裏の裏?
どうゆうことかしら?そんな思いでサントリー美術館に行ってまいりました。肩のこらない解説にまず魅せられます。
”ごあいさつ”には「日本人にとって「美」は、生活を彩るものです。室内装飾をはじめ、身のまわりのあらゆる調度品を、美意識の表現の場としてきました。そのような「生活の中の美」を、ひとりでも多くの方に愉しんでいただきたい」とあります。
私が民芸や骨董に出逢ったのは10代のころでした。私は骨董だからいいとか、民芸だから好きとか、思い込んでいるわけではありません。ただ、私が「いいなぁ~」とため息をついたり、ちょっと無理してでもほしいと思うのが、骨董だったり民芸だったりすることが多いのです。
ものが長い年月を、生れたときの形を保ちながら生き続けているということは小さな奇跡だとおもいます。10代の頃読んだ「民芸とは何か」で柳宗悦先生は書かれております。
「真に美しいものを選ぼうとするなら、むしろあらゆる立場を超えねばなりません。そうしてものそのものを直接に見ねばなりません」と。
今回の展覧会の会場はすべて撮影可です。皆さんにご覧いただきたく何枚も写真を撮ってまいりました。
展覧会は6つの章からできています。分かりやすい解説、見やすい構成、いわゆる”美術品”鑑賞ではありません。
第1章 「空間つくる」
江戸時代の絵師・円山応挙が描いた「青楓漠布図」がまず目に飛び込んできます。絵を鑑賞し語るよりも、その空間を想像します。「どこに飾ったらすてきかしら」。襖や屏風も昔の人々はその風景を空間の中に置くことで春夏秋冬を日常で感じてきたのでしょうね。絵巻を観て季節の移ろいを感じ、ひとつの場所で季節を愛でて・・・贅沢ですね。私が好きだったのは「武蔵野図屏風」薄の生い茂る武蔵野を描いた屏風。この季節に東京の真ん中で観る薄。遠くに富士山も見えます。
第2章 「小をめでる」
平安時代の作家・清少納言が著した「枕草子」には、「なにもなにも、ちひさきものはみなうつくしき」という一説があります。と書かれています。つまりミニチュアです。指先でつまめるものばかり、乙女心をくすぐられます。
第3章 「心でえがく」
ウマイ・ヘタではないのですね。なぜか観ているうちにジワジワと心奪われていく作品にも出逢えます。
第4章 「景色をさがす」
私がもっとも見たかったコーナーです。壷や花入れなど焼き物には”裏の裏”がありどこからどのように見て、どのように景色をさがすか・・・私が京都の古美術店「近藤」で小さな手の平に納まるくらいの室町時代の古信楽の種壷に出会い「私にこの壷を分けてください」いまから思うと赤面のいたりなのですが、そこに「ある景色」をみてしまったのです。高温の炎で長時間焼成しますから、そこにはさまざまな”景色”が見えてくるのです。焼き物の面白さです。今でも私の大切な壷、10代で出会った私の景色です。
第5章 「和歌でわかる」
「生き物はみんなみんな歌を詠む」とは「古今和歌集」の序文の言葉です。かつての日本人は、動物でさえ和歌を詠むと考え、ラップのように和歌でバトルを繰り広げるなど、生活のいたるところに和歌があふれていました」と書かれています。文字と絵、工芸。和歌がわかればもっと愉しめるのに・・・
第6章 「風景にはいる」
江戸の浮世絵師・歌川広重は風景画の名手として知られていますが代表作「東海道五十三次」では小田原・箱根・沼津・江尻なども描き、まるで作中の「点」のような小さな人物と一緒に旅をしている気分になれますし、風景の雄大さを体感できました。
東京・六本木のサントリー美術館で11月29日まで。
https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2020_2/index.html