映画「さよならテレビ」

私はやはり、映画を見るのが好きです。年に20回くらいは映画館に行くでしょうか。伝説のロックバンド、クイーンを描いた「ボヘミアン・ラプソディー」から、柄本明さん主演の「ある船頭の話」まで、ジャンルはかなり幅が広いですね。

そんな私が新年最初に見た映画は「さよならテレビ」でした。これまで生番組やドラマなど、テレビにはいくつもの場面でお世話になってきましたが、私の場合は「出演者」という立場でした。

「さよならテレビ」はニュース番組が企画され、制作され、そして放送されるまでの一連の「現場」を、テレビ局員自らがカメラを回し、作品にしたドキュメンタリー映画です。

これまで、テレビに「出演」しながらも、なかなか見つめることが難しかった「現場の真実」を、改めて知りたいと思ったのが映画館に向った理由でした。

映画は冒頭から緊張感に包まれます。報道局の大部屋での場面です。皆が本音をぶつけ合う企画会議や反省会。中身は当然、辛辣なものにならざるを得ません。机の端にマイクを設置して、少しでも明瞭な声を拾おうとする撮影スタッフ。

「いくら仲間でも、いや仲間だからこそ、遠慮してもらいたい」と願う報道局のスタッフ。「ニュースの”現場”に、土足で踏み込まないでくれ」そんな空気も漂います。気まずい雰囲気の中、それでも撮影は続行されます。

なぜ、そんなことをするのか?

そこにはこの映画のプロデューサーや監督が抱えている、テレビの現在と未来に対する、大きな不安があります。かつてお茶の間の人気者として一世を風靡したテレビが、今やその勢いはない。テレビを見ないどころか、テレビを持たない若者が急激に増えてきている。その大きな原因の一つは、ネットの圧倒的な影響力です。

そんな中で「いま本気で番組を作らないと、テレビは見捨てられてしまう!」

このスクリーンには、製作者のそんな危機感が正直過ぎるほどストレートに描き出されています。

視聴者に伝えなければならないこと。
スポンサーと向き合うこと。
視聴率は避けて通れないこと。
理由なく人を傷つけてはいけないこと。

両立しにくい、あるいは矛盾する要素を同時に抱えての苦悩が、内幕として全編に流れます。この映画を製作したのは、名古屋の「東海テレビ放送」でした。製作者の皆さんはテレビの関係者、そして多くの視聴者にも「元気を出して、もう一度頑張ろうよ!」という熱いメッセージを伝えたかったのだと思いました。

そうですよね。テレビは決して「古くなった、時代遅れのメディア」ではないですよね。テレビにも、ラジオにも、そして新聞にも、もう一度エールを送りたくなるような、そんな映画でした。

映画公式サイト:https://sayonara-tv.jp/

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