箱根便り~箱根とアート

自然の美しさと東京へのアクセスのよさに惹かれて箱根に居を構えたのですが、実際に暮らしてみて、箱根のもうひとつの魅力に気がつきました。
それは素敵な美術館に囲まれていること。
以来、箱根の美術館巡りが私の日常の1ページとして加わりました。
子どもたちが小さいときにしょっちゅうお訪ねしたのは、箱根の山々が望める彫刻の森美術館でした。こちらは国内ではじめての野外美術館であり、
近・現代を代表する彫刻家の名作が広大な敷地に常設展示されています。
ロダン、ブールデル、ミロ、そしてヘンリー・ムーア。またピカソの陶芸作品を中心に、絵画や版画、彫刻などが展示されたピカソ館も見逃せません。
ムーアは「彫刻の置かれる背景として空以上にふさわしいものはない」と語ったそうですが、その意味するところが、この美術館に身をおくとわかるような気がします。子供連れでも気後れすることなく、親子ともども楽しめるというのも嬉しいところです。
焼き物に興味があるのなら、箱根美術館がお勧めです。
日本の古陶磁、常滑焼・瀬戸焼・越前焼・信楽焼・丹波焼・備前焼などの
「六古窯」を中心に、素晴らしい作品が常設展示されています。
モネ、ゴッホ、ルノワール、セザンヌ、シャガール、ピカソなど、日本屈指の
西洋絵画のコレクションが揃っているのはポーラ美術館。
先日、企画展「ボナールの庭、マティスの室内 日常という魅惑」(3月7日まで)を見に行き、日常の空間が画家に着想を与え、突き動かす力動を感じてきました。
そして私がもっとも身近に感じているのが、我が家から車ですぐの場所にある箱根ラリック美術館です。
ラリックはアール・ヌーヴォーからアール・デコへと変わる時代、ガラス工芸を芸術まで高めた芸術家。もともと私はラリックの作品が大好きということもあり、2005年のオープン以来、頻繁に通っています。
そこにはまさしく芸術家のイマジネーションから紡ぎだされた光溢れるガラスの美の世界が広がっています。すぐに帰るのが惜しいようなときには、施設内のレストラン「LYS(リス)」でランチをいただくことも。3面がガラス張りのこのレストランで、ラリックの余韻を味わいながら1杯のシャンパンをいただくのも至福の時間です。
この時期、ラリックが室内装飾に関わったオリエント急行の車窓から、ライトアップされたラリックの作品を堪能できる「ラリック ウインターライト レビュー」(3月31日まで)も開催されています。
心の重力を解き放ち、憂いを押し流し、生きる喜びを倍加させ、静かに確実に精神をリフレッシュさせてくれる力のあるアートを訪ねに、箱根にいらっしゃいませんか。

(豊かな無駄時間を楽しむ大人のコミニュティ・マガジン「コモ・レ・バ?」より)

「箱根便り~箱根とアート」への2件のフィードバック

  1. 岩渕潤子さんが『美術館で愛を語る』で、こんなことを言っていました。
    美術館は、さまざまな価値観の展示場所なのです。美しいものを見にいくばかりでなく、「わからないものから目を背けない勇気」をもってもらわないことには。「へえ、わからないな」といえばよいのである。
    自然と美術は、よく似ているような気がします。しかし都会のビルの一郭にある美術館しか、身近に触れることのない身には、自然のなかで美術品に接する贅沢には、ためいきが出るばかりです。

  2. いつも素敵なコメントを有難うございます。箱根に住み、自然の大いなるパワーをいただいております。
    これからも学び、伝えていくつもりです。 浜美枝

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