1年前、「浜さん、これまでの人生を振り返る本を書いてみませんか」とある編集者からご連絡をいただきました。
「孤独って素敵なこと」というタイトルがつけられた新聞の私のインタビュー記事を目にとめられたとのことでした。老いの辛さ、孤独に向かいあうことの苦しさが取り上げられることが多い現代にあって、孤独を楽しむような私の生き方考え方に興味をもってくださったのです。
老いの孤独というものは、年齢を重ねた人が必ず出会わざるを得ない根源的なものであると、私も感じます。若い時のように体がしゃきしゃき動かなかったり、何か記憶するために時間がかかるようになったり。人生の残り時間を意識させられることも少なくありません。環境も変化していきます。
わたしを導いてくださった人生の先輩や親しい友人を見送ることも少しずつ増えてきました。この年齢になると、孤独はもはや友人のようなもの。墨を流したような漆黒の箱根の夜、針を落とす音さえ聞こえてきそうな静寂の中で、囲炉裏の火を眺めていると、自分で自分を抱きしめたいような気持ちになることもあります。
孤独であるからこそ、自分と対峙する時間をもて、自らの考えを深め、ポジティブに生きることができると感じています。
本を書くにあたり、なぜ、私はこういう考え方をするようになったのだろうかと、自分の人生を振り返ることから始めました。
長屋暮らしの子供時代。中学を卒業してバス会社に入り、翌年女優デビューしたこと、芸能界に慣れることができず、息苦しさを感じていたこと・・・遠い記憶は時とともに淡く薄れてゆくものと思っていたのに、改めて過去に向き直ると、セピア色の写真にふわりと色がのるように、その時の空気の匂いまでが蘇り、当時私が抱いた感情がどっと胸にあふれてきたのに驚かされることもたびたびでした。ときには、ぐさりと心にナイフが突き刺さるような痛みを覚えることもありました。
自分の心を整理し、少しずつ文字に綴り・・・すると自分はどのように形作られてきたのかということがおぼろげながらわかってきたのです。
6月発売予定の「孤独って素敵なこと」、本の表紙は写真家の篠山紀信さんが撮影してくださいます。先日スタジオにお邪魔しご挨拶をしてまいりました。37、8年ぶりでしょうか、お会いしたのは。同時代を呼吸してきた篠山さんとはあっという間にお互いに距離が短まり、来月箱根での撮影が楽しみになりました。
昨日(17日)は「箱根やまぼうし」に20名ちかい同世代、少しお若い方、先輩がたが短い”旅”を楽しんでくださいました。部屋を掃除し、花を活け、お待ちする・・・こうした時間が私にとって至福のときです。
こうして箱根の家はいつも、私を包み、そっと支えてくれています。
浜様
桜の便りが聞かれるようになりました。春を待たれている方が多いのに、私はいつも冬が去って行くこの時期が何故か寂しく感じてしまいます。冬生まれのせいでしょうか。
「孤独って 素敵な事」の出版を心待ちしています。70代を過ぎ、今迄思いもしなかった事に直面したり、身体が前のように動かなくなったりと、負の面が出てきました。
でも、少し見方を変える事で、音楽、映画、本等に感動し、心和む時間がまだ沢山有ります。 友人との語らいが出来る事、趣味もまだ続ける事が出来るとか、確かにしっかり老いているのですから、苦笑している内は良いのですが、(自分に笑う事が多くなりました。)
浜さんの毎週のブログに元気を頂いています。箱根の四季折々を感じています。やまぼうしの催事も始まりますね。
月一回、我が家で友人達が集まり、キルトしながら、おしゃべりを楽しんでいます。小学校、中学、高校、お勤めの頃の友人が縁有って一緒にキルト出来る事は、何よりと思っています。 友人もとても、刺戟になり、気持ちが若返ると言っています。
いつまで、出来るか分かりませんが、今を大切にと思っています。
季節の変わり目ですので、どうぞご自愛下さいますように。
追申
「黄金のアレディ」「キャロル」観て来ました。キャロルの二人の愛に涙してしまいました。来月こちらで上映される「ニューヨーク眺めのいい部屋売ります」を心待ちしいる私です。
郁代
郁代さん
投稿ありがとうございます。
郁代さんは冬のお生まれなのですね。たしかに、きりりと冴え渡った冬には
この箱根でも空気が澄んでいて気持ちが引き締まり心地よいですね。
ようやく野山に立ち込める水蒸気や薄い煙のようなものが春の訪れを
感じます。 ”春霞”ですね。
昨日はバス停までの道端に土筆をみつけました。
子供が小さなときに学校の帰り道、帽子いっぱいに摘んできてくれたこと
甘辛く煮て食べたことが昨日のことのようです。
孤独って素敵なこと・・・孤独のありようも、年齢とともに変化しますね。
孤独の明るい面を、ゆったりと自覚できるようになりました。
お友達との時間、ご家族との時間、そして孤独だから自由でいられる・・・
家族や友人をより深く愛し、孤独の先にこそ幸せと豊かさがあると、感じる
年齢です。郁代さん、これからも豊かに日々を丁寧に生きてまいりたいですね。
お元気で。
追伸
キャロル素敵でしたね。
「ニューヨーク眺めのいい部屋売ります」
モーガン・フリーマン そして、ダイアン・キートンがとても素晴らしかったです。
お楽しみください。
浜 美枝
素敵な春のお便り、有難うございます。
私も、今日、自転車を走らせていると、道端に土筆をみつけ
勤務先の外出が儘ならないお年寄りの、喜ぶ顔を思い浮べながら摘んで来ました。
明日、出勤するのが楽しみです♬
浜さんより、少し年下ですが、同じころに生まれ育った者にとって
今の自分の思いを代弁して下さっているみたいで
何度も何度も読み返しました。
グッと来ます。
何年か前に、知り合って間もない人から
『あなたは丁寧に生きてますね』と云われたことを思い出しました。
その言葉を胸に、感性を豊かに丁寧に生きていたいと思います。
6月,楽しみです♬
圭子
圭子さま
お便りありがとうございました。
昨日はラジオ収録で東京に行っておりました。
「紅茶の手帳」と「江ノ電10kmの奇跡」の著者をお迎えし
素敵なお話を伺いました。今週、来週のブログに載せます
のでご覧くださいね。
本の”終わりに”を書き終え、あらためて「孤独は私にとって
本当に大切なもの」だと、感じました。のかけらさんは私よりお若いのに
「大切に、ていねいに」暮らしておられるのですね。
今まで両手に抱えていたものを、少しずつ手放し、緩やかに坂道を
おりていく・・・でもその道の先には新たな人生が待っていてくれる・・・、
楽しみです。
一日一日を大切にしてまいりましょう。
土筆、佃煮や茶碗蒸し、卵とじなども美味しいですね。お元気で!
浜美枝