特別展 琉球

待ち焦がれた展覧会に行ってまいりました。「特別展 琉球」。
上野の山には初夏を思わせる日差しが降り注いでいました。

沖縄は先月15日、復帰50年を迎えました。

私が沖縄に、そして沖縄の工藝に魅せられたのは中学時代。図書館で出会った柳宗悦の本がきっかけでした。「民藝紀行」「手仕事の日本」などに引き寄せられたのです。

柳は大正末期に始まった民芸運動の推進者で、”旅の人”でもありました。彼は「民藝の故郷は沖縄にある」と述べています。中国や朝鮮半島の影響を強く受けた沖縄文化に、柔軟で開かれた姿勢を高く評価したのです。

多様性に満ちた文化に触れながら、柳は「すべてのものを琉球の血と肉に変えた工藝」とも表現して、琉球工藝に注目しました。

そうした彼の著作に触れ、私の関心は一気に琉球の工藝へと向かいました。私の”沖縄通い”は復帰の前年からスタートし、既に半世紀を越えました。

今回の展覧会には琉球の芸術・文化、中でも首里城を舞台にした琉球王家代々の宝物などが数多く展示されています。漆器や染織など、それらの高い技術や美意識は、どのように生まれたのか?まるで、歴史絵巻を眺めるような雰囲気の会場でした。  

私が特に楽しみにしていたのは、「国宝・紅型綾袷衣装」でした。胸や肩に鳳凰が舞う、鮮やかな黄色地。腰から裾には、中国の官服に見られる文様の入った紅型です。これは、若い王族が儀式などで用いた衣装でした。

琉球王朝は15世紀から19世紀まで450年続きました。そして、先の大戦も含めて混乱と破壊。琉球の多くの”宝”は散逸し、消滅しました。その中で、明治以降、県外に運び出された文化財も多かったといわれています。

生き残った”宝”を、これからどう守り、伝えていくのか?会場に設けられた最後のコーナーには、”未来へ”というタイトルが付けられていました。

将来を見つめる国宝級の”御玉貫”は、王家で使われた祭祀の道具です。県が音頭を取り、王朝時代からの歴史を紐解きながら復元させた逸品です。新たな文化を育てていく役割がある。そこにも、未来を展望する復帰50年の展覧会にしたいと願う、多くの関係者の熱意が感じられました。

今回の展覧会では、私の出逢いたかった国宝など、撮影可の場所などがあり、ぜひ皆さまにもご覧いただきたいです。

感嘆のため息をつきながら会場を巡っていると、女性客の中で何人もの方が和服を召されていることに気がつきました。この季節にふさわしい一重の琉球紬や久米島絣などが目に入ったのです。 文化、融合、そして伝統。琉球の豊かな風は、上野の山にも確かに届いていました。

特別展公式サイト
https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=2131

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