長野 上田・東御(とうみ)への旅

以前私が長野ひとり旅をブログへ掲載したのをご覧になった女友だちが『私も行ってみたい~!』ということで、3人旅をしてまいりました。

忙しい友人達は1泊2日の旅でしたが、私は前日に上田入りをして、上田の街を存分に散策いたしました。

なぜって・・・この街には何度も・何度も駅に降り立ちそのまま行く場所があるのです。でも30年ほど前は子育てや仕事で目的の場所を訪ねたらとんぼ帰りでした。

その場所は神川(かんがわ)小学校。校門を入り中庭に山本鼎の碑があります。1882年10月24日に愛知県岡崎町で生まれ、漢方医の父が神川村大屋(現上田市)に医院を開業、一家で移住します。

その前に西洋医学を学ぶために一家は浅草に住んでいました。9年間木版工房で修行し、版画職人を目指し自立する道を歩むのですが、恋にやぶれた鼎はパリへと旅立ちます。

貧困の生活の中での勉学。渡仏中、島崎藤村との親しい交友関係もでき滞在中に得たことは「リアリズム」と鼎は後に語っています。ロシア経由で帰国の途につく。モスクワに半年ほど滞在し、そこで目にした「農民が農閑期に作る工芸」に魅了され、帰国後”農民美術運動”を興します。

同時に私が感銘をうけたのは子供たちへの”自由画運動”でした。神川小学校で子供たちに自由に絵を描かせます。校庭の碑には友人の画家、中川一政の文字でこのようなことばが記されています。

自分が直接
感じたものが尊い
そこから種々の
仕事が生まれて
くるものでなければ
ならない               鼎

そうなのです。仕事をしていて迷ったり悩んだり・・・どのようにして前に進めばいいのか・・・そんな時に、このことばに出逢いたくて神川小学校に何度も通ったのです。

ですから上田の街はまったく知りませんでした。今回はたっぷり楽しみました。お薦めを何ヶ所かご案内しますね。

まずお昼は由緒ある古民家でのこだわりのお蕎麦。趣のある部屋でゆったりいただけるのが嬉しい『くろつぼ』さん。私は結局2日ともお昼はここでいただきました。

『BOOKS&KAFE NABO(ネイボ)』
NABOとはデンマーク語で「隣人」ということだそうです。約5000冊の本が美しく置かれ、本好きであろうスタッフが静かに迎えてくれる空間は旅の寄り道には最高。

珈琲の香りと古本の中から見つけた本『老いの語らい』。今は亡き私の尊敬する女優さん沢村貞子さん。幸田文さん、戸板康二さん、山田太一さんなどとの語らいと沢村さんのエッセー。

1996年夏、沢村貞子さんは八十七歳の生涯を閉じられました。”あとがき”には生前の望みどうり、二年まえに逝った最愛の夫・大橋恭彦氏とともに、夕日の映える墓地、相模灘で眠っておられます。と、あります。

沢村さんのエッセーはほとんど読んでいたつもりが、なぜか見落としておりました。と、いうよりこの年齢になったから出会えた本なのでしょう。いつか、沢村さんとの思い出は書かせていただきますね。ほんとうに・・・今出逢えてよかった本に上田で出逢いました。

旧北国街道沿いの柳町へと向かいます。

農民美術の家と称する「アライ工芸」には農民美術が静かに佇んでいます。映画のセットに紛れ込んだようですが、そこは人々の暮らしがしっかりあり匂ってきます。

パンの幸せな香りがしてきます。天然酵母自然派のパン屋さん『ルヴァン』。奥と2階にカフェがありひと休み。どの店からかジャズの響きがしっくり調和し、ワインを軽く飲める古民家でも農民美術のこっぱ人形が迎えてくれます。

駅前に戻り100年続く伝統の味 『飯島商店・上田本店』へ。大正モダニズムの建築は、落ち着きます。季節のジャム「ほおずきジャム」や「ブルーベリージャム」、そして上田銘菓「みすゞ飴」を。私大好きなのですこのゼリーのような飴、果実の甘味と酸味がほどよくやみつきになります。

街を散策して最後は『サントミューゼ 上田市立美術館』で11月11日まで「ウィリアム・モリス展」が開催されていましたので観ました。

19世紀を代表する芸術家・詩人・作家・思想家・社会運動家、どの分野でもリーダーでしたが、今回の展覧会はデザイナーとしてのモリスに焦点をあてている素晴らしい展覧会。美しいイギリスの風景もデザインされている一方でモリスの人間関係での悩みを乗り越えたデザインには興味がわきます。隣接して「山本鼎展」も観られ充実した一日でした。

翌日は友人を駅で迎え、上田城・資料館を見る人、街を散策する人。夕方には前回と同じ上田駅からしなの鉄道3つ目の田中まで行き、「農の家」のご主人の迎えをいただき、宿へ。

心おきなく宿でおんな3人くつろぎ、おしゃべりにワイン!「農の家」は自給がほとんど。耕起せずに作られた野菜や果物の美味しいこと。また帰って来たくなる宿です。

翌日は北国街道・海野宿へ。江戸時代に中山道と北陸道とを結ぶ街道。かつては宿場町から蚕種業で栄え、”うだつ”のある家々がおおいのはまさに”うだつがあがった”のでしょう。

旅の最後は楽しみにしていた玉村豊男 抄恵子ご夫妻のヴィラベストでのランチ。葡萄畑や美しい花々を眺めながらの食事は至福のときです。

健康で美味しくいただけて、素敵な友人との旅はこれからもつづけたいです。

帰りの新幹線では沢村貞子さんの『老いの語らいを』を読みながら 『あるがまま』に生ききった沢村さんにはとうてい近づけませんが、旅は続けていきたいです。

「長野 上田・東御(とうみ)への旅」への2件のフィードバック

  1. 浜美枝様
    もう何年も前、芦ノ湖の辺りに立つ移築した古民家レストランに何度かお邪魔致しました。
    調度品のセンスの良いこと、芸術を見る確かな目に驚いた事を思いだします。

    先日、電車の中でお見かけしてお変わりなく美しい立ち姿に、
    お声もかけられず、ただ眺めておりました。
    そんなおり、ブログを見つけて楽しみに読ませていただいています。

    私は信州上田の出身で、浜美枝さんも時々訪れてくださっている事を本当に嬉しく思います。
    私の母も87歳で元気にしていますし、弟は脱サラでこだわりのラーメン屋を営んでおります。やはり女友達3人乗せて上田の旅をしてきました。前山寺でくるみおはぎを食べたり、無言館やお寺を見てきました。

    農の家も必ず行きます。
    浜美枝さんとご縁を持てた事、本当に嬉しく思います。思わずメールさせていただきました。お元気でお過ごしくださいませ。
    ありがとうございます😊

    1. 半田聖子さま

      ブログへの投稿ありがとう存じます。
      そうですか、半田様は上田のご出身なのですね。
      ほんとに素晴らしいところですね。私はブログにも書きましたが、
      何度もお訪ねしている上田ですが
      ようやく自分自身の時間がもてるようになり、
      今回のおんな三人旅をいたしました。
      『農の家』お薦めです。
      そして、電車の中でお会いしているのですね。
      私は東京に出かけた時は、ほとんど電車、地下鉄を利用します。
      ”ぼっ~と”しておりませんでしたか”
      レストランの頃もお出かけくださりありがとうございます。

      今回のブログは「秋の箱根」です。
      ご覧くださいませ。
      朝晩冷え込んでまいりました。お風邪など召しませんよう
      ご自愛ください。

      浜 美枝

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