映画 ファントム・スレッド(米)

なんとスリリングで魅惑的な映画なのでしょうか。

1950年代、ロンドン。
高級ファッションの世界で生きる男をめぐる物語。

米映画界で独創的な映画をおくり続けている監督。ポール・トーマス・アンダーソン。彼はなんと脚本・撮影までこなしてしまいますが、映画を観ればわかります。この映画の繊細で完璧な”美”を撮るのは”自分”・・・と思ったのでしょうね。

主演は1957年、英国ロンドン出身で3度のアカデミー賞主演男優賞を受賞した国際的なスター、ダニエル・デイ・ルイストと組みます。ほんとうか・・・どうか・・・彼はこの映画で引退する、と語っていますが、困ります。だって私はとても彼が好き!

この映画について、新聞の記事には『心の闇と優雅な狂気』と書かれていますが、愛を知らない男に総てを捧げた女が抱く、狂気の執着。

ふっと立ち寄ったレストランで出会ったウエトレスのアルマ。それまでのモデルに飽きていた彼はアルマ(ヴィッキー・クリーブス)に惹きつけられ心を移します。ロンドンのウッドコック・ハウスに住み込みモデルになります。

この役のヴィッキー・クリーヴスは1983年・ルクサンブルグ出身。注目をあつめる新人ですが、どこか土臭さ、強さ、そしてエレガントにも振舞える役にはぴったり。大スターに引けをとらない演技は素晴らしいです。

唯一心許せる主人公の姉を演じるのは1956年、英国出身のレスリー・マイル(シリル役)。

1950年代のイギリスは戦争の疲弊からようやく抜け出して、国内は豊かになっていった時代です。この時代のファッション、とりわけオートクチュールの世界はパリが中心でした。

クリスチャン・ディオールは代表されるデザイナー。同時代に活躍したイギリスの「ハウス・オブ・ウッド・コック」は経営は姉が。彼はデザイナーとして完璧を目指し、上質な生地と繊細なレースが華やかさと品格を醸し出します。上流階級の女性を虜にし続け、君臨してきた主人公に、訪れる「恋愛」。はたしてこれを「愛」とひと言では表現できませんが、この関係性が映画の魅力になっていますので、詳しくは書きませんね。ご興味がわいたらご覧ください。私のお薦めの映画です。

私が惹かれたのはハウス・オブ・ウッドコックの美術です。2017年の1月から4月にかけて、ロンドン、ヨークシャとコッツウォルズで撮影されたそうですが、レイノルズの住居兼仕事場である家は、18世紀の建築が並ぶタウンハウスが使われました。

高い天井、大きな窓、螺旋階段といったドラマティックな家は映画をいっそう観ている側をその時代へと誘ってくれます。部屋の壁紙は、自然光をより反射させるような、メタリックな光沢の帯びたものに張り替えられたそうです。

ジョニー・グリーンウッドの音楽もそれぞれのシーンにふさわしい曲で、シーンごとに生き生きとします。

主人公2人の関係の変化を見逃さないでください。後半30分には驚きました。監督は新聞のインタビューに語っておられます。

『アルマはウッド・コックに「弱って伏せってほしいけれど、強いあなたでもいてほしい」と矛盾した言葉を投げかける。「恋愛はお互いの気持ちの均衛がたもたれているのがベストだ。ただ、振り子のようにどちらかに触れる部分が、見るには面白い』と。

映画を通し、人間のもつ、脆さ、危うさ、そして温もり。銀座和光裏のシネスイッチで観て、しばらくは銀座の裏通りを歩きながら映画の余韻に浸りました。

映画公式ホームページ
http://www.phantomthread.jp

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