ウナギの話

大変興味深いお話を伺いました。
古代ギリシャの哲学者・アリストテレスの時代から2400年もの間、人類が誰も見ることことの出来なかった”天然ウナギの卵”を、3年前の夏、ついに発見!ウナギの産卵や生態の謎が解明された瞬間でもありました。
とにかく「神秘の世界」です。
文化放送「浜 美枝のいつかあなたと」(日曜10時半~11時)
ゲストに40年に渡り、太平洋でウナギを追い続けた東京大学大気海洋研究所・教授、塚本勝巳さんをスタジオにお招きいたしました。
独自の仮説に基づき、2009年夏、北太平洋・西マリアナ海嶺南端部、海山域で世界で初めて天然ウナギの卵を採ることに成功なさいました。また産卵場所も特定しました。
「世界で一番詳しいウナギの話」(飛鳥新社ポピュラーサイエンス)が好評発売中です。世界のウナギ博士のお話は、ただただ興味深く知らないことばかり。
「うぁぁ、きた、きたぁ~!これは間違いなく来たよォ~!」
そう、心の中で叫んだそうです。
塚本さんは1948年、岡山県生まれ。
農学博士で、専門は海洋生物学、魚類生態学です。
最初は魚類の回遊現象、「なぜ魚は回遊するか」を考えているうちにウナギにたどりついたそうです。
人間以外の動物は、それほどの知能も情報も持っておらず、その時々の気分、あるいは感覚で移動するそうで、動物の移動は目的のない「旅」。
なぜ旅をするのか・・・
ウナギの嗅覚の良さは定評があり、魚ではウナギは犬並みの優れた嗅覚を誇っているそうなんですが、先生はどうしてそんな事が分かったのでしょうか。
ウナギは生まれた海の匂いを記憶していて「ここが約束の場所だ」と感じて長旅に終止符をうち、その時を待つのでしょう」とおっしゃいますが・・・それにしても不思議・不思議!あの広い海で、ウナギが卵を産み採取なさったなんて、お話を伺っていても、良く分かりません、私には。
何しろ世界のウナギ消費量の約7割は日本人が占めているのですから、この問題は重大です。私たちの食生活にはウナギ文化は欠かせません!
詳しくはぜひラジオをお聴きください。
(放送は10月28日と11月11日の2回です)

昼下がりの湿生花園

片岡鶴太郎展の会期中ですが、ふっと秋の山野草や花々が見たくてバスに乗りました。我が家からですと小涌園で下車して「観光施設めぐりバス」に乗り換え、彫刻の森を経由し強羅駅、そしてポーラ美術館、星の王子さまミュージアム、ガラスの森、大好きなラリック美術館を通り、終点の「湿生花園」に着きます。
箱根に住み間もなく40年になりますが、何が幸せって生活空間の近くにこれだけの美術館があること、そして植物に囲まれていること・・・。もし、これらがなかったら穏やかに子育てができたかしら。
子供たちは社会人になり、ずい分と月日がたちました。
箱根の自然は、私自身にも多くの恩恵を与えてくれました。
樹木や花々、雲や富士の山々は、どんなときもやすらぎをくれます。

湿生花園は、仙石原地区に位置します。
山に囲まれた仙石原は、二万年前は湖の底だったそうです。今は干上がった状態ですが、一部残った湿原が湿生花園として、日本の湿原植物を中心に約千五百種の山野草が収集されています。川や湖沼など水湿地に生育している日本の植物や、草原や林、めずらしい外国の山草も含めて多様な植物が四季折々に繁り、花を咲かせ、私はここにくるとえもいわれぬ「至福の時間」を体験できます。
園内の木々もうっすら色づきはじめています。
台が岳に一面広がるススキの穂が午後の太陽の光をうけ銀白色に輝いています。

まず目に入ってきたのは、真っ白な今が見頃を迎えた「ダイモンジソウ」。
北海道~九州の山地の湿った岩地に生える多年草。
薄暗い林内で咲くこの花は可憐です。
白いブラシのような「サラシナショウウマ」名前の由来は、若芽を茹で、水でさらして食べたことから・・・とか。
コムラサキ、ヤマトリカブト、リンドウ、イワシャジン、小さくて可憐なダイモンジソウの花がひっそりと咲き、ヤマトリカブトの濃紫が目をひきます。
秋の企画展「どろぼう草と秋草展」が11月10日まで開催されています。
帰りに「コムラサキ」(紫式部ともいいます)の苗を買ってきました。
バスの車窓からは夕日で赤く染まった芦ノ湖がとても美しい姿で迎えてくれました。

片岡鶴太郎展・こころ色

箱根の我が家「やまぼうし」での展覧会も今年で4回目を迎えます。
あれは6年ほど前のことでしょうか。
新幹線の中でばったり鶴太郎さんにお会いし、我が家の大広間に飾ってあった京都在住の画家・藤井勘介さんの絵をご覧になっていらして「僕、とても好きなんです、勘介先生の作品が」とおっしゃり、ご自身の絵についても語ってくださいました。それがご縁で箱根にお越しくださり、絵を描き始めた動機など伺いました。
ある日、庭に鮮やかに咲く朱赤の椿に出逢い感動し「この花が描けるようになりたい」と思ったことが鶴太郎さんの創作の原点となってるのだそうです。それから、ひたすら筆を持ち、今年で画業17年目を迎える鶴太郎さん。たえずモノの本質を見据え、創作に真摯に取り組んでいらっしゃいます。
今回は初期の作品を展示いたします。
私もたくさんの初期の作品を拝見いたしました。
そこからは、鶴太郎さんの生きることへのひたむきさ、思いやり、優しさのすべてが感じとれます。
私は思うのです。
日々の暮らしを豊かにしてくれるのは「遊び心」「発見」「感動」というようなものではないでしょうか。我が家「やまぼうし」でのこうした展覧会・コンサート・落語会、など等。いろいろな人との出会いもあります。
古民家12軒分を再生してできた我が家、木々たちが優しい空間を作ってくれます。
鶴太郎さんの作品が今回も優しく語りかけてくれることでしょう。
つかの間、日常を忘れてお遊びにいらっしゃいませんか。
お待ちいたしております。
10月14日(日)~21日(日)  ☆17日(水)休館
午前11時~午後5時 (最終日午後4時まで)
入場無料
詳しくはHP「箱根やまぼうし」でご覧ください。

始発電車を待ちながら

東京ステーションギャラリーが5年の時を経て新しいギャラリーとして誕生しました。丸の内北口ドーム内に入り口を移し、以前より広くでも以前の赤レンガを残しつつ設備も充実したスペースとしてのオープン。

先日、行ってまいりました。
「東京駅と鉄道をめぐる現代アート9つの物語」
2012年10月1日(月)~2013年2月24日(日)
9名の個性豊かなアーティストたちが東京駅と鉄道・・・という独自の切り口での作品が展開されていて、新しい物語が紡ぎだされています。
大洲大作「光のシークエンス」の前で、思わず胸がキュンとしてしまいました。
旅の出発点であり、終着駅でもある「東京駅」。
鉄道の旅の素晴らしさは、なんといっても車窓の風景です。流れ行く車窓から見た風景のかずかず。ある時には郷愁を感じ、またある時には、人の営みを身近に感じ、ある時には雨に濡れる車窓から旅の匂いを感じ・・・窓に踊る光やスピード感、その土地の風物や生活に滲む情感が心を揺さぶります。
大正三年(1914年)辰野金吾博士設計により丸の内に建った趣のある立派な駅舎。関東大震災や戦争の災禍を堪え抜いた姿は、単なる建築物というより、私たち日本の歴史を共有してきたシンボルとして、感動すら覚えた駅舎が100年の歴史を経て平成18年から始まった駅舎保存、修復工事を終え、新しい「東京駅」に生まれ変わりギャラリーも創建当時の煉瓦をそのまま生かした展示室となっているのは嬉しかったです。
展示を観ての帰りは回廊を出て、ドームの内部を見ながら人々の行き交う姿に旅情をかきたてられます。ノスタルジックな雰囲気とマッチしながらもモダンな設備を備えた素晴らしい美術館です。
次回は『東京ステーションホテル』のバーに行きましょう。
一杯のカクテルに会いに。
『カメリア』でのカクテルの再会は楽しみです。バーのカーブした窓、昔のぼこぼこしたガラスは残っているのかしら。そこに映る外の風景、電車が入ってくる、出ていく。それだけの風景なのですが、なぜか味わいがあるんです。厚ぼったいガラスの向こうにユトリロの絵のような電車がボーッと浮かび上がり、うっとりしてカクテルをいただくわけです。
カメリアのキャプテン杉本さん。
また、「ハスカップ・ユーリンス」を作ってください。北海道のハスカップにワインとウォッカとレモンをカクテルしたもの。
北海道への旅情が募る、一杯でした。
通勤客に混ざって、改札口でなかなかさよならできない恋人同士、週末の二人だけの旅に出発する恋人たち。
駅はドラマの始発駅であり終着駅。
いつの時代も駅は、出会いや別れの交差点なんですね。
あ~、又旅に出かけたくなったわ、そんな午後の昼下がりでした。