映画『火花』

又吉直樹さんの芥川賞受賞作を映画化した「火花」を観てまいりました。
2人のお笑い芸人の10年の物語です。
私は普段あまりお笑いの世界に接する機会が少ないのですが、もちろん又吉さんの原作は読んでおりますし、この原作をどのように映画化するのか・・・とても興味がありました。
挫折した2人のお笑い芸人を見事に演じている20歳の漫才師、徳永(菅田将暉さん)と4歳上の神谷(桐谷健太さん)、そして、監督は又吉さんの先輩のお笑い芸人であり、俳優であり、映画監督の板尾創路さん。
笑いを追及する二人は吉祥寺のハモニカ横丁で飲んだり、井の頭公園を歩きながら、漫才のネタを研究したり・・・その真剣さとくだらなさを言い合いながらの笑いの追及を、映像で表現するとこのようになるのだと深く感心しました。そして俳優さんたちのリアルさにはなにか・・・涙腺を刺激されドキュメンタリー映画を観ているような錯覚になりました。カメラワークが素晴らしい!演ずる舞台の上の彼らだけではなく、ソデで出を待つ姿、表情を監督はしっかりおさえています。
コンビの解散を決めた徳永が、相方のために考えたネタは、内容を知っていても泣けますし、エンディングで流れる「浅草キッド」(作詞・作曲ビートたけし)も素晴らしいです。青春を真剣に駆け抜けた映画です。
冒頭の打ち上げ花火。
ラストの花火。
切なくなりながら清々しい気持ちにさせてくれる2時間の映画でした。原作の持つ力が遺憾なく発揮されています。
実は今、又吉直樹さんの「劇場」を読んでおります。来週の私がパーソナリティーをつとめる文化放送「浜美枝のいつかあなたと」に又吉さんをゲストにお迎えするのです。お会いするのがとても楽しみです。
どんなお話を伺おうか・・・芸人と作家との狭間をどのように生きていらっしゃるのか、お聞きしたいことはいっぱいあります。
お会いしたら、来週のブログでご報告いたしますね。
とてもシャイな方とお見受けいたします。

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映画公式サイト
http://hibana-movie.com

フランスの絵本の世界

師走に入り、なんとなく気ぜわしい日々。
落葉し尽くした冬の山は静かで私のもっとも好きな季節・・・。
こういう季節には”小さな旅”がしたくなるのです。
素敵な絵本の世界に誘われ、館林までの旅です。
ゾウのババールやペネロペなど子どものころの憧れだったフランスの絵本。でも私の子供時代にはとうてい無理な世界でした。大人になってから少しづつ読み始めた絵本。
そんなフランス絵本の歴史をたどることのできる展覧会が12月24日まで群馬県立館林美術館で開催されています。
鹿島茂コレクション・フランス絵本の世界』展です。
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展示は、フランス文学者の鹿島さんが30年近くかけて集めてきた貴重なコレクションです。
厳選された約300点が初公開されているのです。
フランスにおいて子どものための本が発達するのは19世紀半ばだそうです。それまでの子ども達は労働力でもあったのですね。
編集・出版社のエッツェルは、作家や画家達の才能を発掘し児童書の傑作を世に送り出したことなど、よく理解できる展示になっていて、フランス絵本の黄金時代を辿るとともに「絵本」はいくつになっても憧れです。
展示では、絵本誕生の先駆的な役割を果たしたといわれるアルノー・ベルカンの「ラミ・デ・ザンファン(子どもの友)」1822年に刊行された復刊版など貴重な本などが観られます。
かわいらしく愛らしい絵本・・・
お掃除や、お片付けに忙しい師走。
ちょっと手を休め”子ども心”に戻るのも素敵なことですね。
浅草から1時間で行けるのですもの。
芝生にかこまれた美しい広場も、建築も素晴らしいです。
帰りには”冬茜”がお見送りしてくれました。
「ババールのこどもたち」の絵本を小脇に抱え帰路に着きました。
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群馬県立館林美術館の公式サイト
http://www.gmat.pref.gunma.jp/ex/exnow.html

「高倉健 七つの顔を隠し続けた男」

大変興味深い本に出会い、いっきに読みました。
作者はノンフィクション作家・森功さんです。
私自身は高倉健さんとは生前一本だけ共演させていただきました。それも40年ほど前のこと。ただ鮮明に覚えております。映画の内容というより「高倉健」という方の人間性を垣間見たときです。
それは、映画のクランクイン初日のことでした。
(東映映画『捨て身ののならず者』)
そう・・・初日はロケから始まりました。東京駅の近くの旅館で仕度をし、6畳ほどの部屋で出番を待っておりました。すると『失礼します。高倉健です』と廊下で声が致しました。慌てて障子をあけると廊下に正座をなさり、あの大スターの健さんがいらっしゃるではありませんか!私も廊下に頭をつけ「こちらこそ宜しくお願いいたします」と申し上げました。もう胸はドキドキ・・・共演させていただけるだけで光栄なのに大先輩のご挨拶に恐縮し、仕事はスタートいたしました。
もちろん撮影はスムーズに進行し無事に終了いたしました。仕事の間、健さんはスタッフへの気配り、共演者への気配り・・・私は当時東宝に所属しており、東宝の空気は東映とはまた違い、でも、戸惑うことなく仕事ができたのも、そうした健さんの周囲への細やかな気配りがあったからなのだと思います。
今回の森さんのご本”七つの顔を隠し続けた男“とありますが、森さんはさすがノンフィクション作家です。日本人に最も愛された俳優の”光りと影”を見事に描かれています。
影の部分・暴力団「住吉会」の幹部たちとの交流も健さんらしい「人の道・仁義のありかた」などよく取材なさっておられます。
森さんは、健さんの母校の後輩です。(北九州市の福岡県立東築(とうちく)高校。健さんは1949年、貿易商を目指して明治大学商学部に入学しましたが、あまり真面目な大学生ではなかったようです。むしろ”やんちゃな学生”だったようです)
社会人になっても時には度を超えるほど酒と喧嘩の日々。あるきっかけで俳優となり、後に結婚する江利チエミさんのファンになり”追っかけ”をして結婚します。
このご本を読んでいるとお二人が相思相愛であったことが窺われますが、幸せと不幸が交互に訪れるような日々。チエミさんと離婚後、亡くなってからも月命日には周りに気づかれないように墓参を続けていらしたようです。
謎が多く、きっと報道などで皆さんもご記憶があると思いますが、亡くなる前に養女となった女性の存在。彼女は健さんの最期を看取ります。親族も知らなかった彼女の存在。そして遺産。謎が残ります。
やはり、直接お話を伺いたく、ラジオのゲストにお迎えいたしました。
最後に森さんは「高倉健は本名の小田剛一(たけいち)としてではなくやはり”高倉健”を演じ切り亡くなったのでしょう、それが彼の美学です」とおっしゃられました。
私は本を通して”役者の孤独・業”を感じました。
そして森さんがおっしゃる”男の美学”を感じました。
ぜひ、森さんのお話をお聴きください。
そして本をお読みください。
文化放送「浜 美枝のいつかあなたと」
放送は12月24日
日曜10時半~11時
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富山の豊かさ

先日「富山県食品衛生協会創立60周年記念」に招かれ、記念講演で「健やかで豊かな人生を・食と健康」をテーマにお話をさせていただきました。会場はほぼ中高年の方々でした。”食・健康”はどなたも関心のあるテーマですね。
人生100歳!の時代が・・・と言われるようになりました。年齢を重ねることを怖がり、老いを疎む風潮がありますが、私は今が一番幸せです。
もちろん70代に入り、体の声に耳を傾ける機会も増えました。しかし、命に限りがあることを実感したことで、生きていることに感謝する気持ちが湧き上がり、日々がさらに輝きを増したような気がするのです。
会場の皆さまと一体となり、人生「下山の時期」についても考えました。穏やかな空気間、笑顔、至福のときをいただきました。この頃は”ささやかな幸せ”をみつける名人!になりつつあります(笑)
富山はもう何十回も通う街です。時には足を延ばして…世界遺産になる前に伺った五箇山合掌造り集落、黒部渓谷でトロッコ電車に乗ったり、八尾の街並みであったり、工芸では井波彫刻、高岡銅器を拝見したり…45年ほど前に壊される運命にあった合掌づくりの家を譲り受け、箱根のわが家の大黒柱になっていたり…。
食も豊かなところです。四季折々の富山湾で採れるホタルイカ・シロエビ・ベニズワイガニ等など。食の宝庫です。そして地酒も美味しい!
今回も前日入りしぜひ伺いたいと思っていた、富山市ガラス美術館と図書館に行きました。
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立山連峰を感じる隈研吾さんの設計による建物。外観は御影石、ガラス、アルミの異なる素材が組み合わされています。内装は富山県産材ルーバ(羽板)が活用されているので温もりが感じられ、市民の憩いの場になっています。
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3フロア、なんと言ってもこれだけのゆったりしたスペースがとられている図書館はなかなかないでしょう。長い冬など図書館で時を過ごす。快適でしょうね。「こども相談口」もあり夏休みなどは宿題の相談に母子できたり…文化・芸術が暮らしの中にある。いいな~豊かだな~と思わずつぶやいておりました。
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「ガラスの街とやま」を目指した背景には300年の歴史をもつ「富山のくすり」があるからなのですね。図書館の上のガラス美術館では、現代ガラス美術の巨匠デイル・チフリー氏のインスタレーション(空間芸術)が展示されており堪能いたしました。
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街の中心から”路面電車”に乗りホテルにもどりましたが、今回の目的その2が路面電車なのです。「路面電車の謎」を書かれた小川裕夫さんの本を読むと、この富山県は路面電車が3つも運行されている路面電車大国なのです。
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新幹線を降りると目の前が南富山駅で雨の日でも濡れずに乗ることができます。富山地方鉄道はいくつかの会社が合併し、富山市電へと改組され現在にいたり「コンパクトシティー」には欠かせない市民の足となっています。買い物バッグを持ちお年寄りが”ちょい乗り”にはもってこいです。沿線には病院、スーパー、大きな薬やさん…など。
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翌朝は北口から乗り日本海が眺められる岩瀬浜まで約15分乗りました。
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まず歩いて岩瀬大町に。ここは旧北国街道に面しており、北前航路が最盛期の明治初期に建てられた廻船問屋が建ち並ぶ街並み。「まち歩きマップ」を片手に持ちの散策でした。古き文化も残しての町づくり、そこに人の暮らしを感じ、匂いを感じ、素敵な町づくりです。
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歩いて日本海の海岸に立ちました。11月15日でした。この日は新潟市で40年前に横田めぐみさんが北朝鮮に拉致された日でした。『娘を返してください』とご両親が会見で語られておられました。遠く対岸の北朝鮮に「ひとめでもご両親のもとに返して差し上げて」と祈りました。
帰りも岩瀬浜から路面電車で市内に戻りました。一駅一駅、興味深いパネルがあり『電車の中にあなたの暮らしがある』と書かれていました。サービス付き高齢者住宅も目の前に見えます。過疎化、空き家対策、高齢化、様々な問題を抱える日本列島。ひとつのヒントを住民の足になり暮らしの要になっている路面電車に乗りながら考えました。

箱根美術館の紅葉

見ごろ到来の強羅にある「箱根美術館」に行ってまいりました。
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今年は10月の長雨の影響で、一斉に赤のもみじのだけではなく、黄、緑のなかに真っ赤な紅葉が見事です。
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200本のもみじと苔の庭。周囲の山々に囲まれたこの庭には四季折々の美しさがあります。
“きっと混んでいるでしょうね”と思い我が家からはバスを乗り継いで朝一番で行きました。11月は9時半開館なので10時前に行ったらもう行列ができていましたが、スムーズに入館でき、青空に映える紅葉を堪能し、本館では展示室に多くの窓があり、自然美と一体になった空間で作品を鑑賞できます。
“中世のやきもの”を中心に、縄文時代から江戸時代までの日本陶磁器が常設展示されております。
創立者・岡田茂吉(1882~1955)の「美術品は決して独占するものではなく、一人でも多くの人に見せ、娯(たの)しませ、人間の品性を向上させる事こそ、文化の発展に大いに寄与する」という精神のもとで生まれた美術館だからでしょうか、写真も撮れて”生活の芸術化”が感じ取れる親しみある美術館です。
箱根湯本駅からは登山電車で強羅駅まで。
またはバスで観光施設めぐりに乗り換えて「箱根美術館」前で下車。
今週末から来週いっぱいが見ごろでしょうか。
どうぞ、私の住む秋の美しい箱根にお遊びにいらしてください。
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映画「女神の見えざる手」

ワシントンの辣腕ロビイスト、エリザベス・スローン(ジェシカ・チャスティン)は自分の信じることに果敢に挑む。政府を陰で動かす、といわれる”戦略の天才ロビイスト”を見事に演じている。
でも正直に言って映画が始まった15分はあまりのテンポの速い演出についていけず、私の頭は混乱していました。
「何なの・・・これって!」状態でした。
でも気がつけば2時間12分のストーリーに引き込まれ、したたかな女性スローンに”あっぱれ”と拍手でした。
私がびっくりしたのは脚本です。何と初めて執筆した脚本が映画化され、もともとはイギリスの弁護士だったジョナサン・ペレラが映画学校などには通わず、手に入った脚本を片っ端から読み、そして学びこの作品を完成させたとのこと。
弁護士だった彼女はBBCのニュースで、不正行為で逮捕された男性ロビイストのインタビューに着想を得ての執筆だったそうです。そのロビイストを女性に置き換えた、その着想が素晴らしいです。
現代社会において女性が実際このような仕事の仕方がゆるされるのか・・・マシンガンのようにしゃべりまくり、何よりも大切なのは仕事、絶対に勝つ、「女性のステレオタイプを打ち壊すような物語を伝えられるなら、喜んで引き受けるわ」とジェシカ・チャスティンは語っています。
原題は「ミス・スローン」
エリザベスの人生は、仕事がすべて。パーティーに顔を出すのも、戦略の根回しや、裏事情をつかむのが目的。眠る時間がもったいないので、眠気止めの強い薬を飲む。私生活での交友はほぼゼロ。もちろん恋人もいない。男性への欲望は高級エスコートサービスで満たす。部下さえも裏切る、目的のためには。
全米500万人もの銃愛好家がいるといわれるアメリカ。その背景には政治の世界が大きく関わっていることが映画でよくわかります。私の全く知らない世界。作品自体はフィクションですが、実際のエピソードの数々がヒントになっているそうです。そして「アメリカの銃規制を実現するには、ミス・スローンが何人いてもたりない」と言われます。
監督・製作総指揮はジョン・マッデン。
「恋におちたシェイクスピア」(98)がアカデミー賞作品賞を受賞。そして私の大好きな「マリーゴールドホテルで会いましょう」など数々の名作を世に送り出している監督がこう述べています。
「がむしゃらで刺激的なエネルギーが爆発するように展開させる。そして、勝利への執着心からくる虚しさに主人公が気づいたとき、それまでのスピディーな流れを、均衝状態と沈黙で途切れさせるような作りをめざした。」と。
トップ・ロビイストを完璧に表現したファッションを見事に着こなしているジェシカ・チャスティン。
でも、私がとても印象深く感じた繊細な演技。
フッとした瞬間の表情、目の動き、人間味ある主人公を演じた彼女に堪能しました。
映画ですから、あまり詳しいストーリーは申しませんが、もしご覧になられたら『ラストシーン』の最後の最後に見せる目はだれに向けているのでしょうか?私なりに勝手に想像をしましたが、さて。
映画公式サイト
http://miss-sloane.jp
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『人はなぜ旅に出るのか・・・旅の歴史と民俗』

大変興味深いフォーラムを聴きに行ってまいりました。
「旅の民俗」シリーズ出版記念フォーラムでした。
(旅の文化研究所編 現代書館)
1:基調講演 「宮本常一の旅学から」
神埼宣武さん(民俗学者・旅の文化研究所所長)
2:「津軽三味線ひきがたり」
二代目・高橋竹山さん
3:パネルディスカッション 「旅の民俗ー行商・芸能・観光」  
パネラー:岡村 隆さん(作家・探検家)、亀井好恵さん(成城大学民俗研究所研究員)、山本志乃さん(旅の文化研究所研究主幹)
コーディネーター:佐伯順子さん(同志社大学大学院教授)
「旅は憂いもの辛いもの」
「かわいい子には旅をさせよ」
「袖振りあうも他生の縁」  
人はなぜ旅をするのか?
人間にとって旅とは何なのか?
記録や体験者の記憶を収集し、社会変化などを実態的にとらえた、新たな「旅行史」・・・とあります。
第一巻 生きる

第二巻 寿ぐ(ことほぐ)

第三巻 楽しむ

読み応えのある本です。
“人に逢う”・・・仕事であろうがなかろうが、私はこれがとても好き。いったいいままで何千人の方、何万人の方々とお逢いしてきたでしょう。お逢いした人から多くのことを教えられ、そこからまた、人の暮らしの深遠をたずね、好奇心は際限なく募るばかりです。
それもこれも根っこはひとつ。
宮本常一(1907-1981)の一冊の本に出会ったからだと思います。
忘れられた日本人
中学生の時に図書館で手にし、「スゴイ人がいる!」と夢中で読んだ本でした。民俗学者で、農村指導者であり自分の足で地球を4周するほどの行程をヅック靴とこうもり傘をリュックに引っかけ、半世紀にわたり訪ねた村々は3000以上。日本の僻地離島を隅々まで歩き、離島振興に情熱を注いだ人。これが、私の最初の情報でした。
この日のそれぞれの方のお話は大変興味深いものでした。二代目高橋竹山さんの津軽三味線。先代はまだ”門付(かどつけ)”をしながら盲目の身を全国行脚されておられ、後に二代目と一緒にニューヨークやパリでの公演も大成功でした。目をつぶりながら音色を聴いていると日本の風景が浮かんできます。
神崎先生の「宮本常一の旅学から」も勉強になりました。
〇 旅に出なさい そして、タスキを繋ぎながらそのタスキを若い人に繋いでいく。その場所に行ったら高いところに上ること。などなど。
先にもお話いたしましたが、私は仕事がら出会う人も多く、出会った方から多くの心もいただきもしました。実際、学校というのは社会のいたるところにあり、田んぼで作業する腰の曲がったおじいちゃんに日本の農業の絶望を昔聞いたことがあります。海辺で網をつくろうおばあさんに、港町の歴史を聞き、山また山の奥の木地師の古老に山の掟を学びました。
日本のいたるところに師がいる。私の旅はそういう無名の師に出会う旅だったようにも思います。私に話してくれたことを折りにふれ思いだします。
海外からたくさんの観光客の方々が日本にお越しくださいます。かつての旅と現在の旅は大きく変化しています。かれらが求めているほんとうの『日本』の旅とは何んなのでしょうか。
私の好きな岩手県遠野。柳田国男の遠野物語の世界は、ないと思えばなく、あると思えばあるのです。地方の至るところで、良き文化を必死で守っている人たちがいます。
宮本常一が歩いたように、私も一人でポツポツと歩きたくなりました。そう誰も行かない寒い寒い季節に行けば、もう遠野はすっかり民話の宇宙。
この日は一日、フォーラムで旅をしておりました。

パリ・グラフィック・・・ロートレックとアートとなった版画・ポスター展

私が担当しているラジオ番組「浜美枝のいつかあなたと(文化放送)」の収録後はちょっと”寄り道”をしてから箱根の山に戻るのが習慣になっています。
映画や美術館、やはり東京駅周辺・銀座・品川エリアが多いです。今回は丸の内の三菱一号館美術館に行きました。
「パリ・グラフィック・ロートレックとアートになった版画・ポスター展」を観てまいりました。
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ダンスホールや街角、まさに19世紀末のパリの様子の賑やかさがよみがえります。それまでは情報伝達や複製の手段でしかなかった版画が芸術表現となりました。そして大衆文化とともに発展したポスター。「グラフィック・アート」はまさに生活と芸術が人々の暮らしに根づいたのでしょうね。また、個人のコレクションとして興味をそそられる作品の数々も観ることができます。
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今回は音声ガイド付きで観ました。当時の音楽を聴きながらのアート鑑賞はなかなか粋です。私はこの美術館が好きです。明治期のオフィスが復元された建物。230万個のレンガが使用された構造。窓一枚、柱一本、階段がもうアートなのです。小さな展示室が連なるため疲れません。一作ごとにゆっくり鑑賞できるのが嬉しいです
仕事のオン・オフができます。日常から離れ、新鮮な感動や喜びが体験できます。ひとりで誰にも気兼ねすることなく、自分らしい時間がたっぷりと味わえます。
今回の展覧会はオランダ・アムステルダムの「ファン・ゴッホ美術館」の19世紀末版画コレクションから、リトグラフ・ポスター等を中心に油彩、挿絵本なども展示されています。
そう・・・もう半世紀も前、ヨーロッパ一人旅をした時に、まだ現代のような立派な建物ではなく漆喰壁の小さなゴッホ美術館のきしむ階段を上り、天窓から射す光のなかで観た「馬鈴薯を喰る人々」や履きふるした「靴」を観たときの感動は忘れられません。
女優になって、自分の置かれた立ち位置に戸惑い、自信がなくなったときの旅でした。二枚の絵を観た時、テーブルに収穫した馬鈴薯とランプの灯りに労働の喜び。そして、履きふるした靴には汗の臭いをかぐ事ができ、働く勇気をもらいましたっけ・・・。そんなことが蘇ってきました。
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夕暮れのひととき、外のランプの灯りの下のワインの美味しいこと・・・幸せ気分で山にもどりました。
“さぁ~明日からもまたがんばりましょう”
明日は横浜で「朝日カルチャセンター横浜教室」に招かれております。皆さまにお逢いできるのが楽しみです。

イギリスへの旅

旅の楽しみが、景色や名所旧跡だけを見ることだったら、その楽しみは半分だったのではないでしょうか。”人に逢える”・・・この喜びが加わることによって、旅は2倍も3倍も楽しくなるのです。
今回のイギリスへの旅は、鎌倉でアンティークショップ”フローラル“を営んでいる娘の買い付けに便乗しての旅でした。彼女が仕事の時は、教会や大聖堂に行ったり・・・と自由気ままに過ごしました。13日間のレンタカーの走行距離は1000キロはあったでしょうか。
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最初に訪ねた街はロンドンから約100キロの港町・ライ。ここに住む素敵なA夫人にお逢いしたくてロンドンを早朝に出発しました。
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今年86歳の夫人は、ライの町で長年大きなアンティークショップを経営し、今はリタイアなさり、素敵な可愛らしいお庭のある家に一人暮しておられます。白髪で細身で背筋がピンと伸びていてとても綺麗な方です。
昼間は庭の花や野菜の手入れ、一人の時間の過ごし方の名人です。ビスケットに紅茶を淹れてくださいました。その人生は背後にある厳しさが背骨になって凛とした美しさがあり、彼女に会うことがイギリス行きの楽しみのひとつです。
1泊してロンドンに戻る途中、今回の旅でどうしても行きたかった街・カンタベリーへと向かいました。
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中世の美しい街並が広がる英国最古の巡礼地です。紀元前にこの地域を支配したローマ人が繁栄の礎を築いた街。英国国教会の総本山である宗教都市ではありますが、街行く人々は観光客も多く賑わっています。
荘厳な大聖堂を、ローマ時代に造られた城壁が取り囲みます。聖堂のステンドグラスは12~13世紀のもの。ローマ・カトリック教会から決別して英国国教会を立ち上げたヘンリー8世も登場します。映画「カンタベリー物語」を思い出しながら、中世の街を後にしロンドンへと戻りました。
今度は列車で3時間半南下してトットネスという街に行きました。息子家族に会うために。
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夜はオーガニックレストランに連れていってもらいました。オーガニック農場と野菜の宅配の先駆けで有名なRiverfordの農場があり、レストランが併設されおり、採れたての野菜はみずみずしく味も濃厚でした。何もしなくても美味しいのでしょうが、ハーブやビネガー、フルーツなどと一緒に食べると絶妙な美味しさです。知らない人も同じテーブルに着き、大皿でシェアしていただくめずらしいスタイルで、楽しく会話もはずみます。よい家族との再会の夜でした。
その次は、ロンドンから北の街・リンカーンへ。ここでは典型的なイギリスの家を借り4泊しました。
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旅での楽しみのひとつはスーパーマーケットでの買い物。自炊ができたので、野菜や牛乳、ヨーグルト、ソーセージ、パンなど買い、朝・昼はサンドイッチを作り、夕食はほとんど自炊ができたので身体のコンデションはとても良かったです。
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あ、そうそう近所にあった2年連続全英で2位を受賞した「フィッシュ&チップス」のお店に行きました。夕方はテイクアウトの人々が並びます。私たちは食堂のようなところで食べましたが、今までイギリスで食べた中で一番美味しかったです。
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娘は周辺のアンティーク・フェアで買い付け。私も少しだけ買い物をしましたが、世界中から、また国内からの人でとても賑わっていました。イギリス人はほんとうに古いものを大切にし、親から子へ、孫へとアンティークが受け継がれていきますが、年4回はある大きなフェアでよくこれだけモノが動くものだと感心してしまいます。
最後の日だけはちょっと優雅に!と、私がイギリスに行く時には必ず訪れる農園の中にあるレストラン「ピーターシャムナーサリー」へ。
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2ケ月前には予約をいれたので昼食は3時の回がとれました。ロンドンから40分たらずのところにありますが、土曜の午後は満席でした。足元は土、室内は秋の花で飾られどんな季節でも美しいのです。旅先ではあまり飲まない白ワインを一杯・・・いえ、ロゼも一杯。
今回も何度も紅茶をいただきましたが、日本ではアフタヌーンティーなど高級な紅茶から、喫茶店で飲む紅茶まで最近は紅茶教室も盛んだそうですね。私は濃いめの紅茶にたっぷりのミルクを入れて飲むのですが、やっぱりイギリスのほうが自分でいれても美味しい・・・。
『牛乳』が違うのですね。ミルクを入れてキャラメル色の紅茶が最高!あちらのスーパーで買う安いティーパックの紅茶でもじゅうぶんに美味しいのです。もちろんポットを温め茶葉。ひと手間かけるのが一番でしょうが。スーパーで棚に並ぶパックの中で、イギリス人の主婦のような女性がサッと買っていらした紅茶をまねして私も買いました。
ロンドンに007の撮影でフラット(アパート)に滞在していたころ、まだ真っ暗な中、撮影所に向かう朝など淋しくなったりもしたのですが、このミルクティーにどれほど慰められたことでしょう。撮影中も10時と3時は必ずティータイム。私たち日本人は貧乏性ですから「あと少し頑張れば、このシーンが終わるのに」などブツブツいいながら紅茶を飲んでおりました。でも何度もイギリスに通ううちに分かりました。「ティータイム」は「コミュニュケーション」の大切な時間であること、仕事でも家庭でも、友人同士でも・・・。
紅茶 おいしくなる話し」の磯淵猛さんのご著書によると「お茶の文化は二つあって、一つは東インド会社から一気に船で渡ったビクトリア王朝時代からの「ティー」の文化で、もう一つはヒマラヤを越えてロシアやサウジアラビアまで渡った「チャイ」の文化です。」とあります。
私は10代のころからインドへ一人旅をよくしていました。夜明けとともに列車がホームに入ると「チャイ・チャイ!」とまだ5・6歳の少年が熱々のヤカンをはだしで持ち、素焼きの小さなカップに入れてくれるのです。5円もしなかったでしょうか。飲み終わると素焼きですから土のホームに投げ、土に戻します。お母さんが鍋か釜で茶葉とお砂糖で煮立たせたのでしょう。ミルクたっぷりの「チャイ」の味は忘れられません。トルコのカッパドキアで早朝、散歩をしていたら、穴からおじいさんが手招きし「チャイ」を飲んでいきなさいと・・・正直冒険です。でも洞窟に入ると鍋でチャイを作ってくれました。欠けた茶碗でミルクがふちにべっとり・・・もう~~美味しかったこと!
この二つの体験で私は「チャイ」が好きになったのでしょうね。もう半世紀も前の思い出です。
ここでも素敵な”出逢い”がありました。
あの幼い少年は中年になり、おじいちゃんは神さまのもとに。
私も74歳になります。
これからあと、どれぐらい旅ができるでしょうか。
ゆっくりと、旅を続けたいとは思います。
いつでも自分をとり戻せるのは”旅”ですから。
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箱根三三落語会 

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秋深い、この季節の箱根の山には大気も冷たさをまして、凛とした空気の中紅葉も見ごろを迎えます。
さて恒例の柳家三三師匠の落語会が「箱根やまぼうし」で開催されます。
1933年に柳家小三治師匠に入門し1996年には二つ目に昇進し三三に改名、そして2006年には真打に昇進。
その語りは”端正”のひとこと。
若くして古典落語を語る三三師匠は進化し続けています。
人生のすべてがあるともいわれる落語の笑いの中には、人間に対する優しさのようなものがあります。だからでしょうね、大人が心から笑えるのは。三三師匠は全国を駆け巡っています。私は沖縄で師匠の落語に出会いました。ホールに笑顔と笑い声が響き渡っていました。
古民家での落語はホールで聴くのとはひと味ちがいます。
30名と限定されておりますが、お席がまだ少し残っております。
開催日時:11月18日(土) 12時から
詳しくはホームページをご覧下さい。
http://www.mies-living.jp/events/171118rakugo.html