戦後80年となるこの夏、戦争の時代を振り返り、戦後の歩みを見つめなおそうとする企画が様々なメディアで取り上げられました。ウクライナや中東などの国際情勢が混迷を極める一方、日本を支えるのは戦争を知らない世代に。歴史を語り継いでいく大切さを思わずにはいられません。
8月24日放送の『浜美枝のいつかあなたと』(毎週日曜日 9時30分~10時00分 · 文化放送)でゲストにお迎えしたのは、ジャーナリストで映画監督でもある佐古忠彦さんでした。佐古さんは、『筑紫哲也NEWS23』『Nスタ』などのキャスターを歴任し、このたび、戦後の沖縄を扱った映画『太陽(ティダ)の運命』を制作なさいました(ティダ・はるか昔の沖縄で首長=リーダーを表す言葉)。
沖縄は、私にとっても特別の土地です。柳宗悦氏の民芸運動がきっかけで、日本復帰前から沖縄に行き、やちむんや琉球ガラス、漆器、織物など伝統工芸に魅了されました。中でも花織の美しさと歴史には心打たれました。その復興に尽力し、人間国宝にもなられた故与那嶺貞さんとのおつきあいは、私の心の宝物です。
沖縄に通う中で、戦中戦後の沖縄を、私も肌で知ることとなりました。沖縄戦では県民の4人に1人が亡くなりました。沖縄における全戦没者数は実に20万人を超えています。さらに本土復帰までの、27年間の米軍統治時代には、住民の土地が奪われ、基地が建設され、今もなお日本国内の米軍専用施設の7割が沖縄に集中しています。
キャスターやディレクターとして長年報道の現場に立ち続けてきた佐古さんは、番組内で、情熱的にたくさんのことを語ってくれました。その中で「戦後80年たっても沖縄に米軍基地が集中して存在し続けている。この不条理を支えているのが、日本の民主主義であり、政治の構造。沖縄の置かれた状況を、自分の問題として考えてほしい」という佐古さんの強い思いに触れ、この映画の意味をより深く理解できた気がしています。
『太陽の運命』は、第4代知事・大田昌秀さんと、第7代知事・翁長雄志さんの姿を描くドキュメンタリー映画です。
「沖縄県知事は全国でも特異な存在です。これほど苦悩して、決断を繰り返さなければならない立場は他にないだろうと思います。行政官としての立場と、民意を背負った政治家としての立場、そして国から一方的に強いられる負担、さらにはアメリカや自分自身とも向き合わざるを得ない。筑紫哲也さんは『沖縄に行けば、この日本が見える』といわれていました。政治的立場が正反対で、激しく対立していた太田さん、翁長さんでしたが、次第に言葉も歩みも重なっていく。そのおふたりの姿に、“日本の今“が見えるのではないかと思います」(佐古さん)
「日米地位協定」「米兵少女暴行事件」「普天間基地移設問題~辺野古新基地建設問題」「教科書検定問題」……新聞報道やテレビのニュースで断片的に知っていたことが、映画が進むにつれて、大きな流れとしてくっきりと浮きあがってきます。
地位協定や安保条約などというと、政治やイデオロギーの話だろうと敬遠されがちですが、沖縄のそれはすなわち、ごく身近な、「人としての尊厳を守る」問題であることも伝わってきます。
そしてこの映画で、沖縄の人が大切にしてきた歌を知りました。
若さる時ねー 戦争ぬ世
若さる花ん 咲ちゆーさん
家ん元祖ん 親兄弟ん
艦砲射撃ぬ的になてぃ
着る物 喰ぇー物むる無―らん
スーティーチャー喰でぃ暮らちゃんやー
うんじゅん 我んにん
いゃーん 我んにん
艦砲ぬ喰ぇー残さー
若い時分には戦争ばかり
若い花も咲かずじまい
家屋敷 ご先祖 肉親
艦砲射撃の的になってしまい
衣 食 何もかも失い
ソテツを糧にして暮らしを立てたもの
あなたも わたしも
おまえも おれも
艦砲の食い残し
平和なてぃから 幾年か
子ぬ達ん まぎさなてぃ居しが
射やんらったる 山猪ぬ
我が子思ゆる如に
潮水又とぅ んでぃ思れー
夜ぬ夜ながた眼くふゎゆさ
うんじゅん 我んにん
いゃーん 我んにん
艦砲ぬ喰ぇー残さー
平和の夜を迎え、何年経ただろうか
子らも成長していくと
撃ち損ないの猪が
我が子を案じる如く
(苦い)塩の水は二度との思いで
夜っぴ寝られぬ日もあり・・・
あなたも わたしも
おまえも おれも
艦砲の食い残し
(『艦砲ぬ喰ぇー残さー』より作詞作曲・比嘉恒敏 訳詞・朝比呂志)
沖縄戦では14歳以上の少年、約1780人が鉄血勤皇隊として動員されました。当時沖縄師範学校に進学していた大田知事もそのひとりでした。動員された子どもたちの約半数にあたる890人が戦死。17歳未満の戦死者は567名にも上ります。
知事出馬前に訪れたバーで、太田知事はジュークボックスに10曲連続で、この「艦砲ぬ喰ぇー残さー」を選曲して聞いていたというエピソードには、胸をつかれました。
2015年に招かれた県民大会では、翁長知事はこの歌に包まれつつ、「うちなーんちゅ、うしぇてぃないびらんどー(沖縄の人をないがしろにしてはいけませんよ)」と叫んだというエピソードも印象的でした。
『太陽の運命』は、3月に沖縄で先行公開したのを皮切りに、4月から全国ロードショーがはじまり、今も各地で上映が続いています。私たちの未来を考えるためにも、機会がありましたら、ぜひご覧になってくださいませ。
※佐古さんをお迎えした8月24日放送の『浜美枝のいつかあなたと』(文化放送)は、「ラジコプレミアム」の「タイムフリー30プラン」または「ダブルプラン」でお聞きいただけます。