トラックドライバーにも言わせて

この度豪雨で甚大な被害に見舞われた九州はじめ多くの方々にお見舞い申し上げるとともに亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたします。球磨川流域、筑後川流域、飛騨川流域などでは氾濫が発生し、あの美しい風景が一変してしまいました。何度も訪れた街もございます。これ以上の被害が広がることのないよう祈るばかりです。

その豪雨の中でもトラックは走り続けています。

日本の貨物輸送の9割以上を担うトラックは「国の血液」。そうならば「道路」は「国」という「体」の隅々に張り巡らされた「血管」で「荷物」はその血液が血管を通して運ぶ「栄養」。

こうおっしゃるのは自ら大型自動車一種免許を取得し、11年間ハンドルを握り片道500キロをピストン輸送するなど、トラックドライバーとして活躍し会社経営もなさっていらした、橋本愛喜さんです。

お父様が経営していた工場を、病に倒れたあとに引き継ぎ大型トラックの運転士として活動している中で、あれほど日本の物流を第一線で支える配送ドライバーの現状を世間の人にはあまり知られていない・・・そんな思いで書かれたのが「ドライバーにも言わせて」(新潮新書)です。

大学卒業後はニューヨークへ歌の勉強のために留学する予定を取りやめ工場に入社。その後、10数年してから、工場は閉鎖し、目的だったニューヨーク留学を経験し、現在はフリーのライターとして活躍。労働問題、災害対策、差別など幅広いテーマで執筆しています。

今回の本「ドライバーにも言わせて」は全国のドライバーさんたちが、いかに厳しい環境で働いているかがわかる一冊です。その現状から日本が抱える問題点も明らかになっています。電話ではありましたがラジオでじっくりお話を伺いました。

私も箱根に住んでおりますので、山を上り下りする時にトラックとのお付き合いは多いです。荷物が重くてのノロノロ運転かと思っていたらそれだけではなく、大きくあいた車間は荷崩れをさけるための距離であったり、休憩中にエンジンを切らない理由など等。ドライバーさんが心身ともに疲弊するのは「荷主」とのやりとりだったり。

私たちの日常生活での「宅配」などはもう欠かせませんが「再配達」や「時間指定」などあたり前のように思っているところがありますが、それらは無料で行なわれているにもかかわらず、受取人から数分遅れるだけで「何のための時間指定だ」というクレームもあるそうです。便利になった現在、「おせち」も全国から取り寄せられます。

私たちの家庭に届く「要冷蔵」「要冷凍」の荷物が「冷蔵冷凍庫」と呼ばれるトラックです。休憩時路上でハンドルに足上げ姿は過酷な労働環境の表れで、足や下半身の血流が悪くなり、できた血液の塊(血栓)が肺の血管に詰まる病気で呼吸困難になる場合もあるそうです。

私は橋本さんに伺いました。「なぜ女性トラックドライバー」の数がふえないのですか?」と。やはり女性には過酷なのだそうです。「重い荷物の取り扱い」、「不規則で長い労働時間」、筋肉・体力のある男性のほうが有利になることが多いし、女性には、「結婚・出産」という問題もあります。

いずれにしても、コロナ問題が起きてからはさらにネットショップが普及した現在、多い時で1日200個を超える荷物を扱う中、ドライバーさんの高齢化の問題もあります。

お中元やお歳暮など、他の国にはない「贈り物」の習慣もあると橋本さんは語られます。「トラック野郎」は情に厚く、仲間意識は強く、眠気覚ましに話しに付き合ってくれることもあるとか。それぞれが「過酷な労働環境の中で、自分たちは日本の経済活動には欠かせない仕事をしている」という強い誇りを持って日本各地を走っています。と語られます。

配送の需要が急増した現代社会。私たち消費者はお互いを思いやり、実情を知り、より良い環境が生み出せたらいいですね。
橋本愛喜さんのお話をぜひお聴きください。

文化放送 「浜 美枝の いつかあなたと」
7月19日放送 日曜9時半~10時

ロバート・キャンベルさん

私は美しい日本語でお話しをされるロバート・キャンベルさんのファンです。

先日、新聞に彼の記事が掲載されておりました。
「日本古典と感染症」について語られておりました。
そして国文学研究資料館館長でもあるキャンベルさんが同館公式サイトで動画を配信していることを知りました。

さっそく拝見すると古典には感染症と向き合った長い歴史が刻まれているという。歴史ある膨大な資料に囲まれた書庫の中で、語るキャンベルさんのお話は大変興味深く、これはラジオのゲストにお招きしお話をお伺いしたいと思いました。電話でのご出演でしたが、丁寧にご説明くださいました。

国文学研究資料館館長のロバート・キャンベルさんはニューヨーク生まれ。ハーバード大学大学院 東アジア言語文化学科・博士課程終了後、1985年、九州大学文学部研究生として来日。

近世・近代日本文学が専門で、江戸時代の終わりから明治の前半の漢文学に関連の深い文芸ジャンル、芸術、メディア、思想などに関心を寄せています。

近代医学が発達していなかった江戸時代の人が感染症とどのように向き合っていたのか。お互いを支えあっていたのか。幕末の1858年、コレラが流行しました。「頃痢(ころり)流行記」という書物は木版の多色刷りで、江戸の人はたくさんの人が亡くなって遺体の処理が順番待ちになっている様子を「直視」し、厳しい状況を見据え、お互いを支えあおうとしていたそうです。

そして、戯作者の式亭三馬の「麻疹戯言(ましんきげん)」には笑いで災いを浄化する様子が描かれている。皆んなで書物を通して情報を共有し、不安の中、「自分は一人ではない」という気持になったそうです。

今回のコロナ禍は様々なメディアが情報過多と思えるほど報道が多いように私には思えます。不安にもなります。『お互いを支えあう』ことの大切さを日本古典から学べます。

コロナ収束後の社会について、またもし私たちの子孫が100年後に今回のコロナ禍を調べたり、新たな感染症から立ち上がるために動きだしたら、キャンベルさんはどんな言葉をかけますか?とも伺いました。

私の個人的な気持ですがウイルスも自然の一部です。闘うのではなく自然を畏敬し、共存することを知っていた先人に学ぶことが多いのではないでしょうか。太陽が出たら手を合わせ、しっかり太陽を浴びましょう。

ロバートキャンベルさんの動画は下記です。

放送 文化放送 「浜 美枝のいつかあなたと」
7月12日(日曜) 9時半~10時まで

箱根から失礼します!?

毎週日曜の朝にお伝えしている「浜美枝のいつかあなたと」(文化放送)は、東京・浜松町のスタジオがホームグランドです。私は大きすぎず狭すぎずの、あの空間が大好きです。ゲストの皆さんやいつもご一緒の寺島尚正アナウンサーとの距離感も快適です。

でも先月からは感染症拡大防止のため、私はスタジオを離れ、自宅からの電話出演となりました。やはりこの時期、密閉空間を避けるのは当然のことですね。

番組が始まって20年は経ちますが、初めてのことです。しかし、出演者の方々や寺島アナ、そしてスタッフの頑張りでリスナーの皆様のもとへ毎週、番組をお届けしております。

箱根の自宅からの会話、少し慣れてくると、私にはそれほどの違和感はありません。窓から見える木々や山々。時々、深呼吸をしながらのやり取りを自分なりに楽しんでおります。

寺島さんが以前私に聞いくださったことがありました。

「浜さんは、なぜ箱根に住むことになったのですか?」

「本当に好きだからです!」とお答えしました。

映画にでるようになってしばらくたったころ、時間ができると、無性に一人になりたくなりました。そこで、自動車の運転免許を取って小さな中古車を手にいれました。暇ができれば湘南海岸から山道を駆け上がり、箱根周辺に向ったのです。

私は海派ではなく、山派でしたね。1962年3月に開通した自動車専用道路の「箱根新道」は走りやすく周囲の風景を見ながらの運転は最高でした。

そんなことを繰り返すうちに、街の人たちとも知り合いになり、移住するなら箱根だと思うようになりました。ここには「日時計」はなく、「年時計」はともかく、「季節時計」が動いていると感じるようになりました。長い冬からゆっくりと季節は春に移行します。自然のデリケートな変化は、まさにドラマチックです。

その後、私は結婚し、子供を持ち、彼らを大自然の懐にゆだねたいと思ったのが今から40年も前の事でした。それでも、最初は家の建築も簡単にはいきませんでした。

今でこそ古民家再生の技術が蓄積されていますが、当時は2×4が全盛の頃で、古民家という言葉も一般的ではありませんでした。試行錯誤を重ね、費用の問題もありました。最初の3年は台所も風呂も完成しておらず、プロパンガスの簡易ガス台でご飯を作り、近くの旅館にもらい湯にいったほどでした。「ママ、毎日キャンプみたいだね!」子どもたちと顔を見合わせながら笑ったことも、今では懐かしい思い出です。

そしてこの春、我が家の庭には、コメ桜、モクレン、ツツジ、そしてシャクナゲが満開です。まもなく箱根バラが咲きはじめます。

わが家の屋号は「やまぼうし」。

箱根の山がふんわりとヤマボウシの花で覆われるのは初夏ですが、見事な開花は10年に一度といわれています。「友情」という花言葉を持つヤマボウシ、この夏はどのような姿を見せてくれるのでしょうか。

箱根への私の想いを書かせていただきました。
もうしばらく、在宅生活を続けましょう。

5月24日(日)午前9時30分から、文化放送「浜美枝のいつかあなたと」で箱根のお話をさせていただきます。どうぞお聴きください。箱根の写真は息子が撮ってくれました。

 

老いてこそデジタルを。

『アナログ時代を生きてきたわたしたちシニアが、デジタルのスキルを身につければ鬼に金棒です。』とおっしゃるのは、85歳のプログラマー・若宮正子さんです。

私はどちらかといえば”アナログ”人間です。もちろん携帯電話は一番簡単なスマートフォンです。メールや多少の検索、家族とのやりとりはLINEを使います。でも、とても使いこなしているとはいえません。

家の時計は全て「アナログ時計」です。デジタルの数字でみるのは”美しい”と思えないからです。(もうここで、アナログ人間!)

部屋に飾ってある写真もセピア色をしています。そのほうが”美しい”と思えるから・・・負け惜しみなのかしら。

パソコンも使いますが、原稿を書くとき、メールのやりとり、検索、Facebookもみます。でも、パスワードを入れるのも苦手、アドレスも間違いそう。つい息子に「入れて~」と頼んでしまいます。でも、若宮さんのご本を拝読し考えは変わりました。衝撃です!

若宮さんは、1935年、東京のお生まれ。

東京教育大学付属高等学校を卒業後、三菱銀行に入社。定年をきっかけにパソコンを購入し、楽しさにのめりこみました。シニアにパソコンを教えているうちに、エクセルと手芸を融合した「エクセルアート」を思いつき、これが大好評。

その後、アイフォンのアプリ「hinadan(ひな壇)」を開発し、アメリカ・アップル社が開発する世界開発者会議にも出席なさいました。しかも海外での会議に登壇して英語で講演したりする場合はGoogleコンピュータ翻訳だそうで、日常会話も「ダメなのよ」とか。

Google翻訳には、英語だけでなく、ドイツ語、フランス語、イタリア語、中国語、韓国語など主要な100ヶ国語はほぼ網羅されているとのことです。

最近は若者たちは「スマホ決済」で買い物をしていますよね。私などは「嫌だわ~お財布から現金で払わなければ買った気分になれないわ」などと思っておりますが、近い将来「スマホ決済」でしか買い物が出来なくなるかもしれませんね。

そこで、ここは直接お話をお伺いし『老いてこそデジタルを』の醍醐味をお伺いしたくラジオ番組にゲストとしてお迎えいたしました。

私より8歳年上の若宮さん。背筋を伸ばし、ベリーショートがお似合いで、ご自分が考案したエクセルアートのデザインの素敵な洋服で颯爽とスタジオにお越しになられました。

インターネットに繋がるといいこと、老人クラブは20年前からアクティブに活動していること、危機管理にも役立つこと、注意点、指で操作するのが難しくなったら”声”でサポートしてくれること、など等。

何よりも『ボケ対策にはクリエイティブなことをするのがいちばん』とおっしゃられます。詳しくはラジオをお聴きください。

コロナウイルスの影響で、自宅にいる時間が多くなりました。料理や掃除、読書、そして私もこの一冊で”デジタル”を学んでみようと思います。さあ~て、どうなりますか、理解できるようになるのでしょうか。

文化放送「浜 美枝のいつかあなたと」
日曜日 4月19日
9時30分~10時
※時間が変更になりました。

日々を編んでいく(宝島社)

素敵な暮らしのエッセイをお書きになられた安田成美さんをラジオのゲストにお招きいたしました。爽やかな春の風を感じ、スタジオが華やかな空気に包まれました。とてもチャーミングな笑顔。初めてお目にかかりますが想像していた通りの方でした。

安田さんは1966年、東京生まれ。81年にCMデビューし、アニメ映画「風の谷のナウシカ」イメージソングで歌手デビュー。その後、数々のドラマに映画に出演なさり、94年、とんねるずの木梨憲武さんとご結婚。

女優として、仕事と家庭を両立なさりながら三人のお母さまでもあります。とても自然体です。木梨さんとは映画で知り合って、そうとう「付き合って!」と繰り返し告白されたとか。木梨さんとは「家族であり、仕事のパートナーでもあり、同居人で、仲間で同士」とおっしゃられます。

「長い年月を過ごしてきたので、今は「結婚してよかった」と、特に意識することもないのですが、ふたりの間に築いてきたものがある、という実感は確かなものです。」

「相手のことが大切であれば、それに連なる人も大切。憲武さんをこの世に送り出してくれた両親がいて、ご先祖様がいる。お墓参りも行くし、憲武さんの友達も大切に思う。一緒に幸せになりましょうという気持ちも生まれてきます」と笑顔で語られる成美さんには無理がない自然体なのです。

時間が許すかぎり毎朝二人でお嬢さんを学校に送って行き「私、バスでいくからいいのに!」と言われても二人で朝のドライブがしたいから・・・と。そこにも無理がなくいい年を重ねてきたお二人の姿が垣間見えます。

三人の子育てと仕事の両立の大変さは想像ができます。そしてこうも『やっぱり結局なるようになる』と思えるのです。私はきっと自分の声に耳をすまして、心が動くほうへと、生きていくのだと思います・・・、安田さんのそのお気持ち、よく分かります。私も同じですから。

ご本の中の”憂鬱なとき~私の場合”のページでは
●泳ぐ、ストレッチをする
●車を運転して外に出る
●愚痴らない
●ゆっくり原因探しをする
●贅沢をする(かなり簡単ネイルサロンやヘヤーサロンでヘッドマッサージ)
●思い込みを捨てる
●自分で自分を愛せているか
●今、今、今の連続~この瞬間はどんどん過ぎていきます。だから過去ではなく、未来を思い描きながらも今を生きなきゃと思うんです。今できること、今伝えられることをやっていたい。憂鬱でいるのも今のこの瞬間だけ。2日、3日と続いても、それでも今だけと思っていればいい。今、今、今。いつも私は、単純に、そうして過ごしています。

とおっしゃいます。

”強く、でも朗らかに穏やかに、そしてしなやかに生きよう。”とあります。編み物が大好きな成美さん。人生もひと針、ひと針丁寧に編んでいらっしゃるのでしょうね。心地よい時間をご一緒いたしました。

お知らせです。文化放送「浜 美枝のいつかあなたと」の放送時間が変わります。
日曜日・9時半~10時までです。
1時間スタートが早まりました。

1本目は4月5日
2本目は4月12日
安田成美さんをゲストにお招きいたしました。お楽しみに。


日々を編んでいく(宝島社)

俳優 柄本明さん

以前、観た映画「ある船頭の話」をブログでご紹介いたしましたね。「俳優・柄本明さん」には様々な分野でのご活躍に大変興味深く拝見しておりました。映画や舞台のほか、大河ドラマ、志村けんさんとのコント、その存在感は抜群です。

ご両親が大変な映画好きで、柄本さんは少年時代に西武新宿線に乗って、野方や沼袋の映画館に3本立ての映画をよくご覧になる映画少年だったそうです。

ぜひ、ラジオのリスナーの皆さまにも素顔の素敵な柄本さんをご紹介したくスタジオにお招きいたしました。

チェックのシャツをラフにお召しになり、笑顔でご挨拶くださいました。とても、シャイな方ですね。お互いにマイクを挟んで5分くらいは緊張いたしましたが、映画や芝居の話になると距離はあっという間に(というより柄本さんが合わせてくださいました)近くなりお話を伺えました。

会社員だった柄本さんが1968年、早稲田小劇場「どん底における民俗学的分析」という作品を見て、翌年、会社を辞め、新演劇人グループ「マールイ」に入り、後に劇団「東京乾電池」を旗揚げします。

二人の息子さんが俳優の道に進み、活躍しています。今年4月、長男の祐(たすく)さん、次男の時生(ときお)さんと競演なさった映画「柄本家のゴドー」が公開されました。ベケットの不条理劇「ゴドーを待ちながら」を柄本さんが演出するドキュメンタリーです。

朝日新聞の「語る 人生の贈りもの」は16回の連載インタビュ記事でした。その中で「恥ずかしいですね。どこか親子で恥じをさらしたような。純粋に役者として見ました。書かれたことをやればいいんですよ。書かれているんですから。それをやりなさい。だけど、書かれていることはできないですよ。人が書いたことですから。不自然になる。まず不自然なことをしているって認識からはじまるのですからね。ただ、見ている人がいる前でやるもんだから、心地よく見てもらいたいとか、いいところを見せたいとかなる。そしたら見抜かれますよ。人に見られるというのは、すごい怖いことです。親が見ていて、兄弟がやっているなんて、情けないっちゃ情けないんだけど、しょうがないだよな。」(10月2日の記事から)

ご本人も2000年に石橋蓮司さんとゴドーの舞台に立たれています。

”すごいな~、凄い俳優さんだわ。”と思いました。この映画の演出の素の柄本さんはカッコよかった!自然体で。芝居の本質論も語っています。

志村けんさんとテレビで定期的にコントをなさっておられます。芸者のコント、食堂や電車内で相席になったコントなど、どんなきっかけで、お二人がコントをするようになったのか・・・も伺いました。とにかく面白い!理屈ぬきに。でも、その背景をうかがうと”ナルホド”と納得です。よく”人間観察”をなさっておられます。

そして、俳優は「主役とか脇役とか言いますけど、それはそれぞれ主役でね。その時、その人が必要なわけです。スクリーンに映されるその時、その一瞬は主人公。悲劇というのは喜劇に変換するし、チェーホフの「ワーニャ叔父さん」で最後の場面のソーニャのセリフ、「生きていきましょうよ、長い、はてしないその日を」。笑えるし、泣けるよね。」(朝日新聞10月4日 人生の贈りものより)

ラジオでもたっぷり2回に分けてお話をうかがいました。素晴らしいことばの数々・・・直接、柄本さんの言葉でお聴きください。充実した日でした。

文化放送 浜 美枝のいつかあなたと
日曜日 10時半~11時
11月10日と17日の2回放送

「麺の科学」(講談社) 山田昌治著

皆さまは”麺”というと、どんな麺を想像なさいますか。私たちの食生活には欠かせない麺類。うどん、素麺、蕎麦、パスタ、ラーメンなど、どんな麺類がお好きですか?

私はどれも大好きな麺好きです。これまで深く考えずに食べていた麺類。麺の原料としてもっとも使われている小麦粉と、それ以外の穀物など「麺の科学」を読むとまぁ~知らないことばかり。

このご本を拝読していると山田先生は『食の伝道師』です。山田先生の言葉を借りるなら「麺はもはや文化」ですね。科学的根拠に基づいたお話が書かれております。

山田さんは1953年生まれ。1979年、京都大学大学院・修士課課程終了後、秋田大学鉱山学部・資源科学工学科助手を経て、日清製粉に入社し、パスタなどの食品の研究開発に携わりました。2010年から、工学院大学の教授をお勤めです。

詳しくはラジオのゲストにお招きし、大勢の方にもお話を伺っていただきたいと思いました。

なんでも小麦という植物の起源は中近東の高原の砂漠地帯だそうです。そこに自生していた植物を人類が改良して、ヨーロッパやインド、中国に、さらにアメリカ大陸、オーストラリア広がっていったそうです。

高原の砂漠で進化したために、空気中の水分を吸収しやすい構造があるとのこと。窒素分を貯蔵タンパク質としてため込む。その性質は麺類にした時に弾力的に富むということです。

あたり前のように食べている麺。「こしがあるわね~」とか「喉ごしがいいわね~」とかはいいますが、科学的にみるとなるほど、とガッテンがいきます。そうそう、今年、大流行した「タピオカ」も麺に多く使われているそうですよ。タピオカはカッサバの根茎からえられるデンプンです。それでモチモチ感がでるのですね。

ご本の中には小麦粉・蕎麦粉・米粉・麺を作る粉の科学から、麺の栄養学、そして、科学の力で麺を美味しく食べるコツなどが書かれております。

皆さんは麺を茹でる時に、吹きこぼれてしまう時はどうなさっておられますか。

『うどん、冷や麦・スパゲッティ・日本蕎麦、いずれも沸騰状態を保つことが麺のゆで方の基本です。』と書かれております。でも、難しいですよね、沸騰し泡がどんどん発生し、吹き零れてしまいます。私は”さい水”をします。

ラーメン店などでも見かけますよね。でも家庭の場合とは違うのだそうです。そもそもなぜ吹きこぼれるのか、を教えていただきました。

「麺をゆでていると、麺に含まれるデンプンが溶けだします。その状態で沸騰が始まると、できた気泡がデンプンの膜によって壊れにくくなり、気泡が急激に増えます。気泡のサイズは小さく、それが嵩高くなります。その結果、気泡の体積が急激に増え、鍋の外にあふれるわけです。」

まだまだ科学的なお話は続くのですが、”さし水”ではなく温度調節をコンロでするのがよいとのこと。あとは灰皿!(もちろん新品ので)をひっくり返して鍋の底にいれる。これ、昔はやっていましたよね。灰皿に抵抗がある場合は100円ショップで灰皿に似た形状の吹きこぼれ対策専用グッズが売られているそうです(これはさっそく買いましょう)

お話を伺っておりますと、知らないことばかりです。当たり前に日常麺を茹でておりますが歯ごたえのあるあるうどんの増す方法など・・・スパゲティを茹でる時に、食塩を入れるのは科学的にはどうなのか、など等。たっぷり「麺の科学」を教えていただきました。

ぜひ、番組をお聴きください。
文化放送 10月27日放送
日曜日10時半~11時まで

声のサイエンス(NHK出版新書)

大変興味深い本に出会いました。

皆さんはご自分の声って意識したことはございますか?初めて自分の声を聴いた時、びっくりする人が多いのだそうです。

そうですよね、アナウンサーや私もですが、ラジオへの出演などで、自分の声を聴く機会があります。でも普通は自分の声を聴く機会ってありませんよね。そして、なんと「自分の声を嫌い」と回答した人が80%なのだそうです。

このご本を書かれた方は山崎広子さん。国立音楽大学を卒業後、複数の大学で心理学や音声学を学び、認知心理学をベースに、人間の心身への音声の影響を研究されています。

声には、いろいろな情報が含まれ、身長、体格、顔の骨格、性格、体調など山崎さんは初めて電話で話す人でも、声を聴けばだいたいどんな人なのか、イメージできるそうです。

ご本の中に『あなたの声は社会によって作られている』とあります。考えたこともありません。「生育環境やその人の職歴などがまるで履歴書のようにあらわれます」とあります。

「環境によって作られる民族の声の特性」

ヨーロッパの石造りの住宅の多い地域では、人々の声はおおむね低く深くなり、中東にさしかかると、むき出しの岩や低木が目立ち、現代の中東地域の都会部では高層ビルが林立しているものの庶民の住宅は伝統的に土、藁などで固めた日干しレンガで造られていて体格はヨーロッパの人々に劣りません。しかし、発声は、喉を絞めて砂漠の乾燥した風土、土でできた家で暮すわけですから男女ともに甲高いそうです。

では東に進んだアジアの街では?

特に日本では体格にあわせるように、住居も小さめです。天井は低く木と草(畳)と紙(障子、襖)で作られていて声は響きません。ヨーロッパの人々の声が石によって作られた声に対し、日本人の声は木と紙によって作られた声ということになるそうです。

西洋から東洋に向うほど街がうるさくなる、といわれます。たしかに・・・東洋の街にはさまざまな音が溢れ、澄んだ正確な音が作られないために、ハーモーニーが生まれなかったのですが、中国も韓国も賑やかな音は環境が左右するのですね。現代社会の日本はかつてのような住環境ではありませんが基本的にはベースは一緒です。

山崎さんのご本の中で書かれている部分で特に興味を抱いたのは『国内では異質なものに対する寛容度がどんどん低くなっている』ということ。

『日本人女性の声が異常に高い』とおっしゃいます。そうですね、私もそれを感じることが多々あり、なぜなのかしら・・・と思っておりました。かつては、もっと低い、落ち着きのある声で話していたように思います。

年齢を問わず。身長が低ければ声帯が短いので声が高くなる、しかし、今は背の高い人も声帯の長さに見合わない高音です。

そこで、ラジオのゲストに山崎広子さんをお招きしていろいろお伺いいたしました。

「女性同士でも男性と一緒でも、声の高さはあまり変わりなく、無理に高くしているのでハイテンションに感じます。周波数だと350ヘルツ前後で、これは先進国の女性のなかで信じられない高さです」とおっしゃられます。

「女性の声の高さは「未成熟・身体が小さい・弱い」ことを表します。女性がそのような声を出すのは、男性や社会がそのような女性像を求めていて、女性が無意識にそれに過剰に適合をしようとしているのでしょう。社会進出における男女格差を”ジェンダーギャップ”といいますが、日本は144カ国中114位です。日本女性が異常なほど高い作り声で話すのは、女性が素の自分でいられない社会だということです。そこにジェンダーギャップとの相関関係を感じずにはいられません。」ともおっしゃいます。

そうですね、接客業や営業職などマニアル通りの声ですものね。自分らしい声、個性があってもいいと私は思うのですが・・・。

『本当の自分の姿を出したくないという思いの表れです』ともおっしゃいます。”みんなと一緒”が安心なのでしょうか。

他方では人の声に心揺さぶられることもありますよね。『声』って不思議ですね。まだまだたくさん興味深いお話を伺いました。ぜひラジオをお聴きください。

文化放送 「浜 美枝のいつかあなたと」
放送日 10月13日 日曜日
10時30分~11時まで

井上陽水英訳詩集~ロバートキャンベル

日本文学研究者のロバート・キャンベルさんが歌手の井上揚水さんの歌詞を英訳し『井上陽水 英訳詩集』をお書きになり出版いたしました。

キャンベルさんはハーバード大学大学院・東アジア言語文化学科博士課程終了後、初来日からすでに40年がたつそうです。

最初は1985年、学びたい教授のいる九州大学文学部研究生として来日。江戸時代終わりから明治の前半の漢文学に関連の深いジャンル、芸術、メディア、思想などに感心をよせておられます。

著書も多数だされております。ご承知のように陽水さんの曲は名曲ばかりですけれど、歌詞が独特で、例えば「傘がない」や「いっそセレナーデ」など、どのように英訳されるのか・・・など等、大変興味深く、”なぜ陽水さん”なのか・・・などお聞きしたいことばかりです。

そして、本の陽水さんの詩を文字であらためて読んでみると正直に申せば”分からない!”とかんじる詩、声や歌い方が、ある種の魔力となって歌詞の本質から、私たち遠ざけている気もします。でも、心に響く。

たとえば  「傘がない」

都会では自殺する若者が増えている
今朝来た新聞の片隅に書いていた
だけれども問題は今日の雨 傘がない
行かなくっちゃ 君に逢いに行かなくっちゃ
君の町に行かなくちゃ 雨にぬれ

つめたい雨が今日は心に滲みる
君の事以外はかんがえられなくなる
それは  いい事だろ?

キャンベルさんはこの詩をどう捉え訳しているのでしょうか。

陽水さんとキャンベルさんはお互いに理解し合える仲間、ディスカッションをしながら、ということもあったと本に書かれております。

ぜひ直接お話を伺いたくラジオのゲストにお迎えいたしました。本のこと、ご自身のこと、文学を通しての日本、江戸文学について・・・など。

まず、ロバート・キャンベルさんの美しい日本語に、表現の豊かさに、語彙の豊富さに、人への優しさに魅了され、このブログでキャンベルさんの言葉をお伝えするのは非常に難しいです。

ぜひ、直接お聞きいただきたいです。日本人の私たちが忘れてしまっている「日本語」を私は学ばせていただきましたし、江戸文学をきちんと読みたくなりました。

直接ぜひ彼のことばでお聞きいただきたいのです。

文化放送 日曜日 10時半~11時
「浜 美枝のいつかあなたと」
9月1日・8日と2週にわたり放送いたします。

小説・平場の月

50代の悲しい純愛を描いた「平場の月」は、私が発売と同時に購入し読み始めてまもなく「山本周五郎賞受賞」が決った作品です。

著者は朝倉かすみさん。50歳の青砥健将は、胃の検査で訪れた病院の売店で、中学時代の同級生・須藤葉子と再会します。青砥は中学時代に須藤に告白して振られているのです。お互いに一度は結婚したものの、パートナーと別れ、50歳になって再会した二人。そこから物語ははじまります。

今回、惜しくも直木賞受賞は逃したものの、多くの書評家、読者からも絶賛されています。山本周五郎賞に決った時の記者会見での朝倉さんの言葉が印象深かったです。「とても幸せ。本当に嬉しい」と。山本周五郎賞受賞、納得です。

朝倉さんは1960年、北海道生まれ。2003年、「コマドリさんのこと」で北海道新聞文学賞。2004年、「肝、焼ける」で小説現代新人賞。2009年「田村はまだか」で吉川英治文学新人賞受賞。

その他著書も数多くありますが、短大卒業後は、スーパーで事務をしていたそうです。漱石や鴎外などの面白さに目覚め(20歳のころ)「本を買うための生活」になり40歳を過ぎてからのデビューです。

「平場の月」は女性が大腸がんになり、相手は彼女に寄り添おうとする心情を悲しいほどとてつもなく切ない内容です。丁寧に描かれていて悲しい、とても悲しい大人の純愛です。

このカップルは市井の人。決して豊かとは思えない暮らし。その暮らし方が丁寧に丁寧に描かれているからよけい切なくなるのです。愛おしくなるのです。また文体、文章が「ちょうどよくしあわせ」とか、「だれかに話しておきたかった、感覚。なんだろうね、この告白欲」とか。

50年を生きて来た男と女には、老いた家族や過去もあり、そうした文章のなかには皆、それぞれが抱えている生きる悲しみが綴られています。

どちらかと言えば遅咲きの人。執筆前には派遣バイトを数ヶ月経験し、暮らし向きを肌で感じた・・・とインタビューに答えていらした朝倉さん。

作家としてはもちろんのこと人間”朝倉かすみさん”にどうしてもお逢いしたくラジオのゲストにお迎えいたしました。

想像していた通りの素敵な方。自然体で、優しく、作家として優れているのは当然ですが、私、胸がドキドキしてしまいました。こんなに切ない50代の・・・そうもうけっして若くはない男と女のしずかな純愛を描ける人に憧れてしまいます。

ぜひ、彼女の言葉でラジオをお聴きください。そして、小説「平場の月」をお読みください。スタジオで「齢を重ねるとつい下を向いて歩くようになります。たまには上を向いて、でも太陽は眩しすぎます。月くらいがちょうどいいのですね」と。朝倉さんのこぼれ出る言葉に魅了されました。

文化放送「浜 美枝のいつかあなたと」
日曜 10時半~11時まで
8月4日、11日 2週続けての放送です。