長岡の大花火

戦後70年の今年の長岡花火にはどうしても行きたくて、昨年から計画しておりました。「子どもたちに繋ぐ平和の願い・70年祈り続けたふるさとの花火」とあります。いままで何人かの人から聞いておりました。「長岡の花火は一度は観るべき」と。
長岡生まれ、長岡育ちのノンフィクションライター、温泉エッセイストの山崎まゆみさんの著書「白菊」を読みますます観たくなりました。
1945年8月1日午後10時30分から1時間40分もの間にわたった空襲。市街地の8割が焼け野原と化し1486人の尊い命が失われました。花火が空へ向ける花「白菊」。夜空に白一色のきれいな円を描き静かに消えていく様には涙がこぼれました。
長岡花火は空襲で亡くなった人への慰霊・鎮魂の花火です。一日の蒸し暑い日が終わりに近づき、薄くくれ始めた夜空に向け、女性のアナウンスが響きわたります。「平和への祈りと戦災殉職者への慰霊をこめてお送りします。」


食べていた「花火弁当」とお米の里・長岡のお酒スパークリングワインを飲み終え静かに迎えます。
『打ち上げ、開始でございます』


「ドン、ヒュー、バーン

花火音がゆっくりと、ゆっくりと、静かに鳴った。
花火玉が炸裂する音とともに、白い花弁が飛び出し、白い尾を引く。
空に咲いた一輪の白い花は、ふんわりとしていて、やわらかいで、丸くて、清楚な印象すら残す。
一発目の後、間をあけて、もう一輪の花が咲く。
ドン、ヒュー、バーン。
観客は歓声をあげることはない。胸の前で手を合わせて、まるでじっと見守るように、空を見上げる。」

山崎まゆみ「白菊」より
この「白菊」は伝説の花火師の生涯をたどり、感動の真実にせまるノンフィクションです。
この花火大会は毎年8月2日、3日の2日間開催され、2日間で2万発が咲きます。全国各地からバスを仕立てて見学に訪れ、市内は大混雑になり、車は全く動かなくなります。訪れる人は30万人近くとか。朝から桟敷席を取る人、信濃川の土手沿いに観覧席が用意されるも全くたりません。ビルの屋上や家の屋根、路地に座る人・人・人。


正三尺玉花火は直径90センチメートル、重さ300キロ。巨玉が上空に打ち上げられるのは1日2発、2日間で4発です。そして「ナイアガラ」信濃川に架かる長生橋と大手大橋延長650メートルの花火はナイアガラの滝を再現しています。
復興祈願花火「フェニックス」は平成16年10月23日に発生した中越大震災からの復興への祈りを込めて空高く上がります。
シンセサイザーの曲にのり軽やかに打ち上げられる花火。
そんな長岡花火を「裸の大将」の愛称で知られる放浪の画家・山下清が1950年に「長岡花火」と題して貼り絵で描いています。河川敷に座る人は小さく、そして繊細に描かれています。花火は大きく咲いています。川面に映る花火の色の美しいこと。山下清はどんな思いでこの花火を見たのでしょうか。
慰霊と平和への願いを込めて打ち上げられる花火。
私は1943年11月20日生まれ。下町の亀戸の我が家も空襲で全てを失いました。全国で尊い命が奪われました。戦争はぜったいにあってはなりません。
今回、私はお弁当・送迎バスがある宿に泊まることができました。1年前から計画し、この花火を通し、平和への祈りを捧げることに感謝した花火大会でした。
帰りのバスから漆黒の闇の空に星が輝いていました。

「長岡の大花火」への2件のフィードバック

  1.   浜様
     長岡の花火、実現されて本当に良かったですね。
    「慰霊・鎮魂の花火」とか。沢山の方が亡くなれたのですね。多くの方が打ち上げる花火を見ながら、平和を祈られた事でしょう。
    山崎まゆみさんの「白菊」読んでみたいです。
      連日、戦後70年ということでも有り、戦争に関する記録が放映されています。高校時代の弁論大会で「嵐と雑草」と題して弁論した事がありました。嵐を戦争に例えて。小学生の時に観た「原爆の子」。
     8月6日の午前8時15分、忘れる事の出来ない映画です。
      何と、愚かな事でしょう。1人の命を救う事に頑張れるのに、戦争とう名の元に殺し合う。そして終わる事の無い戦争。 一昨年は、念願叶って、孫、二人を連れて、知覧に行く事が出来ました。  孫達の心に何か残って呉れればと。
     毎朝、亡くなった方達の名前を上げて悼んでいます。 戦争で亡くなった方達、知覧、鹿屋から飛び立って行った若者たち、、原爆、玉砕された方達、魚雷の方,回天の方と、武蔵、大和の方達と、尽きる事が有りません。
     私も1943年生まれで、防空頭巾を被り、母に抱かれている写真が有りますが、全く記憶が無いのです。
     今、こうして過ごせる事は凄い事と実感していますが、どんなに家族の元に帰りたかった多くの方達の事を考えると、決して忘れてはいけない事と思っています。
     連日の戦争の放映に、この憤る気持ちを伝えたく、こんなメールになってしまいました。 お許し下さいませ。 
     暦の上では、今日は「立秋」です。少し涼風を感じました。どうぞ残暑、ご自愛しつつ過ごされますように。
                                     郁代

  2. 郁代さん
     
     今日は暦のうえでは立秋ですね。
    初旬は秋どころか、うだるような暑さで、夏が去るのを
    わすれたのかしら・・・と思うような日が続きますね。
    でも早朝の山歩きをしておりますと、もう風には秋に気配
    がいたします。
     
    長岡花火、生涯忘れることができないほど感動した花火でした。
    ゆかた姿の若い女性たちが、隅田川花火を楽しんでいる映像を
    テレビで観ました。
     
    花火にはそれぞれの想いがこめられておりますね。
     
    8月9日、誰にとっても忘れることのできない日でもあります。
    郁代さんとは同じ年、ということもあり同時代を生きてきた私たち。
    やはり次世代に引き継ぐべき使命がございますね。
     
    山崎まゆみさんの「白菊」ぜひお薦めです。
    「伝説の花火師」の生涯を丹念に取材なさっておられます。
     
    初秋の到来、わずかに感じる秋の気配。
    くれぐれもご無理はなさいませんように。
    御自愛くださいませ。
     
    浜 美枝

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