グリーンツーリズム沖縄-琉球新報「南風」

グリーンツーリズムをご存知だろうか。グリーンツーリズムは1970年代に、ヨーロッパのアルプス地方で生まれた。農家に都会の人たちを宿泊させることで、農家の収入を補い、農村を活性化させ、宿泊者は田舎の親戚に遊びに行くような気持ちで農村を楽しむという旅のあり方である。
韓国のグリーンツーリズムの現状を知るために、江原道華川郡の土雇米マウルとヨンホリ村を訪ねた。華川郡は中山間地で過疎化、高齢化が問題となった2000年ごろからグリーンツーリズムに取り組み始めた。農家民宿や農業体験で利益をあげるのではなく、宿泊者が都会に帰った後、農産物の産直という形で交流が続くようにプログラムを作っているという。
土雇米マウルでは廃校を宿泊所にして旅行客を呼び寄せ、ヨンホリ村では農家民泊用の建物を村のあちこちに建設して、グリーンツーリズムを展開していた。
2つの村で、私たちは思いがけないほどの歓待を受けた。ヨンホリ村では祭りも体験することができた。現地の人と共に私も一夜、食べ、飲み、太鼓や鐘の音にあわせて踊った。日韓に横たわる辛い歴史への複雑な思いがあったにもかかわらず、踊りながら笑顔を交しあい、私は深い魂の交感ができたような気がした。都会と田舎を結びつけるだけでなく、人と人が生の出会いを体験するグリーンツーリズムには国境をも越える力があるのではないかと思わされた。
ところで踊りの輪の中に誘われたときに、沖縄で同じ体験をしたことがふいに蘇った。三線の早弾きに乗せ、おばあやネーネーと一緒にカチャーシーを踊ったときのことだ。アジアはつながっていて、沖縄は歴史的にも地理的にも文化的にも、その要となる地なのだと感じずにはいられなかった。韓国の新たな友と踊りながら、私は沖縄の懐かしい友の顔を思い出していた。
琉球新報「南風」2006年10月17日掲載