映画『あなたは まだ 帰ってこない』

フランス文学を代表する女流作家、マルグリット・デュラス原作の自伝的原作「苦悩」(河出書房新社刊)を見事なまでに映画化された作品。

ナチス占領下のパリで、女たちはそれぞれ愛する人の帰りを待つ。第二次世界大戦時のナチス占領下のパリ。1944年、マルグリット・デュラス(1914~96)が30歳の時の話です。

「愛人ラマン」の翌年70歳でこの「苦悩」を発表しています。「愛人ラマン」は、ゴンクール賞を受賞し、ベストセラーになります。

今回は自身の愛と、その苦しみが戦争の記憶ととともに語られます。1985年刊行された「苦悩」は、デュラス自身が「私の生涯でもっとも重要なものの、一つである」と語っています。

監督はゴダールなどの助監督を務め、その才能は高い評価がされているエマニュエル・フインケル。主演は私の大好きな「海の上のピアニスト」に主演したメラニー・ティエリー。

ドイツ占領下のパリで抵抗運動に身を投じるデュラスと夫。ゲシュタボは夫を逮捕し、手先とデュラスが接触し、アジトを探ります。

この映画は”夫を待ちながら”デュラスは愛人マスコロ(バンジャマン・ピオレ)の理解と協力で手先の誘惑・裏切り・・・など彼女は夫の消息を知りたい、と願います。

複雑な国際政治の流れの中で脱出に失敗した夫を愛人と仲間たちが助けだします。8月パリ解放。瀕死の夫を1年の看病後、「愛人の子どもが欲しい」と、妻は離婚を申し出ます。命がけで助けた夫。画面には夫の海辺で療養している横顔しか登場しません。極限状態においての『愛』。彼女を誘惑する手先の男の『愛』。愛人の『愛』。

作家としてのデュラスの生きる姿に正義感や道徳・・・などといった判断は簡単には当てはまりません。作家の冷徹な目、燃え尽きた愛のなかでは生きていけない女。やはりフランスならではの女の生き方です。(と、言っていいのか・・・)

愛とは歓びなのか、苦しみなのか、あるいは待つことなのか?すべての女性に突き付けられる、愛の葛藤とパンフレットには書かれていました。成熟した大人の映画でした。

渋谷Bunkamura Le Cinemaにて。
https://www.bunkamura.co.jp/cinema/

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