映画のハシゴ

ゴールデン・ウイーク、皆さまはどのようにお過ごしでしょうか。旅に出かけた方もいらっしゃるでしょう。私は先週、今週と映画のハシゴをしました。
「あなたを抱きしめる日まで」
「美しい絵の崩壊(試写)」
「8月の家族たち」
そして見落していた「大統領執事の涙」
ひょんなことで女優になってしまった私。そう、スカウトされたのです。私は中学を出てすぐ働いていました。一年間、バスの車掌になりました。必要に迫られて働きました。 生きることに一生懸命でした。生活がかかっていましたから。中卒でできる仕事というのは、あの時代でも非常にすくなかったのです。バスの車掌になり三年間勤め上げると、試験を受けて、ガイドになることができたのです。なによりもお給料がよかったのです。大卒の方が一万二千円の時代に、私は九千円いただいていました。
それまでに観た映画は「路傍の石」と「赤い靴」ぐらいでした。才能もなければ、基礎の勉強もしていなかった私は、一方でやめたほうがいいのではないかという思いも捨てきれずにあったのです。
そんな頃、仕事で画家の岩田専太郎先生に出会いました。
私はおもわず先生にこう申し上げたのです。
「私、女優をやめたいのです。才能もないし、ちっとも上手なわけもありません。女優を辞めても今なら違う職業につけそうな気がします」と。
すると先生は、「そうだね。君はへただねぇ」とおっしゃるじゃありませんか。先生は、こうもおっしゃいました。「浜君、人生というものは、生涯学ぶものだよ。何をやってもいい。仕事を替えてもいいよ。君は女優として、あまりうまくないから、大成しないかもしれない。でもね、365日、365人の人に出会いなさい。会うことで、キミは何かをみつけていくだろう。答えは自分で探すしかないのだから」・・・と。今、思うと、そのときの岩田先生の言葉が私を前へと進ませてくれたのだと思います。
映画もそうですね。
歳を重ねてから観るとより深く、より愛おしく、そして感動を与えてくれます。
10代から観続けてきた映画。映画のない人生って考えられません。
本と映画が私の青春でした。でも70歳になってから観てこそ胸にさらに響いたのでしょうか。
ストーリーはあえて載せませんが、ハシゴした映画を少しご紹介。
あなたを抱きしめる日まで
50年間隠し続けた秘密を告白し、奪い去られた息子を探す旅に出た主婦フィロミナ。主演はイギリスを代表する女優ジュディ・デンチ。旅を共にする皮肉屋で信仰心がない元エリート記者はスティーヴ・クーガン。監督はやはりイギリスを代表する・スティーヴン・フリアーズ。
美しい絵の崩壊
原作は歴代最高齢(88歳)でノーベル文学賞を受賞した英国の女性作家ドリス・レッシング。彼女が83歳の時の作品。これほどまでに瑞々しい感性にただただ感動しました。美しい絵はいかにして崩壊し、どんな結末を迎えるのか。親友同士の母親と、その若き息子たち。純粋ゆえに禁断の愛の行方は。(5月31日ロードショー)
8月の家族たち
主演はメリル・ストリープとジュリア・ロバーツ。この二人の名前を聞くだけで胸がドキドキします。彼女たちの芝居・演技はただ息を呑むばかり。豊かでリアルで確かな演技力には、最近観た映画の中でも圧巻。信じられない贅沢な2時間でした。家族とは何か?を考えさせられるテーマです。
大統領執事の涙
オバマ大統領が来日したその時間に観ていた映画です。人権問題をこのような角度から捉えた映画も少ないし、見終わった後に生きる強さ、忍耐、優しさ・・・さまざまなことを与えてくれました。
そう、5月10日ロードショーのアカデミー賞主演女優賞受賞のウディ・アレン監督最新作の『ブルージャスミン』も観たいです。
演ずるという女優を卒業し30年がたちますが、ますます映画が愛おしくなります。

「映画のハシゴ」への2件のフィードバック

  1. セレブな奥さんが無一文になって、
    妹(二人とも里子)のところに身を寄せるのですが、プライドは捨てられず、
    自分の不安定な精神を支えるために、お酒や薬に手を出してしまいます。
    どんどん過去のことが分かってくるのですが、
    なるほど。
    だんだん精神が”破たん”していくのも無理はないな、と、同じ女として同情心も。
    彼女は旦那さんを愛していたんだなって。
    してはいけないことをしてしまったという後悔もあったのですね。
    観終わってから、ジャスミンが哀れに思えて、哀しくなりました。
    精神を病んで、どんどん薬の量も増えていくパターン。(セリフにありました)
    精神を病むにはそれ相応の理由があったわけです。
    愛する息子にまで突き放され。
    セレブだった人が、生活を変えられないというのもなんだか、分かるような気がしました。
    でも、最後までプライドを持ち続けていた(捨てられなかった?)ジャスミンになんとか幸せになって欲しい。。
    ケイト・ブランシェットの表情から一時も目が離せませんでした。
    すばらしかったです。

  2. 岩田専太郎先生らしい温かく重みのあるお言葉ですね。
    365人との出会い・・・そのとおりですね。
    出逢いは素晴らしいものです。嬉しい時は365倍にもなるし悲しい時は351分の1で悲しみを分かち合うことが出来ます。
    人生の中で最後に残るのは人と人との出会いです。
    素敵なエピソードを有難う御座いました。

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