映画『COLDWAR あの歌、2つの心』

1940年代末のポーランドから始まるラブストーリーの男と女は、東西冷戦下で15年にわたり、国境を越えて愛し合い、衝突し、別れ、また求めあい、ワルシャワから東ベルリンへ、そしてパリからユーゴスラヴィアへ。

再びパリからからポーランドへと舞台は移ります。3人の男女が冬のポーランドで村落を訪ね歩き、民族音楽を収集し「先祖伝来の音楽」と才能ある少年少女たちを探し求めて旅を続けます。

ピアニストであり楽団創設者のひとりでもあるヴィクトルは、ある村で魅力的な少女ズーラを見出し、心奪われ恋に落ちます。

結成された舞踏団も世界大戦後の冷戦構造に飲み込まれ社会主義政権やスターリン主義を支える音楽や舞踏へといやおうなく変化していきます。

社会主義政権の圧力で好きな音楽が出来ないことに絶望した彼はズーラを誘って亡命を決意しますが、東ベルリンで西側に脱出しようとしますが、彼女は現れません。そして、パリへ。

パリでジャズを演奏するヴィクトルの前にズーラが現れます。「西」と「東」を行き来しながら続く愛。しかし・・・そんな単純なストーリーではない心理描写をポーランド生まれのパヴェウ・パヴリコフスキ監督は感情ほとばしる白黒画面と音楽、魂の歌で静かに、鮮烈に観客に投げかけます。

『音楽が語る』とはこういうことなのですね。民族音楽、ジャズ、多彩な音楽が物語と共振し、なかでもポーランドの歌「2つの心」は一度聴いたら心から離れません。

単なるラブストーリーではなく男と女、どうすることもできない業や切なさ・・・15年の歳月の省略の美も包み込みます。スタンダード画面のモノクロ、こんな美しい画像の映画は久しぶりに観ました。

最後の10分で女の「ここから連れだして」というセリフに思いのすべてが凝縮されていて感動しました。ラストシーンはあえて書きませんね。

この美しさをどのように表現していいかは私には分かりません。観終わりしばらくは映像と音楽が頭から、耳から離れませんでした。そんな余韻を監督は観客にプレゼントしてくれたのですね、きっと。

エンディングロールに「両親に捧ぐ」とありました。調べてみたら主人公のズーラとヴィクトルという二人の人物は部分的に監督の両親を基にしているとのこと。

1時間28分。私はヒューマントラスト有楽町で観ました。本年度のアカデミー賞外国部門に監督賞・撮影賞にノミネートされている映画です。

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