『夢へ。いっぽ、いっぽ。宮崎』

口蹄疫ウイルスの終息宣言から8月27日で2年がたちました。
2年前の4月20日、侵入経路が今もわからない口蹄疫ウイルスが発生しました。復興の現状と宮崎の農業の将来像を語り合う「夢へ。いっぽ、いっぽ。宮崎 シンポジウム~口蹄疫からの飛翔」に宮崎日日新聞にお招きいただきました。


宮崎のみなさんが我が子のように育ててきた牛や豚が次々に感染し、約30万頭の牛や豚を処分するという、考えられないほどの大きな犠牲を払いやっとのことで口蹄疫ウイルスを封じ込めました。
宮崎日日新聞社の報道からは、口蹄疫の本当の生々しい姿を、県民に寄り添いながら地元紙としてまさに「県民一丸となって難局を乗り切るために役割を果たす」という熱い思いが一文字一文字から伝わってきました
私は当初から口蹄疫問題に大きな危機感を抱いていました。
行政の危機管理の低さ、そして国が口蹄疫対策本部を設置して、初会合を開いたのは約1カ月後。
農場は消毒用の消石灰で真っ白になり、県民は感染拡大を恐れて外出を自粛。畜産農家だけではなく収入が途絶えた商工業者も多かったと聞いています。
復興が進みつつありますが、まだまだこれから。
「農業は国の根幹を支える聖なるなりわい」と私は思っています。
当事者でなくても自分の問題としてとらえ『記憶を風化させてはならない』と考えます。
シンポジウムでは口蹄疫からの復興に力を傾ける、酪農家の川上典子さん(JA尾鈴理事)、そして口蹄疫発生を機に企業を退社して実家へ戻り農業を続ける土器美里さん、口蹄疫で沈んだ町経済の再起を目指す三原明美さん(川南町商工会女性部長)、3名のパネリストの方々とご一緒でした。
『夢へ。拓こう 宮崎農業の新たな地平』
お一人お一人のお話を伺っていると胸が熱くなりました。
会場の皆さんの元気なお顔を拝見して、ホッとすると同時に、よくぞ、皆さんあの困難な時期を乗り越えてくださったと、感謝の気持ちでいっぱいです。
『口蹄疫は、あらゆる危機管理に対する警鐘であった』とも感じます。
私たち国民一人ひとりがけっして風化させてはならない・・・と心から思った一日でもありました。
宮崎は農業で、日本を支えているのです。
どうぞ、その誇りを胸に、これからも一歩一歩、歩いていっていただきたいと願います。

宮崎の皆さま、ありがとうございました!

『近畿大学の学生たちと』

近畿大学で客員教授として授業を受け持ち今年で3年目になります。
私自身の学びの場でもあります。
私は中学しか出ていません。
大学や高校という学び舎で勉強する機会には恵まれませんでしたが、社会に出てから出会った多くの先輩方、そして本や映像を通して巡りあうことができた素晴らしい先人たちから、たくさんのことを学ばせていただきました。
そんな経験から机の上の学問だけでなく、現場に赴き、この目で見、耳で聞き、肌で感じながら多くのことを学んでほしい。
大地を歩き、人に出会い、話しを聞き、語り合い、その中から見えてくる切実
な現実から導かされた問題解決にこそ、真の力が宿っているということを学生
の皆さんに感じ取ってほしい・・・。
キャンパスを港として、フィールドワークに出かけましょう!といい続け今年も私の若狭の家での合宿をおこないました。

近畿大学総合社会学部のチャレンジ
「社会と人と自然を見つめるチカラを磨く総合社会学部」
『道なき道を拓く』は学部長の荒巻裕先生の言葉です。
出会う喜び、学ぶ喜び、語る喜びが満ちた新学部を築きます。
現代の先達に学ぶ・自分らしさの発見「暮らし・食・農・旅がもたらすもの」
をテーマに様々なことを学生たちと学んできました。
この夏のフィールドワークでの学生達の感想をお読みください。
環境系専攻1年 井實 彩嘉
福井に着いてまず目の前に入ってきたのは広大な自然の風景でした。
広がる緑の田畑山々は私たちの疲れを癒してくれました。
気温は大阪に劣らず暑かったけれど、風は爽やかでとても気持ちがよかったです。農道を自転車で走っているときも、自分が田んぼの中にいるようでした。これこそ日本の夏休みだと感動していました。
今回おおい町の案内をしてくださった松井さんはとても明るい方で、私もたくさんの元気をもらいました。大変大きな農園を持ってらっしゃることもそうですが、その交友の広さには驚きました。農業をやっている方はもちろん、畜産業や漁業、芸術家の方々までたくさんの出会いがありました。みんなあたたかい方ばかりで、おおい町の人の良さがにじみ出ていたような気がします。
最後のバーベキューの時もたくさんの人が集まってくれ、本当に楽しく過ごせました。最近農業を始めた方々のお話も聞くことができました。今まで講義を聞いて、多くの問題と向き合ってきましたが、実際に現場に行ってみないとわからない多くのことを感じました。どれもこのインターシップでしか学べないような経験ばかりでした。また改めて地域コミュニティの大切さを感じました。この体験と出会いをこれからも大切にし、生かしていきたいと思います。

社会マスメディア系専攻2年 奥野 隼平

福井県の大飯町。私が、この町を知ったのは日本の原発再稼働問題でのことでした。この大飯町は、原発問題に実際に直面していた町だった。
ニュースを見ている限りでは、この大飯町がどんな町であるか全くわからなかった。しかし、このインターンシップではたまたまこの大飯町に行くことができた。とても運がいいと思った。
実際に、この大飯町はとても自然豊かな町であった。行きつくところみんな田んぼや山や畑で緑で覆われていた。そこには、たくさんの虫もいて、中には蜂のような危険な虫もいたが、本当に多くの虫に囲まれて生活できた。都会では、最近は虫が減ってきていて、本当に少しの間であったが自然に帰ることが出来た。
また、今回のインターンシップで、とても大きなものを手に入れたように感じた。それは、都会にはない田舎でしかない地域の結びつきである。都会暮らしでは、どうしても地域一体となって行動できない。現に、隣に住んでいる人の顔さえ知らない状況である。しかし、田舎の人たちは本当に近所づきあいが盛んであると思った。これは、都会も見習わなければならないのもあるが、田舎の人たちの温かさにとても感動を覚えた。
環境系専攻3年 小田島 史弥
私はこのインターンシップを通じて、多くのことを学ぶことができました。まず福井県はとても自然の豊かな場所で、私たちとは正反対の生活を送っていることが分かりました。
最初に感じたことは都会に住んでいる中で普段、どれだけたくさんのものに依存しているかと言うことです。食で言えば、スーパーなどのお店に頼る人がほとんどだと思います。しかし向こうでは農業が盛んで食べ物は自分で作り、また収穫した野菜や米は別の農家と交換するなどお互い支え合いの心を持っていることが分かります。ある農家の人は自分の作った野菜を美味しいと言ってくれる人がいると作りがいがあるとも仰っていました。このことから人間関係の大切さに気付かされました。またこの三日間でお祭りやバーベキューなど楽しいイベントも盛りだくさんで、インターンシップのメンバーとも交流を深めることができる良い機会になりました。
環境系専攻2年 仲 勇至
普段大阪に住んでいて自然と触れ合うことがまったく無かったので、今回のやまぼうしでのフィールドワークはとても貴重な経験となりました。
田んぼ道を自転車で走りながら風景を楽しみ、山を登り滝に打たれたりして自然と触れ合ったことや、ブルーベリーの収穫の手伝いや田んぼの雑草を抜いたりして農業を体験できたこと、地元の「大火勢」という祭りを見に行ったことなど、どれも楽しく、また良い経験となることばかりでした。
その中でも一番印象に残っていることは、実際に農業を営んでいる方々からのお話を聞けたことです。環境系専攻なので、農業も進路の一つとして考えていたのですが、あまり農業にいいイメージを持っていなくて、前向きには考えていませんでした。しかし、話を聞いていると、食べ物にも困らないし生計も十分立てることができ、自分の好きなことを一生懸命できる良い仕事だということを知りました。もし将来、職に就くことが困難になり、どうすることもできなくなったら、思い切って農業をするということも考えようと思います。

環境系専攻1年 西村 直

今回やまぼうしへのフィールドワークを行って学び、懐かしさを感じ、そして驚くこともありました。やまぼうし付近の道路が北海道ほどではありませんが、真っ直ぐな道があり、車も動いている数が少なく、静かで気持ちがよかったです。特に自転車の移動がそう感じさせたのかもしれません。
そこでいろんな所を回りました。きのこの里、ブルーベリー農園、牧畜などを見たりしました。きのこの里では長いすべり台に滑り楽しみました。一番印象に残っているのは、各農園を回ったことです。例えば、ブルーベリーを収穫したり、牛に餌をあげたり、松井農園では、トマトを収穫し、草をむしり、綺麗なトルコキキョウを見せてもらいました。幼稚園や小学校の時にこういった体験をしたことはありましたが、大きくなるに連れて離れていきました。
そして最後のバーベキューでお世話になった人達が来て下さったときはこの地域には多くのつながりがあるなと思いました。このフィールドワークを通じて農業の大変さを知り、また子供の頃にあった気持ちを思い出しとてもいい経験になりました。

環境系専攻3年 西村 陽菜

やまぼうしでのフィールドワークはとにかく楽しかったです。もちろん農家の方のお話を聞いたり、様々な施設を巡ったりして、農業というものを身近に感じることができ、多くのことを学ぶことも出来ました。また、福井県では何もしていなくても、自然のにおいや緑豊かな風景を見たり感じたりすることで癒され、清々しい気持ちになりました。
そして、私はやっぱり自然が好きなのだと実感しました。お世話をしていただいた松井さんは、私たちのことを一番に考えてくれていて、おかげでとても楽しくフィールドワークを終えることが出来ました。お祭りにも行くことが出来たし、そこで見た花火は今まで見たことがないくらい綺麗で、あの映像は脳裏に焼き付いています。地元にいるだけでは体験できないことを、たくさん体験できたフィールドワークになり、とてもいい経験になったと思います。また、福井県にいきたいです。最後に、現地でお世話になった方々に本当に感謝しています。
環境系専攻3年 藤道 美那
私は幼い頃に何度か、家族で福井県にある海水浴場を訪れた事がある。海は透明度が高く、様々な魚が泳いでいるのを何度か見かけて感動したことを今でも覚えている。そんな幼少期の記憶から、福井県は海が綺麗な所であるという印象は前々から持っていた。
今回、インターンシップの合宿で久し振りに福井県を訪れることになり、すごく楽しみにしていた。海を訪れることは無かったが、バスで移動している時に一瞬だけではあるが見ることができてそれだけでも嬉しかった。しかし、海以上に感動する事が待っていた。到着してすぐに私の目に飛び込んできたのは、辺り一面に広がる山々、透き通るような青空、そして青々とした田園風景であった。私はずっと住宅街で育ってきたこともあり、昔から自然豊かな土地に憧れを持っていた。そんな私にとって、そこはまさに理想の空間であった。合宿中の移動はほとんど自転車であり、農道を自転車で走り抜ける時の爽快感はとても言葉では言い表し難いほどである。自然から力を貰ったのか、合宿中はほとんど疲れを感じる事はなく、むしろどんどん身体を動かしたいという気持ちになる事ができた。福井県は海だけでなく、山や田園等の景観も素晴らしいことを知った。
このインターンシップのキーワードの一つである、「食」の面でも色々と考える事があった。今回の合宿では農業を営んでおられる松井さんに大変お世話になったのだが、松井さんの農園を訪問させていただいた際にトマトを味見することができた。やはり、地元のスーパー等で売られているものとは全然違って調味料をつけなくても美味しく頂くことができた。また、朝ご飯は福井県の周辺で採れた作物をいくつか使ってメンバーで手分けして何品か調理したのだが、皆で机を囲んで食事を摂ったのも調味料の一つとなり、どれもすごく美味しかった。地産地消は環境に優しいだけではなく、食べ物を美味しく頂けるのだということを感じた。
さらにもう一つ、「人とのつながり」の面でも考えさせられた事があった。前回の答志島合宿にも感じていたのだがそこに住む人々は皆、周辺の人と仲が良く互いに支えあいながら生きている。私の住んでいる地元ではとても考えられないことである。私たちのような見知らぬ者に対しても同様に温かく接してくれる人が多いように感じた。年々、地域同士のつながりが希薄になってきていることを感じていたが、そこではそういったことは全く感じられなかった。
今回の合宿で改めて自然を守らなくてはいけない事、食の大切さ、人とのつながりについて学んだ。講義でも学ぶ事はたくさんあったが、合宿で実際に体験や実感をすることによってこれらのことは本当に大切なんだと思えた。今後生活していく上でとても大きなヒントを得たと思う。そして、そうした地域をこれからも守っていかなければならないと思った。また機会があれば、福井県を訪れたいと思う。

環境系専攻1年 三谷 信悟

僕は今回の福井県でのフィールドワークを通して自然と人に囲まれた暖かい時間を過ごせました。まず都会とは違い自転車での移動も蒸し暑さがあまりなく風が気持ちよくて爽快でした。辺り一面に広がる田んぼを見ながらのサイクリングは暑さを忘れるくらいでした。滝を見に行く時には自転車をおして登りきり滝に到着した時には疲れもとれるくらい爽やかな空気でした。水も澄んでいて綺麗でした。
そして近大農園の稲はとても立派に育っていました。思っていたよりも広くて驚きました。様々な場所へ僕たちを案内するために車で送ってもらったり話をしたりして初対面にも関わらずみなさん優しい人でした。農業の話はもちろん、絵や陶芸など幅広く話を聞くことができて以前よりさらに関心が深まりました。数日間、たくさんの人のフォローがあり貴重な話も聞くことができました。改めて自然の恩恵を感じ取ることができて今後の参考にもなりそうなインターンシップだったと思います。
社会マスメディア系専攻2年 山内 和磨
やまぼうしでは大阪ではあまり体験出来ないような自然にたくさん触れることが出来て、とても感動的でした。やまぼうしに着いて、自転車を渡された時は、「えっ、これ?」と思いましたし、とても暑かったですが、今思い返せば、自転車だったからこそより多くの自然と触れ合うことが出来たのではないか他にもさまざまな形で自然と触れ合えて、とても楽しかったです。
中でも、牛との触れ合いは滅多に経験できることではないので、とても印象的でした。実物の牛は私の想像していたものよりも大きくて驚きましたが、人懐っこくてとてもかわいかったです。大火勢花火大会もとても印象深かったです。あんなに近くで、あんなにたくさんの花火を見たことはなかったですし、地元の同世代の方々とも親交を深めることが出来てよかったです。
やまぼうしでは本当に貴重な体験が出来ました。私は生れてからずっと大阪に住んでいます。確かに、交通面や物を買うことなどはとても便利かもしれませんが、やまぼうしのような自然に囲まれた環境はほとんどありません。大学に入り、福井県、広島県から大阪に引っ越してきた友人と心斎橋のアメリカ村に行った時、友人は「なんか臭くない?」と言ったのですが、私にとっては普通なのでとても驚きましたが、やまぼうしに行った時、その言葉の意味がわかりました。やまぼうしはとても素晴らしい場所でした。また行きたいと思います。
社会マスメディア系専攻3年 寺西 香須未
私は大阪生まれ大阪育ちなので、幼い頃から身近に自然を感じることなく過ごしてきました。いつも遊ぶのはアスファルトの上が普通でしたが、このフィールドワークで大飯町に行ってもし私が小学生の時こんな環境の中で遊べていたらもっと楽しかっただろうなぁと思いました。
大飯町は自然がいっぱいで大阪では感じることのできないマイナスイオンをたくさん感じることが出来ました。自転車を暑い中みんなで漕いでいると小学生の夏休みを体験しているような懐かしい気持ちに胸がウキウキしました。また大火勢祭りでは今までで見た中で一番すごい花火を見ることが出来てすごく感動しました。
最後の夜は松井さんの家族の方やたくさんの方とお話ししながらバーベキューや花火をして日頃聞けないお話をしたりこのフィールドワークに参加して仲良くなった友達とたくさん話せてすごく楽しかったです。松井さん、私たちを暖かく迎えてくださって本当にありがとうございました。松井さんの家族は皆さんすごく素敵で心がすごくホカホカしました。
社会マスメディア系専攻2年 山田萌
おおい町に着いてからの主な移動手段は自転車で、暑くて大変だろうなと思っていました。しかし実際は、自然の豊かな風景をじっくり眺めながら移動できて気持ちよかったです。都会だとビルなどの建物が立ち並び遠くの景色まで見ることは難しいですが、おおい町では広々とした田畑やその向こうにある山々を見ることができ、とても開放的でした。
農家を営むいろいろな方からお話をうかがっていると、農業という職業が身近に感じられました。今まで、農業は親から受け継いでいくものだと思っていましたが、お話を聞かせてくださった方の中には、親は農業をやってないという方もいました。また、「自分に合った会社なんてほとんどなく、就職するのなら自分が会社に合わせなければならないが、農業は自分のペースでできる」とおっしゃっている方もいました。もちろん農業にも、大変なことやつらいことがあると思いますが、今回のフィールドワークで今まで知らなかった農業の魅力を感じることができました。

夏が似合う女性(ひと)

灼熱の太陽がジリジリ肌を焦がす季節を少し過ぎ、夏の名残りを感じるこの季節になると、森瑤子さんを思い出します。
彼女は私が知っている女性のなかで、誰よりも夏が似合う女性でした。
貴女とお別れしてからこの夏で20年が経つということが信じられません。
それは、お知り合いになってまだ間もない頃に、与論島の彼女の別荘にお邪魔したときの印象があまりにも強烈だったせいかもしれません。
「浜さん、ヨロンに遊びに来ない?裸で泳がせてあげる。」
仕事を通じての出会いだったこともあり、まだお友達と呼べるほどの親しい会話もかわしていない搖子さんから突然そんなお誘いを受けて、私は心底びっくりし、長いあいだ憧れ続けていた上級生から声をかけられた女学生のように、半ば緊張しながらも素直にうなずいていたのでした。
白い珊瑚礁に囲まれて熱帯魚の形をした、あまりにもエキゾチックな匂いのする与論島。サトウキビ畑の真ん中にある空港に降り立つと、真っ白なつば広の帽子を小粋にかぶり、目のさめるような原色のサマードレスを着た搖子さんが待っていてくれました。
「この島は川がないでしょう。だから海が汚れず、きれいなままなの。娘たちにこの海を見せてやりたくて・・・」
私は搖子さんの言葉を聞きながら、母親の思いというものは誰でもいつも同じなんだなと感じ、急に彼女がそれまでよりもとても身近な存在に思えたのでした。
長いあいだの専業主婦の時を経て、突然作家となり、一躍有名人になられて、そして仕事がとても忙しかったことで、搖子さんは絶えずご主人や娘さんたちに対して後ろめたさのようなものを抱え続けていらっしゃるように私には思えました。
妻として母親としての役目を完璧にこなしていた搖子さん・・・そんな女性に会ったことがありません。
そう、都会の男と女の愛と別れを乾いた視点で書き続けた森搖子という作家は、個人に戻ればどこまでも子どもたちのことを思う「母性のひと」であったのです。
十代の頃から社会に出て働き続けてきたせいか、他人に甘えることのとても下手な私。心にどんなに辛いことがあったとしても、涙を流すのはひとりになってから。他人さまの前ではいつも背筋をシャンと伸ばして、爽やかな笑顔でいることが仕事を持つ女の美徳と信じ込み、ずっと長いこと、肩肘張って生きてきたような気がします。
あの頃の私は妻としても母親としても、そして仕事の上でも実にさまざまな悩みごとを抱えていて、激しい精神のスランプ状態に陥っていたのですが、そのことを誰にも言えずしひとり苦しんでいた時期でした。
真夜中、月が煌々とあたりを照らす海で泳ぎましたね・・・裸で。
静かに水をかき分け、ときおり肩や背中が月明かりを受けて輝いて見えたのが、私の目の中に残っています。
あの夜、まさに私の内のすべてを見抜いてくださっていた搖子さん。
甘えることのできるひとをみつけた嬉しさでいっぱいの私でしたのに、搖子さんはそれからあまり間を置かず、永遠に私の前から姿を消されてしまったのです。
与論の島に眠る搖子さん、お逢いしたいです
でも、瑤子さん、安心してくださいね。私、あと少しで60代を過ぎる今、ようやく自分の泣き顔を他人(ひとさま)に見せることができるようになりました。
そうしてもいいのよ、教えてくださったのは搖子さん、あなたです。
今までよりも、生きていくことがずっと楽になりました。

スパイシー丸山さん

残暑お見舞い申し上げます。
暦の上では立秋だというのが信じられないほど都心では猛暑日が続いておりますが、皆さまいかがおすごしでしょうか。
夏バテはなさっていませんか。
食欲はございますか。
そんな暑い日、元気になれる方をラジオのゲストにお招きいたしました。
文化放送「浜 美枝のいつかあなたと(日曜10時半~11時)
今回のゲストはカレー研究家のスパイシー丸山さんです。
丸山さんは1974年生まれ。北海道のご出身です。
普段は、本名の丸山周さんとしてラジオやテレビ番組、イベントのパーソナリティーとしてご活躍されていますが、趣味のカレー好きが高じて、カレー研究家としての活動もなさっています。

スタジオにはターメリック・クミン・コリアンダー・赤とうがらしなど等、たくさんの香辛料をお持ちくださいました。
このラジオは毎回収録なのですが、1回目の方は11時から。
その香辛料の香りで私のお腹はグーグーと・・・・。
やはりカレーは夏バテ予防にはぴったり!
ターパンをまいたスパイシーさんはカレーの歴史にも詳しく、知らないことばかり。これまで1000軒以上のカレーを召し上がっておられるとか。
一般的に日本のカレーと云われているのは北インドのカレーで、小麦粉で作られたナン(主食)に合うカレーだそうです。一方、南インドの主食は米でスープのようなカレーだとか。
私は10代から10年間くらいインド通いをいたしましたが、ほとんどが北インドでした。毎日3食カレーでもまったく飽きませんでした。インドの人参ってとても美味しいのです。マーケットに行き、人参を買い、生のままかじっていました。野菜カレーがほとんどでしたが、チキンカレーも大好きです。
先日、我が家のランチは「タイ風チキンカレー」。
鶏もも肉をターメリックやカルダモンパウダーで下味をつけ、夏野菜(なす・トマト・オクラ・パブリカなど)を入れてココナッツミルクをたっぷり入れてコクのあるカレーでした。
食欲のないときにカレーはいいですよね。
スパイシー丸山さんのスパイシーな日々のお話をラジオでお聴きください。
(8月12日放送)
猛暑日がまだ続きます。
皆さま、御自愛くださいませ。

『箱根やまぼうし』からのお知らせ

12軒の古民家を譲り受け、1本の木も無駄にしないようにと造りあげた箱根の家。
この家に住み始めてから40年の年月が流れました。
梁に上って遊んだり、庭で野遊びをしたりして過ごした子供たち。
それぞれが社会に巣立っていきました。
“大人の空間”になった我が家が静けさをとり戻し新たな表情を見せてくれています。展覧会・コンサート・ワークショップや落語会など・・・暮らしを豊かにするスペースとして「箱根やまぼうし」が誕生して3年目。おかげさまで「人々が集えるサロン」として皆さまとの交流も私にとって大きな喜びです。

この度、小さなアンティークショップをリニューアルし『FLORAL』が誕生しました。娘がイギリスに行き生活の中で使ってほしい・・・と思うものをひとつひとつセレクトしてきました。
不思議と我が家の日本的な暮らしとイギリスの暮らしはとてもマッチします。
「使ってこその”用の美”です」
ぜひ一度お遊びにお越しくださいませ。
毎週:土・日・月の3日間、11:00~17:00の営業です。
FLORAL Antiques and Contemporary crafts

そして、義理の娘・繭子さんが『毎日の暮らしをより心地良いものに』をコンセプトに、私たちが日頃使うモノは環境に優しくあってほしい・・・との思いから、湘南の海から近いところにオフィイスをかまえ独立し、素敵な商品・そして暮らし方を提案してくれます。
ショップ名でもある「森から海へ」は、その名の通り、私たち一人ひとりが生活の中で考えていく大切なテーマのような気が致します。
森から海へ~ココチよい暮らしの中のモノとコト
私も「農・食・美しい暮らし」をテーマに活動をしております。
「やまぼうし」に新たなプロジェクトが加わりました。
HPへアクセスしぜひご覧くださいませ。