印象派・光の系譜

モネ、ルノアール、ゴッホ・・・70点近い印象派の名画が並んでいる!そんな夢のような展覧会は、あまり聞いたことがありませんでした。

取るものもとりあえず、東京・丸の内の会場に足を運びました。三菱一号館美術館でした。

入場者は体温を測り、手指を消毒し、静かに場内に吸い込まれていきました。

印象派・光の系譜」と名付けられた今回の展覧会は、20人を超える印象派の画家の作品が集められ、それらはすべてイスラエル博物館所蔵のものでした。

エルサレムにあるこの博物館は、50万点もの膨大な文化財を保有する、世界でも有数の博物館といわれています。

建国後、僅か10数年しか経っていないイスラエルが国の威信をかけ、そして世界中の同胞の支援を受けて1965年に開館したのですね。

会場にはルノアールやセザンヌ、ゴッホの作品はもちろん、モネの傑作”睡蓮の池”が、さりげなく飾られていました。そんな中で、私が思わず立ち止まり、動けなくなってしまった一隅がありました。

ゴーガンが描いた”ウパウパ”(炎の踊り)です。

彼が最後までこだわったのは大都会のパリではなく、南太平洋の島・タヒチの人々と自然でした。先住民が大切にしてきた文化。

それに対する理解と共感を持ち続けたゴーガンは、炎の横で踊り続ける島民の姿を目に焼きつけ、それをカンバスによみがえらせたのです。

古来からのポリネシアの日常を想起させるようなこの光景こそが想い描いてきた”理想郷”だったのでしょう。
当時のタヒチはフランスの植民地でした。そしてフランスは、官能的すぎるという理由でこの踊りの禁止令をだしたのです。

伝統文化を手放せない島民は、隠れて踊ったのですね。この作品が描かれたのは、1891年、日本では明治24年のことでした。

近代文明から距離を置きたいと望んだ島の人々。ゴーガンは当時のタヒチの社会に、ごく自然に同化することができた、いや、同化したかったのだと思います。

それは南太平洋の島々に特有の、湿度と肌のぬくもりをゴーガン自身が何よりも求めていたからだろうと、勝手に推測しました。

「印象派の作品の中心的な要素は、水の反射と光の動きだ」、という解説にうなずきながらも、”炎の踊り”をたまらなく気に入ってしまう自分に驚き、そして嬉しくなってしまうのでした。

”見る人の心を解放してくれる絵画”。やはりゴーガンは素敵でした。

もう一度、足を運びます。来年の1月16日まで、直接お会いできるのですから。

通常、展覧会でのカメラの使用は認められていませんが、最近は”一部撮影可”というケースも増えてきました。この展覧会の雰囲気を少しだけ、ご紹介させていただきます。

展覧会公式サイト
https://mimt.jp/israel/

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