のひと言ででやったんだ(笑)とのことですが、俳優でもある監督がいい味だしているのです。

現場には実際モデルになった記者達がほとんど付き合ってくれアドバイスをくれたそうです。骨太の映画ですが、記者同士のかけあいなど楽しくみられます。英語のニュアンスの分からない私は笑うことができないところで、劇場内での笑い。さすが、ロブ・ライナー監督です。

監督はインタビューで『世界は今、大きな岐路に立っている。例えば気候変動、例えば独裁主義の台頭。世界で起っていること、あるいは政治について感じることを表現していきたいと思っている。』

そして『観客に人生の1~2時間を削ってもらって、しかも暗い部屋で作品に関与してもらうわけだから、何か提供しなくてはいけないと思っている。どんな暗い作品でも、ユーモアとのミックスを大切にしているんだよ』との新聞記事を読みますますロブ・ライナー監督のファンになりました。

私たちは”ウソ”を見抜く目をたえず持ち続けなければいけませんよね。”鵜呑み”にしてはいけませんよね!だってそれらを許していたらその”ツケ”は未来の子ども達につながってしまうのですから。

後味のいい、そして深く考えさせられる映画でした。

映画公式サイト
http://reporters-movie.jp/

奇想の系譜展~江戸絵画ミラクルワールド

上野公園は満開に開花した桜を愛でる人々で賑わっておりますが、私がこの展覧会を観にいったのは1週間ほど前。5分咲きでしたが、それでも賑わっておりました。

会場の「東京都美術館」は午後1時でもかなりの人がチケット売り場に並んでいます。「江戸アヴァンギャルド一挙集結!」とあります。美術史家・辻惟雄(1932年~)が1970年に著した「奇想の系譜」。その著作に基づいた江戸時代の「奇想の絵画」展の決定版といわれています。

今もっとも人気のある「伊藤若沖」。そして狩野派きっての知性派といわれる狩野山雪、歌川国芳など8名の作品が一堂に会しました。

いまや超人気の若冲。会場に入ると、いきなり巨大な白象と黒鯨に対面する。お~~と「象と鯨図屏風」に出くわします。のけぞるほどの迫力、ユルキャラのようにデフォルメされた白象、鯨は潮を吹く背中しか見えません。この絵画を観たかったのです。

しかし、これまで美術展に行き、目的の絵画に出会うまでのウォーミングアップが楽しみなのですが、今回はいきなりです。自由で斬新な発想、まさに江戸のアヴァンギャルド!

因襲の殻をやぶり描かれていますが、一方初期の作品「紫陽花双鶏図」は観察しつくした緻密な鶏と紫陽花には若き頃の若冲の才能を感じられます。(米国・ブライスコレクション所蔵)

そして、目的のもう一枚。狩野山雪の「梅花遊禽図襖」(ばいかゆうきんずふすま)は花鳥画と見えますが主役は花でも鳥でもなく、画面中央をもだえるように枝が描かれているのです。

上に伸びようとしている枝が押さえつけられでも、小枝は真っ直ぐに伸び・・・この非現実的な世界に魅了されます。こうして江戸時代に”アヴァンギャルド”が存在し、現代の私たちの目の前に現れてくれる・・・本物に出逢う、体験し、感じ、感動する。もうすぐ終わってしまいますが4月7日までです。

上野公園・東京都美術館にて開催中。
https://www.tobikan.jp/exhibition/2018_kisounokeifu.html

『骨まで愛して 粗屋五郎の築地物語』

ご存知、発酵学者の小泉武夫さんが、魚の頭や骨などの「粗」をテーマにした小説をお書きになりました。皮からジュルジュルコラーゲン、骨酒グビグビコピリンコ、目玉の周りはトロットロ!と帯に書かれております。

これが実に美味しそうで、読んでいるとお腹がグーグー鳴り、ヨダレがでてくるほどなのです。あらすじは福島県いわき市出身の主人公が集団就職で上京して以来、築地一筋。築地ナンバーワンのマグロ捌き職人として有名でしたが、55歳で勤めていた仲卸をやめて、子どもの頃から好きだった魚の粗だけを使うお店をオープンさせます。

場所は、築地四丁目の路地裏。鳥海五郎の人柄と腕にひかれた様々なお客さんがやってきて・・・という風に物語りは展開していきます。

小泉さんは東京農業大学名誉教授・農学博士で、鹿児島大学、琉球大学などの客員教授を務めるかたわら、食に関わる様々な活動を展開し、和食の魅力を広げ、辺境の旅を愛し、世界の珍味、奇妙な食べ物に挑戦する「食の冒険家」でもあります。

とにかく小泉さんは大変な”くいしんぼう”。といってもご自分で何でも料理をしてしまいます。このご本に出てくる料理のレシピはほとんど小泉さんのもの。

烏賊の腸煮、皮剥の肝和、煮こごりをぶっかけ丼・・・などなど食前酒にはヒラメの骨酒、河豚の鰭酒、暑い日にはキリリと冷やした日本酒に海鼠の腸をいれた海鼠腸(このわた)酒。

調味料にもこだわり、醤油は千葉・銚子や和歌山湯浅の老舗から。味噌も赤は仙台、豆は尾張・・・というように。

料理好きな小泉さんは「食摩亭」と名付けた自宅の台所でご自分で粗もさばいているそうです。福島県小野町出身。母を早くに亡くし、祖母のこしらえる料理で育てられ「うまい、からだにいい」粗料理で育てられました。

ご著書を拝読していて粗は無駄でなく立派な食材であると教えられます。そういえば、亡くなった私の熊本の祖母も「骨まで愛して」派、煮魚の残った骨にお湯をかけ美味しそうに最後まで食しておりましたね。

ぜひお話を直接お伺いしたいとラジオのゲストにお招きいたしました。

一番好きなのは書くこと。出された本は140冊は超えているそうです。小説の中に「食品廃棄物」の問題も出てきます。食には恵まれた日本。でも”フードロス”は国民みんなで考えなければいけない問題ですよね。

スタジオの小泉さんは「うま味と甘みがチュルチュルと」「ペナペナとしたコクが囃して」「見るだけで涎がピュルと沸きでて」など音で表現する様に、もう~たまりません。

ご本の中には千葉にある「粗神様」もでてまいります。

スタジオの小泉さんはおっしゃいます。「この本には5つの学問がある」と。

『調理学・環境学・民俗学・芸能・発酵学』

飽食社会への警鐘・・・とも受け取れます。かたや「子ども食堂」の問題が全国にひろがりつつあります。世界に目を向ければ飢餓に苦しむ子ども達がいます。『食の問題』は深いですね。

文化放送「浜 美枝のいつかあなたと」
4月14日 日曜日
10時半~11時 放送

映画『グリーンブック』

2月末に発表された米アカデミー賞で作品賞など3部門を獲得した「グリーンブック」を観てまいりました。

「グリーンブック」とは、黒人が利用できる施設を記した旅行案内本。人種差別が色濃い1960年代の米国を舞台に、白人と黒人の交流をユーモラスに描いています。

人種差別が公然とされていた時代の実話を基に描かれた映画です。主人公は、がさつなイタリア系白人で、過去にニューヨークで用心棒をしていた運転手。そして黒人の天才ピアニスト、ドクタードナルド・シャーリー(マハーシャラ・アリ)は、カーネギーホールの上に住む裕福で教養もある人物。

自分をちやほやしている進歩的な白人の目にさらされていることに疑問を感じ、あえて差別の最も強い南部へ演奏旅行にでます。招かれたどんな豪邸やホールでも、トイレは別、控え室も別という理不尽な扱いも受け入れます。

偏見をテーマにする作品ですが、ファレリー監督は随所にユーモアをちりばめ、ジョークで観客を魅了させます。内面に深い悩みを抱えるシャーリーが、南部を移動中に過酷な農作業をしている同胞を車窓から眺めるシーンは胸が熱くなります。二人は旅を通じて分かり合い、、友情を深めていきます。

監督は来日した時に新聞のインタビューにこう語っています。

「50年ほど前の話だが、現代を生きる我々の心に響く部分があると感じた。残念ながら、今のアメリカは、そこからほとんど変わっていない。その愚かさを見る人に感じてもらいたかった。」

伝えたかったのは『希望』だ。とも。

複雑な内面を持つピアニストを繊細に演じたマハーシャラ・アリは「ムーンライト」に続いて2度のアカデミー賞助演男優賞に輝きました。

1970年代後半、私は南アフリカを旅しました。ケープタウンのテーブルマウンテンにロープウェーで上がっていた時に、下を見ると黒人家族がピクニックに行くのに歩いて山を登っていました。飛行場のトイレも別。乗るバスも別。非常にショックを覚えたのがよみがえりました。たった半世紀前のことなのですね。

そして、今回の映画で、現在はロサンゼルス映画批評家教会会長、米公共ラジオNPRの映画番組解説者のクラウディア・プイグさんは『この作品は「差別の現実」をみていない。いつから人種差別は愉快な話になったのか。実話に基づいているとしても、深刻なテーマにユーモアを見つけようとするのは、無知で浅はかだ。演技力は強いのに、シナリオが単純すぎるし、しばしば不愉快ですらある。(中略)表面的なユーモアを探すあまり、現実にある人種差別を過小評価している。もし、米国に人種をめぐる一触即発の状況がなければ、もっと好意的に受け止められたかもしれない。人種差別は過去のものだという誤った認識をもつ白人に心地よい内容になっている。』とコメントしています。

私にはこうした人種差別やアメリカ社会の深層は正直よくわかりません。(それではいけないのでしょうが)ただ映画を通して、黒人の勇気 白人の敬意・・・旅を通じてわかりあう友情、偏見の愚かさ、など、アメリカ社会の多様性に挑んだ映画人たちのメッセージはしっかりと受け取れました。

映画公式サイト
https://gaga.ne.jp/greenbook/