甘酒茶屋

箱根の森の中に家を建てて、もう40年になろうとしています。
ここでの暮らしは日時計がなくて、年時計があって、春がくるたびにひとまわりするような大きな時計に支配されているような感覚があります。淡い春の訪れが、樹々の色味の変化でしらされます。若葉がチラッと目につく前に、全山ぼおっとうす赤くなるんです。
芽吹く前の一瞬のはじらいを見せるかのような、こんな季節のひとときが好きです。毎朝、台所から見える富士山も、その姿を刻一刻変化させます。この季節を迎えると身体が、足が自然に動きはじめます。
箱根の旧街道沿いにある、石畳の細道を登っていくと一軒の杉皮葺きの建物が見えてきます。『箱根甘酒茶屋』です。
160311amazake1.jpg
160311amazake2.jpg
店主である12代目の父達雄さんとともに息子さんの聡さん親子やご家族の方々が旅人を暖かく迎えてくださいます。400年という気の遠くなるような年月、店を守ることは並大抵のことではなかったでしょう。
「今から400年程前の江戸初期に箱根の関所を行き来する旅人のために、先祖が甘酒茶屋をはじめたと聞いています。当時は軒を連ねていたのでしょうが、今ではうちの店が箱根峠唯一の茶屋となりました」と聡さんは語られます。
160311amazake3.jpg
茶屋で供されるのは、麹の発酵によって生まれる自然の甘みだけで仕上げた伝統の甘酒と、臼と杵でつきあげた「黄な粉」と「いそべ」の力餅。そして、自家製の味噌おでんや、ところてんなど真っ正直なメニューに限られています。
店内には囲炉裏が切られており、そこでゆっくり足を延ばす、街道ウオッカーや箱根散策の観光客で早朝から賑わいます。
伺うとこの400年前の建物を維持しておられるのかと思ったら、つい7年前に建て替えられたとのこと。全てをその当時のように復元しているのです。私は「古民家再生」がどれほど大変なことかを知っておりますので息子さんの聡さんに「これは新築を建てるより大変でしたね」と申し上げました。土間をつき、囲炉裏を切り、古いタイルで流し台を作り、まるでずうっと前からの茶屋のようです。本当に貴重な文化遺産といってもいいかもしれません。心がぽっと温かくなる甘酒茶屋。
 
営業時間は日の出から入りまで。連日、朝3時から仕込みを開始し、冬でも7時には店を開けます。小田原から旧街道を登り、寄木細工で知られる畑宿の近くです。春の訪れを感じながらぜひ箱根お遊びにおいでになりませんか。
ちなみにわが家『箱根やまぼうし』では4月に3年ぶりに京都のニットアーティスト・石井麻子さんの展覧会を開催致します。
ひとつひとつ丁寧に編まれた石井先生のサマーニット達が春の箱根にやってきます。大人の女性が身につけるにぴったりなラブリーなものばかり。初日には石井さんとのギャラリートークも開催致します。
ぜひ箱根まで足をお運びください。
詳細は公式ホームページをごらんください。
http://www.mies-living.jp/events/2016/knitart0402.html
knit.jpg

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です