ポーラ美術館

箱根・仙石原の自然の中に佇む「ポーラ美術館」で現在素敵な企画展が開催されています。
『ルソー、フジタ、写真家アジェのパリ(境界線への視線)』です。

出典:ポーラ美術館公式サイト

20世紀初頭の都市の周縁には、移民や貧困者が住み付き首都が拡張されていったのだそうです。現在のパリを歩くと、都市の風景はその当時の面影を絵画や写真では見るこたができても産業革命以前の”古きパリ”を見つけることは中々できません。この展覧会では19世紀末から20世紀初頭にかけての「境界の時代」を観ることができます。パリは変革のときだったのですね。
パリに1913年到着した越境者レオナルド・フジタ(藤田嗣治1886-1968)もまた境界線に惹かれた一人です。展覧会ではフジタの「巴里城門」が展示されています。パリに着いて翌年に描かれた作品。城壁の外側からの寂しい情景は寂寥感がにじみます。フジタの越境者としての原風景なのでしょうか。
また、フジタの働く子ども達を描いた「小さな職人たち」の小作品も素晴らしいです。少年少女の頃から生活のために働き始め、仕事に打ち込む姿を優しいまなざしで描くフジタ。パリという都市の変革を支えてきた子ども達。「乳白色のフジタ」にはない初期の作品は心に響きます。
そして、今回の展覧会で一番興味をもったのは「写真家アジェ」でした。アジェは古い都市のみではなく、消えゆく運命にあるすべてに目をむけました。アジェの写真が、フジタをはじめルソーや多くの芸術家たち、アヴァンギャルドの一派にもいかに影響を与えたかがよく分かる展覧会です。パリの下町、マリー橋、サクレ・クール寺院、くず屋・・・などなど、現在は感じることのできないパリの郷愁を見せてくれます。
強羅からバスで、ひめしゃら林道、こもれび坂を抜けその先にあるポーラ美術館は光の降り注ぐ自然と共生している美術館です。アプローチブリッジを渡り、ガラス張りのエントランスホールを抜けると地下2階まで太陽の光が降り注ぐホール。この美術館は常設展も素晴らしいです。ルノアールやピカソ、クロード・モネなど印象派の絵画を堪能できます。
今回は午後からでしたので散策できませんでしたけれど”風の遊ぶ散歩道”が全長670メートル、ブナやヒメシャラ、ヤマボウの木々を小鳥達がさえずり、自然の中で心休まる散策ができます。


箱根に住み40年の私は、この晩秋から初冬にかけての季節がとても好きです。紅葉の美しい季節、のんびりと散策と美術館にいらっしゃいませんか?
小さな旅ができます。
2017年3月3日まで
開館時間 午前9時~午後5時(入館は4時半まで)
会期中無休
ポーラ美術館公式サイト