映画『記者たち~衝撃と畏怖の真実~』

2001年9月11日のアメリカから送られてきたあの映像に衝撃をうけ、同時テロの後、「イラクが大量破壊兵器を保有している」ことを発表しイラク戦争へと突入する報道を私は当時何も疑わずに画像を見たり、新聞を読んでいました。

当時のブッシュ政権は、テロ組織アル・カーイダの本拠地があるアフガニスタンだけではなくイラクも攻撃し、多くの一般人も巻き添えにしての進攻でした。「大量破壊兵器」は本当にあったのか・・・。

あれから時を経て、今回の映画「記者たち~衝撃と畏怖の真実~」を観ました。ロブ・ライナー監督作品。「スタンド・バイ・ミー」「恋人たちの予感」など娯楽作品の数々を世に送り続けヒットさせてきた監督が、執念で映画化したといわれるこの実話を基に映画化された作品に、正直に言って私はとても大きな衝撃をうけました。

満員の劇場内。第一印象は「よくこのような映画をつくることができたこと」への驚きと米国の民主主義の底力、”真実を伝える覚悟”にまず驚きと畏敬の念をいだきました。

あの戦争は”嘘”だったこと。大手メディアは軒並みこの権力の暴走を止めることなく報道を進めていましたし、私は日本の報道でそうだと思い込んでいましたが、政府のウソを鵜呑みにするなか、中堅新聞社ナイト・リッダーのワシントン支局は、そのニセ情報に疑問を抱き、4人の記者が当時のニュース映像などを交え、米政府が情報を捏造していたこと、大手新聞社が政府の方針を追認していた実態を明らかにしていきます。

封切に来日した監督はインタビューで「政府を批判する内容だけに制作は難航した。撮影数日前に、一部の出資者から降りると言われ、自腹を切って制作した。それでもこの映画を作る価値はあると思った」と語っています。

撮影にあたり出演予定だったワシントン支局長役の俳優が急遽降板したので「どうしようかと思っていたら、妻が『あなたがやればスケジュールもあいているでしょ』のひと言ででやったんだ(笑)とのことですが、俳優でもある監督がいい味だしているのです。

現場には実際モデルになった記者達がほとんど付き合ってくれアドバイスをくれたそうです。骨太の映画ですが、記者同士のかけあいなど楽しくみられます。英語のニュアンスの分からない私は笑うことができないところで、劇場内での笑い。さすが、ロブ・ライナー監督です。

監督はインタビューで『世界は今、大きな岐路に立っている。例えば気候変動、例えば独裁主義の台頭。世界で起っていること、あるいは政治について感じることを表現していきたいと思っている。』

そして『観客に人生の1~2時間を削ってもらって、しかも暗い部屋で作品に関与してもらうわけだから、何か提供しなくてはいけないと思っている。どんな暗い作品でも、ユーモアとのミックスを大切にしているんだよ』との新聞記事を読みますますロブ・ライナー監督のファンになりました。

私たちは”ウソ”を見抜く目をたえず持ち続けなければいけませんよね。”鵜呑み”にしてはいけませんよね!だってそれらを許していたらその”ツケ”は未来の子ども達につながってしまうのですから。

後味のいい、そして深く考えさせられる映画でした。

映画公式サイト
http://reporters-movie.jp/

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