『ザ・ニュースペーパー』

たくさんの中高年の男女が、笑いを求めて週末の東京・大手町に集まってきました。皆さんの顔は、「さあ、おもいっきり笑うぞ!」という決意?に満ち溢れていました。

それもそのはず、いつまでたっても先の見えないコロナの行方や、ウクライナ情勢の泥沼化。それに、止まらない物価高や政治と宗教の絡みまで加われば、世の中は明るくなるはずもありません。そんな空気をぶち壊そうと、マジメでトボケて、冴えた男たちが今年もやってきました。

「ザ・ニュースペーパー」、62才から35才までのメンバー9人からなるグループは、政治・経済・社会、そして国際問題も視野に入れてエライ人たちをバッサ・バッサと切りまくるのです。忖度とは全く無縁の舞台空間が、そこにはありました。つまり彼らは市民の感覚に味方する、社会風刺コント集団なのですね。

舞台に登場する人物は、岸田首相・菅前首相・安倍元首相・麻生元首相。そして、公明党の山口代表や共産党の志位委員長らも加わり、アメリカのバイデン大統領やトランプ前大統領、さらにロシアのプーチン大統領まで顔を出すという”豪華絢爛”たるものでした。

9人の役者がそれぞれを演じる内外の政治家の姿、それは声帯模写ではなく、絶妙な形態模写であり、選び抜かれたセリフなのです。その快刀乱麻ぶりに600人近い観客は、溜飲を下げ続けるのですね。

こうした”スッキリ感”はテレビでは決して見られず、新聞の紙面でも読むことは難しく、この舞台の独占物なのかもしれません。劇団「ザ・ニュースペーパー」は、今から33年前に産声を上げました。その後、各地で活動を続けながら、2013年に大手町での定期公演がスタートしました。今回の公演は10回連続公演となったのです。

ニュースの切り口と役者の表現力だけで勝負する舞台劇、それは登場人物をただ切り捨てて終わり、ではありません。今回の公演の最後には、安倍元首相への追悼の言葉が静かに映し出されました。

そして、この劇団を30年以上にわたって引っ張ってきたリーダーの渡部又兵衛さん(72歳)が9月7日、長い闘病生活を経て逝去されました。今回の公演のわずか10日前のことでした。

そのことを当然知っていた会場の観客は、最後の舞台挨拶でメンバーはどのようなコメントを口にするのか?と小声で囁き合っていました。しかし、団員の皆さんはリーダーの死に一言も触れることなく、ライトが絞られました。

冷たいのでは決してない、「リーダーの遺志を継ぎ、前を向いて歩いて行こう!」という意思を固めた、文字通りプロとしての振る舞いに徹したのでしょう。来年の大手町公演は10月末ということです。

11回目となる「ザ・ニュースペーパー~演じる新聞、観る新聞~」  
来年も参ります。

公式ホームページ
http://www.t-np.jp/

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