土門拳記念館

土門拳記念館の開館30周年記念企画講演会に招かれ山形県酒田市に行ってまいりました。酒田市内から鳥海山を見ながら最上川を渡り、飯森山公園の中を抜けて行くと記念館があります。
131011domon1.jpg
酒田で土門拳先生のお話をさせていただけるなんて・・・夢のようです。
    『人の歴史は出逢いの歴史』
誰の人生も、振り返ってみると、いつも偶然のようにして出逢った人に導かれて「忘れられない出逢い」の積み重ねで、その歴史を形作っていくものだと思います。
もし、あの人と出逢わなかったら、今日の私はなかったかもしれない・・・と感ずる人との出逢いの思い出を、誰もが必ず持っているのではないでしょうか。
写真家・土門拳さんとの出逢いは、私にとってまさにその後の人生を決定づけるそんな出逢いでした。
16歳になって間もないときのことでした。
立ち寄った本屋さんでふと手にとった一冊の写真集。「筑豊の子どもたち」と題されたその本が、なぜか私の心を惹きつけました。
昭和三十年代のまだ日本全体がとても貧しい時代でした。
ザラ紙に刷られたモノクロ写真の一枚一枚から、生き生きと表情豊かに何かを語りかけてくる炭鉱の子どもたち・・・。
写真集の表紙は、小学四年生のるみえちゃん。
電灯代わりのろうそくに、マッチで火をつけるるみえちゃんと、それを見守る三つちがいの妹・・・。姉妹のもの憂いた佇まいと無邪気さ、美しさと底知れぬ悲しみ、一枚一枚の写真が、悲しさと子供達の愛らしさを伝えていました。
私はまだ幼く、これらをなんと評していいものか、言葉をみつけることさえできませんでしたが、厳しい現実にさらされて、それをたたじっと見つめ、向かい合う子供たちの姿に、戦後の日本が抱えて、そして忘れさろうとしたもののなにかを、私は感じていたのかもしれません。
それらの写真はその時の私の日常からは遠い別世界のようであり、またとても身近なもののようであり・・・・多感な少女の心に強烈な印象を残したことだけは確かだったように思います。
そして私はそのときはじめて、社会派カメラマンという職業に興味を抱き、また「土門拳」という偉大な写真家の名を、はじめて知ったのでした。
“お逢いしたい”・・・と思いました。
それから間もなく運命の時はあまりにもさり気なく、予期せぬ早さでやって来ました。「婦人公論の表紙撮影で京都に行くよ」。と東宝の人に言われ、そこにカメラマンとして、思いがけない「土門拳」という名が記されていたのです。
あんな写真集を出された方に、この私が撮って貰えるなんて・・・と、女優という仕事に就くことになった幸運を、有難いと思いました。あの頃は、たった一枚しか使わない表紙の写真を撮るのに三日間という予定を組んだ優雅な時代です。
初日は素晴らしい天候でした。
「あ~今日で先生とはお別れだわ」とがっかりしたのですが、イメージする陽の光ではなく中止になりました。
先日の講演のあと、第2部でお弟子さんでいらした藤森武さん、堤勝雄さんから伺うと撮影の場所が苔寺でしたから、晴れていると陽の光が違うとのこと。妥協を許さない先生の仕事ぶりを身近で感じることができました。
「ついて来るかい?」と、京都の町を散歩に出掛けられる気楽さで誘ってくださいました。
連れていってくださったのは四条通の「近藤」という骨董のお店でした。
あの日以来、通い続けた私にとってかけがえのないお店。
『ものには本物とそうでないものと、二つしかない。本物に出会いなさい』と先生のお言葉。
骨董と私の最初の出会いは京都でした。
土門拳記念館では『古寺巡礼』、とっておきセレクションが2013年9月11日~12月15日まで開催されています。
131011domon2.jpg
そして出会いの結実「女優と文化財」、婦人公論の表紙になった女優たちの写真展も同時開催されています。
131011domon3.jpg
私は信楽の大壷と一緒に、苔寺の庭で・・・と、やく50年前の自分と出逢いました。
「室生寺に始まり室生寺に終わる」
といわれます。
病に倒れられ車椅子での撮影、「室生寺雪の鎧坂金堂見上げ」も大好きな写真。古寺巡礼の写真の一枚一枚に本物の日本人を撮ろうとする土門先生の気魄がせまってきます。風景には穏やかなお姿が重なります。
131011domon4.jpg
写真を追って室生寺、京都のお寺・・・と私の旅はつづきます。
四季おりおりの「土門拳記念館」には何度かうかがいました。建築としての記念館も素晴らしいのです。鳥海山を池の水面に映し、土門先生と交友のあった方々。イサム・ノグチの彫刻、勅使河原宏氏の庭園、父上の蒼風氏のオブジェ。飯森山公園の美しい風景。
もっともっとこの空間にいたい・・・そんな思いで帰路につきました。
131011domon5.jpg

「土門拳記念館」への2件のフィードバック

  1. 先週の日曜日念願がかなってやまぼうしに伺いました。
    生憎の大雨でしたが、ニットもギャラリーも素敵で、しばし現実を離れて楽しいひと時をすごしました。
    帰ってきてブログを読んでいたら、土門拳美術館のお話がでていました。
    八月に行ってきたばかりで、浜さんの講演の案内が掲示してあった事を思い出しまいした。
    建物も写真もとても良かったですね。
    もう一つのご縁は鎌倉のFLORALさんが入居している建物を建てたこととオーナーさんがうちでコーディネーターをしていることです。
    いろんなご縁が重なって勝手にとても嬉しがっている次第です。
    ご活躍お祈りしています。

  2. 木村章子さま
     ブログへのコメント、ありがとうございました。
    日曜日、雨の中やまぼうしへお越しくださり嬉しかったです。
    石井麻子さんのニット展、素敵でしたね。今週の日曜日迄
    ですが、毎日素敵な天使たちに出逢っております。
    土門拳記念館といい、鎌倉のFLORALといい、ご縁って不思議
    とつながっているのですね。
    鎌倉のショップは小さいですが、素敵なです。
    ぜひお出かけください。
    初秋から秋へと深まってまいりました。
    御自愛くださいませ。
    浜 美枝

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です