岩波ホール

岩波ホールは来月7月29日(金)をもって54年の歴史に幕を閉じます。
親しかった友人。
いいえ、永年お世話になった心優しい先生とお別れするような気分です。

スタート以来、半世紀以上のお付き合いをさせていただいたことになります。岩波ホールは私を含め、多くの映画ファンにとって”世界とつながる架け橋”でした。

夢のような日々は、あっという間に過ぎ去りました。世間知らずで生意気盛りだった若い頃、仕事を続けて行く上でも生きていく上でも、私にとって岩波ホールは極めて大きな存在でした。

世界中の質の高い映画、欧米の作品だけではない、アジアに中東に、そして中南米に、大草原の広がるモンゴル。「大地と白い雲」のあの美しい白い雲…。一度は行きたかったブータンの山奥深い村。素晴らしい作品は限りなくあるし、作り出されているのだ、ということを具体例をもって教えられました。

それらを発掘し、紹介したのが岩波ホールでした。

1月22日の朝日新聞には「岩波ホールに行けば必ず心に残る映画に出会うことができた。思い出をありがとう」という読者の投稿がありました。そうですね、私も一緒です。

これまでも、このブログに2回書かせていただきました。そして、4年前の2月に、開館50周年ということで私の担当するラジオ番組に、ホール支配人の岩波律子さんをお招きし、お話しを伺ったことがありました。

その中で岩波さんは映画にたいする情熱を、静かな熱気で話されました。入り口に立ち、「見に来てくださった方々の声を、どれだけ聞くことができるか。そのためには、様々な機会を作り、生の声を知りたい。」

このような映画館を私は他に知りません。  

今回は映画ファンの方々を代表して『54年にわたって、本当にお疲れさまでした。そして、ありがとうございました。』と永年の感謝の気持を伝えたいと思い、番組をご一緒している寺島尚正アナウンサーと神保町のホールへと足を運びました。

神保町の地下鉄の駅から直結でエレベーターに乗り10階まで。胸をワクワクさせながら、この半世紀何十回通ったことでしょうか。先日ラジオ番組でやはり生でお話し伺いたいと岩波ホールをお訪ねしたのです。  

岩波律子さんのお話しはラジオでじっくりお聴きください。さまざまな作品のお話しも伺い、私は胸が熱くなりました。だって、『私の青春』だったのですから。 ただ、岩波さんは『いったん閉じるけれど、また新しい動きが出てきてくれれば、と若い子に期待しています。』(2月27日の朝日新聞)と語っておられます。  

現在上映中の作品は、「歩いて見た世界 ブルース・チャトウインの足跡」です。英国の紀行作家だったチャトウインの生涯を描いたドキュメンタリー映画。

美術品の収集家だった彼は、考古学の研究者でもあり、パタゴニアやオーストラリアを歩き回ったノマディズム(放浪)の信望者でもありました。その彼の思想と行動を自らの足で辿ったのがドイツのベルナー・ヘルツオーク監督でナレーションも担当しました。

30年前にわずか48歳で亡くなったチャトウイン。岩波ホールの幕を静かに下ろすのにはふさわしい映画かもしれません。近々私も見にまいります。  

さよならではなく、いつかまたどこかで同じ時間と空間を持ち、同じ匂いをかいでみたいと夢みるのです。  

文化放送 「浜美枝のいつかあなたと」
6月12日 放送 日曜日 午前9時半から10時まで  

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