日本酒で乾杯推進会議・フォーラム

“乾杯三態・日本のかたち 日本の心”が10月2日に開催され全国から多くの方が参集されました。
この会は平成16年に発足し、代表に国立民族学博物館名誉教授・石毛直道氏、歌舞伎俳優・市川団十郎氏はじめ各界からのメンバーで構成され、「100人委員会」が中心となり、「日本酒で乾杯!」という言葉を象徴にし、日本の文化のよいところを広く啓蒙していく活動を進めていこうというものです。
私も今年から100人会のメンバーに入れて頂き、先日のフォーラムになりました。今回のフォーラムはホストに民族学者の神埼宣武氏、銀山温泉藤屋女将・藤ジニーさん。
ゲストは歌舞伎俳優 中村富十郎氏、塩川正十朗氏、そして私、浜美枝でした。
中村富十郎氏からは、歌舞伎のなかでの飲酒の演じ方などをご紹介して頂き、塩川さんからは、酒宴の席に出られる機会の多い中で、どのような乾杯、献杯の形があるのか・・・・又神埼さんからは乾杯の歴史などの興味深いお話がありました。
私には全国を旅する中でどのような日本酒とのかかわりがあるのか・・・好きな酒器は?というようなご質問がございました。
そこで、こんな話をさせて頂きました。
日本酒は、私にとってほかのお酒とは一線を画す、特別なものという気がいたします。成人式に初めて飲む日本酒。結婚式の三三九度。家を新築するときに建て前の儀式の前に飲み交わすお酒。日本人の慶事になくてはならないのが、日本酒だと感じます。
と同時に、お神酒とよばれるように、日本酒は聖なるものという意識が私には強くあるんですね。
私は、古民家12軒を譲り受け、その材料を使って作った箱根の家に住んで30年になります。今でこそ、古民家作りは静かなブームになっていますが、当時はそんなノウハウはなく、設計から施工にいたるまで、すべて手探りの家なのです。
私も工事前から箱根の家の近くにアパートを借りて、そこに寝泊りし、とにかくできる限りのことをしました。施工に入る前に、古い柱や梁の一本一本を、自分の手で磨きました。そして、土地の神様である箱根神社のお神酒で一本一本、清めました。
日本酒で清める事で、土地の神様に守っていただけるような気がいたしました。
私は、今朝も箱根の山を約1時間歩いてきたのですが、その道筋にある箱根神社九頭龍神社の分院には、いつもお神酒が置かれています。日本酒が聖なるものであり、聖なる者にささげるものだという思いが、今も脈々と受け継がれているのを感じずにはいられません。
また、私は40年にわたって、日本全国を旅してきたのですが、旅をすると、いつもいろいろな方がお迎えくださって、地元のお酒で乾杯となります。
一期一会の出会いに、そしてその地を訪ねることができたことに感謝して、私も「乾杯」させていただきますが、そのときのお酒はまるで賜りもののような気がいたします。
美味しく場を楽しいものにしてくれるだけでなく、人生の句読点にもなる場に必ず登場し、杯を合わせる日本酒は、私にとっても非常に重要な意味を持つものであると、改めて感じます。
「日本酒で乾杯推進会議趣意書」の中にこのように書かれております。
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“最近のニッポン人には日本が足りない”と多くの心ある日本人は、今日の日本、明日の日本に危惧の念を抱いているのではないでしょうか。
日本が誇りとすべき伝統的な食文化や伝統芸能、伝承していく作法や風習もグローバルスタンダードとか高度情報化社会というものの表面的な形にとらわれて次第に失われていこうとしています。
私たち日本人は集まって食事をするとき乾杯します。「みなさまのご発展とご健勝を祈念して」何に向かって祈るのでしょうか。
神様、仏様を対象とする特別の宗教心ではありません。
我々の人知や人間の力を超えたものすべてに対して謙虚に祈るのではないでしょうか。
「日本酒で乾杯!」という言葉を象徴にし、日本の文化のよいところを広く啓蒙していく活動を進めていくことが今程必要な時はありません。
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私自身、和服をさりげなく着て箱根の我が家で囲炉裏を囲み日本酒で”乾杯!”と言いながら仲間たちと酌み交わす時間は至福のひとときです。