映画「ミナリ」

あのブラッド・ピットが製作総指揮を担当した映画を見ました。
夫婦の絆、家族の愛を静かに歌い上げた作品でした。

「ミナリ」という題名のこの映画は、夫婦と子供二人が韓国からアメリカに渡り、農業で一旗揚げることを夢見る、1980年代の物語です。向った先はアーカンソー州。テキサス州の隣にありコメや大豆、鶏の生産などが主な産業の農業州です。西部開拓史というよりも、南部開拓史的な ”道行”ですね。

しかし、大型トレーラーハウスでの生活に、「こんなはずではなかった」と反発する妻。更に、夫婦にはヒヨコの鑑別という単調な日々の作業も待っていました。そして、息子は心臓に病を抱えていますが、近くに病院はありません。新しい生活のスタートは、たび重なる夫婦喧嘩から始まりました。

もめ事なく生活を送るのに、何かいい知恵はないかとひねり出したのが、妻の母親を韓国から呼び寄せることでした。しかし、来てくれたのは料理ができず、花札が得意という型破りのお婆ちゃんでした。さて、この一家は新天地でどのような毎日を送ることになるのか。

2時間近くに及ぶこの作品は、時間を全く感じさせませんでした。特に光っていたのが、祖母役のユン・ヨジョンと少年役のアラン・キムでした。最初は何かにつけギクシャクした2人でしたが、少しづつ心を開き、触れ合っていく過程がじっくりと丁寧に描かれていました。

とりわけ2人が森の中を歩くシーンは、映像としてもメッセージとしても、ひとつのヤマ場でした。ベテランと新人の絶妙なコンビネーションは、まさに演技を超えての自然体でした。それは、農業を足場にして、アメリカ南部の大地で根を張って生きていこうとする移民一家の決意なのかもしれません。

「ミナリ」とは韓国語で食べ物の芹(セリ)のことです。韓国の友人によれば、子供世代のために親が懸命に働くことも意味しており、年2回の収穫がある芹は、2度目が美味しいとされているそうです。

芹は国境を越え、世代を繋ぎ、力強く大地に根を生やし続ける、逞しくも優しいものの象徴なのですね。

人々の普遍的な生き方や相互理解の大切さを描いているこの作品は、アメリカ映画でもなければ、韓国映画でもありませんでしたね。ピットさん、素晴らしい国際映画を作ってくださいました。ありがとうございました。

コロナ禍でまだまだ元には戻れない映画館。係りの皆さん方は換気、清掃はもちろん、実に細やかな気配りで感染予防に努力されていました。感染の防止に向け、「重要措置」から「緊急事態」へと、各地の慌しい動きはまだまだ続きそうです。でも私は、静かに映画の応援を続けるつもりです。

映画公式サイト
https://gaga.ne.jp/minari/

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