ポーラ美術館×ひろしま美術館 印象派、記憶への旅

寒暖の差が激しい初春、私の住む箱根は先週はいきなりの真冬日。雪が一日降り続きましたが、それでも日差しが徐々に増してきて、吹き渡る風も穏やかになり、柔らかな風に誘われて一日ポーラ美術館で『印象派、記憶への旅』展を楽しんでまいりました。

今回の展覧会は、絵画を鑑賞する以外にもとても興味深い展示がされています。

「箱根の自然と美術の共生」をコンセプトに、2002年に開館したポーラ美術館は都心から車で約1時間半。強羅から、ひめしゃら林道を通り、木漏れ日坂を抜けたところに建っています。

建物を取り囲むように670m遊歩道が延び、四季折々の景色が楽しめます。私が山暮らしを始めて40年ちかく経ちますが、箱根の風景はもちろんのこと、こうしていくつもの美術館に囲まれて、ふっとその気になったらバスで訪れることができる・・・最大の魅力です。

モネ、ゴッホ、マティス、ピカソ、ルノアール、シスレー、スーラ、ロートレック、ゴーガン・・・などなど。19世紀の画家たちの旅と記憶、都市や水辺の風景に向けられた”画家たちのの視線、風景の印象や移ろいゆく光の変化”などが楽しめます。

ポーラ美術館は3点のゴッホ作品を収蔵していますが、今回私がとても興味深くぜひ知りたい!と思ったのは同館と東海大学との共同でこの3作品について科学調査を行ったのです。

赤外線、紫外線、X線、蛍光X線、透過光写真などを使って、絵画に残された筆跡や制作の痕跡をたどり、「記憶への旅」で作品がもつ記憶をカンヴァスの裏側から読み解いていく、というものです。

ゴッホの『草むら』。ゴッホは耳切り事件の後、アルルの病院に入院し、病院の庭で見たと思われる草花や、草の茂みを色鮮やかに緑、黄色を用いて、強いタッチで描いています。

展覧会では写真でカンヴァスの裏に残った謎のサイン。サインのような文字。そして本来ならば「裏打ち」されているのにこの作品はなされていません。謎!です。そして、今回の調査で、「草むら」の下に緑色の葉がある「黄色い花の野原」のような作品の上に「草むら」を描いたことが分かります。なぜなのでしょうか・・・精神を病んでいたゴッホ。弟テオに作品を送るさい木枠から外して送ったといわれます。その裏側に秘密が隠されているのでしょうか・・・。

37年という短い生涯を終えたフィンセント・ファン・ゴッホ(1853~1890)。

南仏アルルに到着して手掛けた『ヴィゲラ運河にかかるグレーズ橋』は喜びが伝わる作品です。

橋の上の人物、その奥の低木、洗濯女たちの輪郭は赤が使われ明るい陽光に満ちた絵。浮世絵に影響を受けたとされる作品ですが、赤い絵の具などに「水銀」が含まれていることが今回の調査で分かりました。

絶頂期から死の一カ月前に描かれた『アザミの花』。斜光写真から「草むら」などよりかなり厚塗りされているとのこと。こちらも「裏打ち」されておりません。ゴッホがどんな絵の具を使い、どのように描き、そのときの心情を想像し、画家ゴッホを身近に感じ、絵画を楽しむ。

今回の展覧会は見どころがいっぱいありました。変わりゆく街、パリを描いた作品、光の新しい表現、水辺の風景・・・画家たちの「記憶への旅」を体感しながら私も一日の”旅”を経験してまいりました。

この展覧会では一部を除いてフラッシュをたかなければ写真撮影が可です。

残念ですが、ゴッホ、ピカソなどは不可でした。写真で存分に味わってください。でも、できたらこれからの箱根はゴールデンウイーク後位に満開に咲く山桜、そしてコブシ、紫陽花、初夏にま真っ白い大きな帽子のように咲く”やまぼうし”などをご覧になりながら本物の絵画と出逢いにいらしてください。

帰りには間もなく新緑を迎える庭をうららかな陽光を浴びて散策し、家路に着きました。

美術館公式サイト
https://www.polamuseum.or.jp/

映画『記者たち~衝撃と畏怖の真実~』

2001年9月11日のアメリカから送られてきたあの映像に衝撃をうけ、同時テロの後、「イラクが大量破壊兵器を保有している」ことを発表しイラク戦争へと突入する報道を私は当時何も疑わずに画像を見たり、新聞を読んでいました。

当時のブッシュ政権は、テロ組織アル・カーイダの本拠地があるアフガニスタンだけではなくイラクも攻撃し、多くの一般人も巻き添えにしての進攻でした。「大量破壊兵器」は本当にあったのか・・・。

あれから時を経て、今回の映画「記者たち~衝撃と畏怖の真実~」を観ました。ロブ・ライナー監督作品。「スタンド・バイ・ミー」「恋人たちの予感」など娯楽作品の数々を世に送り続けヒットさせてきた監督が、執念で映画化したといわれるこの実話を基に映画化された作品に、正直に言って私はとても大きな衝撃をうけました。

満員の劇場内。第一印象は「よくこのような映画をつくることができたこと」への驚きと米国の民主主義の底力、”真実を伝える覚悟”にまず驚きと畏敬の念をいだきました。

あの戦争は”嘘”だったこと。大手メディアは軒並みこの権力の暴走を止めることなく報道を進めていましたし、私は日本の報道でそうだと思い込んでいましたが、政府のウソを鵜呑みにするなか、中堅新聞社ナイト・リッダーのワシントン支局は、そのニセ情報に疑問を抱き、4人の記者が当時のニュース映像などを交え、米政府が情報を捏造していたこと、大手新聞社が政府の方針を追認していた実態を明らかにしていきます。

封切に来日した監督はインタビューで「政府を批判する内容だけに制作は難航した。撮影数日前に、一部の出資者から降りると言われ、自腹を切って制作した。それでもこの映画を作る価値はあると思った」と語っています。

撮影にあたり出演予定だったワシントン支局長役の俳優が急遽降板したので「どうしようかと思っていたら、妻が『あなたがやればスケジュールもあいているでしょ』のひと言ででやったんだ(笑)とのことですが、俳優でもある監督がいい味だしているのです。

現場には実際モデルになった記者達がほとんど付き合ってくれアドバイスをくれたそうです。骨太の映画ですが、記者同士のかけあいなど楽しくみられます。英語のニュアンスの分からない私は笑うことができないところで、劇場内での笑い。さすが、ロブ・ライナー監督です。

監督はインタビューで『世界は今、大きな岐路に立っている。例えば気候変動、例えば独裁主義の台頭。世界で起っていること、あるいは政治について感じることを表現していきたいと思っている。』

そして『観客に人生の1~2時間を削ってもらって、しかも暗い部屋で作品に関与してもらうわけだから、何か提供しなくてはいけないと思っている。どんな暗い作品でも、ユーモアとのミックスを大切にしているんだよ』との新聞記事を読みますますロブ・ライナー監督のファンになりました。

私たちは”ウソ”を見抜く目をたえず持ち続けなければいけませんよね。”鵜呑み”にしてはいけませんよね!だってそれらを許していたらその”ツケ”は未来の子ども達につながってしまうのですから。

後味のいい、そして深く考えさせられる映画でした。

映画公式サイト
http://reporters-movie.jp/

奇想の系譜展~江戸絵画ミラクルワールド

上野公園は満開に開花した桜を愛でる人々で賑わっておりますが、私がこの展覧会を観にいったのは1週間ほど前。5分咲きでしたが、それでも賑わっておりました。

会場の「東京都美術館」は午後1時でもかなりの人がチケット売り場に並んでいます。「江戸アヴァンギャルド一挙集結!」とあります。美術史家・辻惟雄(1932年~)が1970年に著した「奇想の系譜」。その著作に基づいた江戸時代の「奇想の絵画」展の決定版といわれています。

今もっとも人気のある「伊藤若沖」。そして狩野派きっての知性派といわれる狩野山雪、歌川国芳など8名の作品が一堂に会しました。

いまや超人気の若冲。会場に入ると、いきなり巨大な白象と黒鯨に対面する。お~~と「象と鯨図屏風」に出くわします。のけぞるほどの迫力、ユルキャラのようにデフォルメされた白象、鯨は潮を吹く背中しか見えません。この絵画を観たかったのです。

しかし、これまで美術展に行き、目的の絵画に出会うまでのウォーミングアップが楽しみなのですが、今回はいきなりです。自由で斬新な発想、まさに江戸のアヴァンギャルド!

因襲の殻をやぶり描かれていますが、一方初期の作品「紫陽花双鶏図」は観察しつくした緻密な鶏と紫陽花には若き頃の若冲の才能を感じられます。(米国・ブライスコレクション所蔵)

そして、目的のもう一枚。狩野山雪の「梅花遊禽図襖」(ばいかゆうきんずふすま)は花鳥画と見えますが主役は花でも鳥でもなく、画面中央をもだえるように枝が描かれているのです。

上に伸びようとしている枝が押さえつけられでも、小枝は真っ直ぐに伸び・・・この非現実的な世界に魅了されます。こうして江戸時代に”アヴァンギャルド”が存在し、現代の私たちの目の前に現れてくれる・・・本物に出逢う、体験し、感じ、感動する。もうすぐ終わってしまいますが4月7日までです。

上野公園・東京都美術館にて開催中。
https://www.tobikan.jp/exhibition/2018_kisounokeifu.html

映画『グリーンブック』

2月末に発表された米アカデミー賞で作品賞など3部門を獲得した「グリーンブック」を観てまいりました。

「グリーンブック」とは、黒人が利用できる施設を記した旅行案内本。人種差別が色濃い1960年代の米国を舞台に、白人と黒人の交流をユーモラスに描いています。

人種差別が公然とされていた時代の実話を基に描かれた映画です。主人公は、がさつなイタリア系白人で、過去にニューヨークで用心棒をしていた運転手。そして黒人の天才ピアニスト、ドクタードナルド・シャーリー(マハーシャラ・アリ)は、カーネギーホールの上に住む裕福で教養もある人物。

自分をちやほやしている進歩的な白人の目にさらされていることに疑問を感じ、あえて差別の最も強い南部へ演奏旅行にでます。招かれたどんな豪邸やホールでも、トイレは別、控え室も別という理不尽な扱いも受け入れます。

偏見をテーマにする作品ですが、ファレリー監督は随所にユーモアをちりばめ、ジョークで観客を魅了させます。内面に深い悩みを抱えるシャーリーが、南部を移動中に過酷な農作業をしている同胞を車窓から眺めるシーンは胸が熱くなります。二人は旅を通じて分かり合い、、友情を深めていきます。

監督は来日した時に新聞のインタビューにこう語っています。

「50年ほど前の話だが、現代を生きる我々の心に響く部分があると感じた。残念ながら、今のアメリカは、そこからほとんど変わっていない。その愚かさを見る人に感じてもらいたかった。」

伝えたかったのは『希望』だ。とも。

複雑な内面を持つピアニストを繊細に演じたマハーシャラ・アリは「ムーンライト」に続いて2度のアカデミー賞助演男優賞に輝きました。

1970年代後半、私は南アフリカを旅しました。ケープタウンのテーブルマウンテンにロープウェーで上がっていた時に、下を見ると黒人家族がピクニックに行くのに歩いて山を登っていました。飛行場のトイレも別。乗るバスも別。非常にショックを覚えたのがよみがえりました。たった半世紀前のことなのですね。

そして、今回の映画で、現在はロサンゼルス映画批評家教会会長、米公共ラジオNPRの映画番組解説者のクラウディア・プイグさんは『この作品は「差別の現実」をみていない。いつから人種差別は愉快な話になったのか。実話に基づいているとしても、深刻なテーマにユーモアを見つけようとするのは、無知で浅はかだ。演技力は強いのに、シナリオが単純すぎるし、しばしば不愉快ですらある。(中略)表面的なユーモアを探すあまり、現実にある人種差別を過小評価している。もし、米国に人種をめぐる一触即発の状況がなければ、もっと好意的に受け止められたかもしれない。人種差別は過去のものだという誤った認識をもつ白人に心地よい内容になっている。』とコメントしています。

私にはこうした人種差別やアメリカ社会の深層は正直よくわかりません。(それではいけないのでしょうが)ただ映画を通して、黒人の勇気 白人の敬意・・・旅を通じてわかりあう友情、偏見の愚かさ、など、アメリカ社会の多様性に挑んだ映画人たちのメッセージはしっかりと受け取れました。

映画公式サイト
https://gaga.ne.jp/greenbook/

春の陽光を浴びながら青山界隈の散策

毎月一度は通う美容院の入り口のミモザが満開でした。そしてここは一軒家なのでガラスの窓からは陽光が射し、天井が高いのでのんびり過ごせる私の大切なひとときなのです。

先日、美容院の帰りに辺りを散策し、目的の根津美術館へと向かいました。青山通りからちょっと入っているだけで静かな住宅街。ぶらぶら歩いていたら見つけました!「タイ料理」の小さなお店。

遅いランチでいただいたのがパッタイ(890円)。サイドオーダーで大好きなコリアンダー(100円)をたっぷりのせて。美味しかった!また今度ぜひ行きたいです。

そしてまた歩いていたら何だか木材に覆われた建物。中を覗くと台湾のパイナップル菓子(月餅のような…でもちょっと違うの)屋さん。二階を覗くとカフェのよう。「お茶いただけますか?」と伺うとなんとなんと、ブログに載せていいのかしら~。でも教えたくなります!そこはカフェではなく、その日によってですが無料で台湾のお茶とパイナップル菓子を振舞ってくださいます。

何でもオーナーが台湾でパイナップル畑のオーナーでもあり、お菓子作りもしているとの事。”皆さんに知っていただきたいので”と、店員さん。この建物は、あの東京オリンピックスタジアムの設計も手掛けている隈研吾さんの設計だそうです。

帰りに少しだけお土産にお菓子を買いました。パイナップルがしっかり入っていて美味しかったです。不思議な空間でした。

さて、ぶらぶらウィンドウショッピングをしながら目的地の根津美術館へ。この美術館は展覧会を観た後に四季折々の庭の散策が楽しいのです。国宝7点、重要文化財87点など日本と東洋の古美術約7,400点を収蔵していますから、季節ごとの展示が素晴らしいです。

今回の展覧会は『ほとけをめぐる花の美術』です。

仏教美術に描かれる花に着目した展覧会です。泥の中から伸び、水に触れることなく清らかに咲くハスの花は、”蓮華(れんげ)”と呼ばれ、仏教を象徴する花ですが、沙羅も知られていますよね。今回私が見たかったインドに咲く、脇の下から釈迦が誕生したという”無憂樹”(むゆうじゅ)や、釈迦が悟りを開いた時に敷いていたという”吉祥草”(きちじょうそう)など、それらの花が写真でみられますし、解説がついています。

想像上の花”宝相華”(ほうそうげ)や”宝樹”(ほうじゅ)、日本の聖地に咲く桜など、30数点の仏教絵画に描かれたさまざまな花をみることができます。経箱など工芸品も展示されています。仏をより荘厳に、どのような花が描かれるのか・・・興味深い展覧会でした。

ガンダーラの石仏に惹かれインドを10年近く旅してから半世紀がたちます。こうして青山の真ん中で仏さまにめぐり逢えるなんて幸せ。そしてお庭を散策しました。この頃に吹く西風が、西方浄土から現世に吹く『涅槃西風』というのだそうですね。まだ冷たさが残る風ですが、この涅槃西風が吹き静まると寒さも終わり、春を迎えます。

美容院からタイ料理、台湾のお菓子に、ほとけをめぐる花。幸せな一日でした。根津美術館は表参道から歩いて10分ほどです。3月31日まで。

根津美術館公式サイト
http://www.nezu-muse.or.jp/

映画『あなたは まだ 帰ってこない』

フランス文学を代表する女流作家、マルグリット・デュラス原作の自伝的原作「苦悩」(河出書房新社刊)を見事なまでに映画化された作品。

ナチス占領下のパリで、女たちはそれぞれ愛する人の帰りを待つ。第二次世界大戦時のナチス占領下のパリ。1944年、マルグリット・デュラス(1914~96)が30歳の時の話です。

「愛人ラマン」の翌年70歳でこの「苦悩」を発表しています。「愛人ラマン」は、ゴンクール賞を受賞し、ベストセラーになります。

今回は自身の愛と、その苦しみが戦争の記憶ととともに語られます。1985年刊行された「苦悩」は、デュラス自身が「私の生涯でもっとも重要なものの、一つである」と語っています。

監督はゴダールなどの助監督を務め、その才能は高い評価がされているエマニュエル・フインケル。主演は私の大好きな「海の上のピアニスト」に主演したメラニー・ティエリー。

ドイツ占領下のパリで抵抗運動に身を投じるデュラスと夫。ゲシュタボは夫を逮捕し、手先とデュラスが接触し、アジトを探ります。

この映画は”夫を待ちながら”デュラスは愛人マスコロ(バンジャマン・ピオレ)の理解と協力で手先の誘惑・裏切り・・・など彼女は夫の消息を知りたい、と願います。

複雑な国際政治の流れの中で脱出に失敗した夫を愛人と仲間たちが助けだします。8月パリ解放。瀕死の夫を1年の看病後、「愛人の子どもが欲しい」と、妻は離婚を申し出ます。命がけで助けた夫。画面には夫の海辺で療養している横顔しか登場しません。極限状態においての『愛』。彼女を誘惑する手先の男の『愛』。愛人の『愛』。

作家としてのデュラスの生きる姿に正義感や道徳・・・などといった判断は簡単には当てはまりません。作家の冷徹な目、燃え尽きた愛のなかでは生きていけない女。やはりフランスならではの女の生き方です。(と、言っていいのか・・・)

愛とは歓びなのか、苦しみなのか、あるいは待つことなのか?すべての女性に突き付けられる、愛の葛藤とパンフレットには書かれていました。成熟した大人の映画でした。

渋谷Bunkamura Le Cinemaにて。
https://www.bunkamura.co.jp/cinema/

クマのプーさん展

待ちに待った”クマのプーさん”に逢いに9日の初日、雪情報が出ている中、渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムに行ってまいりました。10時開場でしたがすでに長い列ができておりました。

今回は英国ヴィクトリア・アンドアルバート博物館から、クマのプーさん原画や資料も届き、物語が生まれた背景などがしっかり分かる素晴らしい展覧会です。

以前にもブログで映画のプーさんや、児童文学者の石井桃子展について書きましたが、私は大の”プーさんファン”です。

プーさんは年齢を問わず世界中の人々に90年以上も愛されてきました。私が始めてプーさんに出会ったのは「クマのプーさん・プー横丁にたった家」を図書館で見つけたのが、10代の半ば。

プーさんと仲間のピグレット、ティガー、イーヨ、ラビットにオウル、カンガとルー親子、そしてクリストファー・ロビン。A・Aミルン作、挿絵はJ・Hダウド。石井桃子訳。

ヴィクトリア&アルバート博物館は、シェパードが描いた鉛筆画や270点以上の原画や作品に関する手紙、校正刷りや写真などが寄贈され今回の展覧会となったわけです。

原画寄贈から40年以上を経て初となる企画展。ケンブリッジ大学の図書館からはA・Aミルンの手書き原稿もふくめ、”プーさんファン”にはたまらなく魅力的な展覧会なのです。開場では原画はもちろんそうした資料を間近でじっくり鑑賞している青年や女学生たち・・・私と同世代の方々。

そうなのです。私は石井桃子さんの訳に魅せられ、10代終わりの頃(以前にもブログに載せましたが)ロサンゼルスのディズニーランドで、原画に近い大きな”プーさん”の人形に出逢い、抱えて飛行機で一緒に帰国しました。半世紀以上が経ち、現在は孫の仲間になっています。

なぜ、これほどまでに愛されるのか・・・そこには友情と、他者を受け入れることの大切さを学ぶことができるのです。そして、挿絵の中の森や橋など実存する自然がより身近に感じられるし、ユーモアもあり挿絵と文字が一体となって心をポッと温かにしてくれます。

普通の暮らしから親子の在り方、空想や子供が大切に思っていること、自然が与えてくれる豊かさ・・・全てがこの物語にはあるように思います。だから世界中の人々がこれほど魅了されるのですね。

開場は一部撮影可です。スマホで撮る若者、私はいつも持参しているコンパクトカメラで撮りました。原画の可愛いクマのプーさんを見てください。

シェパードはインクで書く前に鉛筆で登場人物の輪郭をラフスケッチしています。登場人物の動きなど試行錯誤を重ねていることなどが分かります。

4月14日まで開催されていますから、時間があったら覗いてみてください。お薦めです。

なんだか・・・心がじーんときて幸せな気分になりました。

クマのプーさん展 公式サイト
https://wp2019.jp/

映画 『天才作家の妻-40年目の真実ー』

人生の晩年を迎える夫婦の危機を見つめる心理サスペンス。
完璧な”妻”が最後に下した決断とは!?
と新聞に載っていました。

1950年代のニューヨーク、60年代と90年代のコネチカット、さらに90年代のストックホルム。

現代文学の巨匠として名高いジョセフ・キャッスルマン(ジョナサン・プライス)と妻ジョーン(グレン・クローズ)のもとにスエーデンから早朝に電話がはいります。

「今年のノーベル賞はあなたに決りました」と。そして受賞式に出席するため夫婦は息子と一緒にスエーデンのストックホルムへと向かいます。

それまでは完璧な”妻”だった妻ジョーンは・・・この映画は心理サスペンスです。

詳しいストーリーは今回ブログには載せませんが、グレーン・クローズの表情で、目で語る静かではあるが、恐ろしいほどのリアルさでの演技には圧倒されました。

そして夫役のジョナサン・プライスの演技は舞台で培われた経験豊富な実力者らしい演技。40年連れ添った夫婦。60年代のアメリカという時代背景から、この映画を観ていかなければなりません。

妻のジョーンは才能溢れる作家志望の女性でした。しかし、日本同様に男女の社会格差があのアメリカでも現実にはけっして平等ではなかったことに驚きを覚えました。

「よき妻を演じる」「秘密を抱えた夫婦に・・・」さ~どのようなドラマが待ち受けているのでしょうか。どこにでもいる夫婦。誰でもが積み重ねていく日常。それらのヒダを演じる役者の巧みな演技。

監督、シナリオ、共に見事です。そして、この映画の素晴らしいところは「理屈では語れない”愛”が存在していること」「自立とは・・・」と我がこととして考えることができ、観終わった後に深く人生を考えられること、それもポジティブに。

女優・グレン・クローズさんの素晴らしい演技に乾杯!アカデミー賞を受賞してほしい、と思いました。観終わったあとの開放感はまた特別でした。

映画 ボヘミアン・ラプソディ

伝説のバンド「QUEEN」

60年代後半から70年代。私はロックバンドの音楽やコンサートにはあまり行っていないし、聴く曲も何となく”聴いたわ、知っている・・・CMや映画で”程度のまったくの未知の世界でした。

今回映画を「IMAX」で観ました。音響、映像、なによりもワンフレーズを耳にした途端に鳥肌がたつような想いにかられ、吸い込まれていきました。

1970年、ロンドン、複雑な生い立ちや、容姿のコンプレックス、セクシュアリティを抱える若者フレディのスタート。

彼は1991年45歳という若さで他界しています。彼らを演じるのは現在活躍している俳優たちです。

正直に言って映画の中盤からでしょうか・・・なぜか涙が止まらない、バックからハンカチをそっと取り出し目頭をおさえ、エンドロールになってもその感動を抑えることができません。

ヴォーカルのフレディ・マーキュリー。魂が乗り移ったかのようにフレディを演ずるのはエミー賞にも輝いたラミ・マレック。音楽総指揮は、「フレディの意思を守るため」に全てに関わったというQUEENのメンバー、ブライアン・メイとロジャーテイラー。

観衆、人々に寄り添い続けた名曲の数々はこれほどまでに人の心を揺さぶるものなのでしょうか。ひと目で恋に落ちるフレディ。数々のヒット曲を世に放ち、大スターになっていく「QUEEN」そしてそこから生まれるフレディの苦悩の数々。

『これは伝記映画ではなく、純粋なアート』。

家族や人間関係、希望、夢、悲嘆や失望、そして最後には勝利と達成感が誰にとっても共感できるものがたりです、と語っていますし、制作したクラハム・キングは『この映画で私たちがやり遂げたことを誇りに思う』と。

10年近い歳月をかけて制作した彼の思いには尊敬いたします。そして、私はフレディ役を演じたラミ・マレックに拍手喝采!です。彼は語っています。彼の曲に共通するテーマは『愛だね、愛を求め、愛を見つけることへの切実なニーズ。そして、かなわない、その願い』・・・

フレディは大変な日本贔屓で、7回の来日のうち1回はプライベートできて、美術関係に造詣の深いフレディは日本の骨董品もずいぶん買われたようです。

1975年の初来日の羽田国際空港。大勢の日本人女性の歓迎をうけます。私は・・・といえばその頃、羽田空港国際線ターミナルからニューヨークやインドなど、また日本国中の旅の下。

ほんとうに残念です。当時のライブを生で観られなかったことが・・・。映画館にはその「QUEEN」のコンサートやCDなどを楽しんでいらした女性たちや若者も多く、すでに興行収入は100億を超えたとか。

この年齢で知ったロックの魂に触れられた幸せをかみしめながら、近じかもう1回観に行こうと思っています。

松の内

皆さまはどのようにお正月を過ごされたでしょうか。今日から「御用始」。挨拶回りや新年会、という方。まだもう少しゆっくりお休みという方。主婦の方は年末年始はゆっくりできませんね。ご旅行に出かけられた方もおいででしょうね。

「松の内」は関東では元旦から6日または7日まで、関西では14日または15日まで。

『初夢』はごらんになられましたか。元旦の夜から2日の朝にかけて見る夢。「一富士、二鷹、三茄子」は、縁起のよい夢の代表。私はこの古伊万里の大皿で元旦を迎えます。

年にたった一回、お正月の朝だけ、おせち料理の取り皿として使います。一年に一度の出番なんて贅沢のようですが、晴れがましい気持ちになりますし、心のなかでウフッとしてしまうような楽しさがあります。

初夢のめでたいもの尽くしのお皿一枚一枚、家族一人ひとりの前に並べながら、家族の息災と幸せを祈ります。調べてみましたら「一富士二鷹三茄子」の節はいくつかあることがわかりました。ひとつは「不死、貴、成す」つまり日本人お得意の語呂あわせからきているという節。またかつては冬のナスは高価な贅沢品なので、初夢に出てくるのは縁起がよいとされた説など・・・

平成最後の元旦、私は夜明けとともにわが家から歩いて30分ほどの箱根神社に初詣に向かいました。うっすらと茜色に染まった雲、山の稜線、澄んだ空気。元旦の初空は晴ればれとしています。

2019年が、災害のない平和な年になりますように。そして、家族の無病息災を祈願いたしました。

そして2日は箱根駅伝を沿道で観戦。小雪舞う芦ノ湖に選手が次々にゴール。あの山を上ってのゴールです。3日は早朝、まだ月、星の見える時間にスタート地点に行き、応援団の皆さん、「箱根駅伝」のスタッフの皆さん。地元わが町の皆さんのお手伝いする姿、スタート前にインタビューを受ける監督など。富士山の美しい姿も芦ノ湖の向こうに見えてきます。

一年間この日のために頑張ってきた選手、スタッフのみなさん!頑張れ!ゴールするまで応援を続けます。

そして、今日4日は毎年恒例の上野鈴本演芸場に新春の落語を聴きに行きます。お正月ならではの出し物。華やかな寄席です。自称”おっかけ”の小三治師匠もご出演なさいます。トリは柳家三三師匠。

こうして私のお正月は終わり、仕事始めは6日の文化放送「浜美枝のいつかあなたと」がスタートします。新年最初のお客さまは、政治学者の姜 尚中(カン・サンジュン)さんです。

この度、『母の教え 10年後の「悩む力」』をお書きになられました。姜さんは来年(2020年)、古希を迎えられます。これまでの生活をリセットされ軽井沢へと移住されました。

この放送は収録なので、年末にお話は伺いました。ご著書の中に『私は今、極寒の厳しい冬が巡ってくるにしても、「高原好日」の環境のなかにいる。生々しい下界の世界に片足を置きつつ、他方で、高原の緑に身を潜め、世界を揺るがすような出来事をじっと見つめている』・・・お母さまからの教えについてもたっぷり伺いました。放送は2回にわたります。ぜひ、直接、姜さんのお話をお聴きください。

放送は1月6日、13日
文化放送「浜美枝のいつかあなたと」
日曜10時半~11時

今年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。