ジャンヌ・モローさん

2月17日から3月2日まで有楽町の角川シネマで『華麗なるフランス映画』が4K映像で初上映されました。

ドロン、ドヌーヴ、モロー、ベルモント!毎日4回。
太陽はひとりぼっち・昼顔・ダンケルク・哀しみのトスカーナ・エヴァの匂い・突然炎のごとく・・・など、毎日違う組み合わせで上映されるので観たい時間を選べばよいのですが、私はなんと言っても『ジャンヌ・モロー』の大ファンなので、「エヴァの匂い」と「突然炎のごとく」を続けて観たく早朝のバスで下山し、1回目と2回目を観ました。

ジャンヌ・モローさんは2017年7月31日、老衰により89歳で亡くなられました。1957年の「死刑台のエレベーター」「危険な関係」「雨のしのび逢い」、そして1962年の「突然炎のごとく」「エヴァの匂い」。

最後の作品は2012年の「クロワッサンで朝食を」。この映画については以前ブログにも掲載いたしましたが、モローらしい・・・いえ、彼女そのもののような毅然とした孤独なブルジュワマダムを見事に演じていました。

衣装のシャネルスーツは彼女自身の自前だったそうです。ですから、よりリアルに、役を演じている・・というより彼女の日常を垣間見ているようでした。女優、脚本家、映画監督、歌手、さまざまな分野で活躍されましたが、私はやはり『女優ジャンヌ・モロー』が一番好きです。

今回の「突然炎のごとく」は、男二人と女一人の三角関係。モローの小悪魔的魅力を監督のフランソワ・トリュフォーが見事に演出しているのですね。

モノクロ、この時代の映画をカラーではなく今モノクロで観ると、こちらの想像力を駆り立てむしろ鮮明な色・空気・匂いまでもを刺激され楽しませてくれます。

自由気ままな彼女に翻弄されつつ・・・三人の長きにわたる恋愛模様は、やはりフランス映画だからのシチュエーションでしょうか。彼女の可愛らしさ、女としての匂い、たしかな演技力、トリュフォー監督屈指の傑作です。

私が最初に映画館で観たのはもう半世紀以上前。まだまだ子どもで、でも生意気盛り、「やっぱりトリュフォー、モローだわ!」などとつぶやいていましたが、なにも分かってはおりませんでした。あたり前ですよね。ラストシーンがあまりにも有名で、ショッキングだったので鮮明に覚えてはおりますが。

モローは1928年・パリ生まれ。父はフランス人のレストラン経営者。母はイギリス人のキャバレー・ダンサーで母の影響を受けて育ち、パリのフランス国立高等演劇学校で演技を学び、1947年に舞台デビュー。劇団コメディー・フランセーズで頭角を現します。

以前、彼女のインタビュー記事を読んだとき「私の生まれたモンマルトルは歓楽街に近く、そこに住むダンサーや情婦たちの世話になり、お金のない私にごはんをおごってくれたり、いろいろ世話してくれたの。そんな彼女たちの恩は一生忘れられないわ」と語っていました。独特のかすれた声、ざっくばらんな話し方。

「反骨の人」「自由人」・・・ジャンヌ・モロー死去。
一人暮らしの自宅で亡くなっているのを翌朝、家政婦が発見したそうです。いつも、毅然としていたモローは人生の終焉をひとりで迎え、それは覚悟して”ひとりで暮す”ことを選択した彼女の人生。

寂しささえも、自分の一部になっていたのでしょうね。
孤独だからこそ、自由でいられたのでしょうね。
そして、孤独はけっして怖いものではない。・・・とモローに教わりました。

下町、モンマルトルのビストロの”オニオングラタンスープ”が忘れられなくて、白ワインとスープをいただき、暗い夜空に輝く星を眺めながら帰路につきました。

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