もずく-琉球新報「南風」

数日前、箱根の我が家にどっしりとした包みが届いた。開いてみると、中には塩をしたもずくが『うちの前の庭でとれたもずくです』との言葉と共にぎっしり入っていた。うちの前の庭? まるで庭のように身近に海と接する暮らしぶりも、その文面から香ってきて、二重に嬉しくなってしまった。
このもずくを送ってくださったのは、沖縄の南部農業改良普及センターで働く安次富和美さんである。安次富さんは農業普及指導員として、農村女性たちの特産品開発のサポートや地域の活性化の支援し続けてきた。私が主催している「食アメニティ・ネットワークの会」のグリーンツーリズム・ヨーロッパ研修旅行に、安次富さんが参加してくださり、それがご縁でおつきあいがはじまった。今、安次富さんは、粟国村の「あぐにようかん」などの支援を行うだけでなく、アットホームな沖縄の魅力を伝えたいと、グリーンツーリズムの実現のためにも少しずつ動き出している。
早速、彼女のもずくでスープを作っていただいた。磯のかおりと食感の愉しさ、豊かな味わい。翌日は三杯酢で、またその次の日にはもずくスープに。こうして久々に沖縄のもずくの美味しさを堪能させていただいた。
もずくを味わいながら、昨年の食アメにティ・コンテストで優良賞に輝いた小浜島の細崎さわやか生活改善グループもずく加工部の大城ユミさんたちの顔が浮かんできた。シママースと天然もずくにこだわり小袋入りにするなど工夫もして、もずくを島の特産品として育てた女性たちである。
安次富さんも大城さんたちも、自分たちの住む土地を愛し、自分たちのまわりにあるものの魅力を見出し、アクションを起こした女性たちだ。地元を愛する心と強い意思がなければ続けられないことだと感じる。私はこうした女性に出会うと、エールを送らずにはいられなくなる。
琉球新報「南風」2006年11月14日掲載