「明日への祈り展」ラリックと戦禍の時代

ルネ・ラリック(1860-1945)が生きた20世紀は、世界が大きく揺れ動いた時代でした。1914年に世界大戦が、1939年には第二次世界大戦が勃発し、多くの命が奪われました。

大戦中は作品を制作することは叶いませんでした。そのような戦禍の中でラリックは国会からの要望で、兵士や戦争孤児、そして当時流行していた感染症・結核を患った人びとの生活向上のため、チャリティーイベント用のブローチやメダルを制作し、売り上げが困窮者へ寄付されたそうです。

『芸術で人びとの心を豊かにしたい』というラリックの願いが込められています。今回の展覧会は「箱根ラリック美術館」 で3月19日~11月27日まで開催されています。

フランスの苦難の歴史と戦争で傷ついた人びとのため、ラリックが制作した作品の数々が展示されています。

テーマは ”祈り”です。

コロナウイルスの収束がみえないなか、ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始してから2か月がたちます。21世紀を生きる私たちも、何かに祈り、明日への希望を見出し、傷ついた人びとの心にそっと寄り添ったラリックの作品を見ながら ”祈り”を捧げたいと思います。

私は、ルネ・ラリックの作品がとても好きです。なかでもグラスはどれも造形的に美しく、思わず手にとってしまいたくなります。

ルネ・ラリックは当初、アール・ヌーヴォーを代表する宝飾品の作家として名声を博していました。豪華なダイヤモンドやルビーではなく、エナメル(七宝)細工や金といった身近な素材を使い、花や昆虫など身近なモチーフに、軽やかで繊細なアクセサリーをつぎつぎに発表しました。

彼の作品は、それまでの宝飾界の常識を打ち破る斬新さに満ちていました。パリジェンヌたちは熱狂し、世界中の美術館や蒐集家は、彼の作品を争って買い求めたといわれます。あの、名大統領といわれるジスカールデスタン元大統領は、いつもラリックのアネモネシリーズをギフトに選んでいたというのも、よく知られたエピソードです。

ルネ・ラリックの”祈り”が世界中の人びとに届きますように。

箱根ラリック美術館公式サイト
https://www.lalique-museum.com/museum/event/index.html

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