アカデミー賞

アメリカ映画界最大のイベント、アカデミー賞の発表と受賞式が先日、開かれました。私は毎年楽しみにしていますが、今回はいつも以上にワクワクした気分を抑えられませんでした。先月、このブログでも2回にわたってご紹介した作品の前評判が、とても良かったからです。

ノマドランド」は、一人でキャンピングカー生活を続ける60代の女性が主人公です。演じたのはフランシス・マクドーマンドさん。彼女はこの作品で、3度目の「主演女優賞」を獲得しました。

監督は北京生まれの中国人、クロエ・ジャオさん。ジャオさんには「監督賞」が贈られましたが、非白人の女性が「監督賞」を受けるのはアカデミー史上、初めてのことです。そして「ノマドランド」はアカデミー全体の最高賞とも言える「作品賞」に輝き、文字通り”トリプル受賞”となったのです。

もう一つの映画は「ミナリ」でした。農業で一旗揚げようと韓国からアメリカに移住した一家の、苦労と助け合いを描いた物語です。

「ミナリ」とは韓国語で食物の芹(セリ)のことですが、親が苦労を重ねて子や孫に成果を手渡す、という意味もあるそうです。ギクシャクしながらも家族の絆や世代間のつながりを探し続ける中で、お婆ちゃんと孫の心の触れ合いが、演技とは思えないほど自然に描かれていました。

お婆ちゃんを演じたのはユン・ヨジョンさん。彼女はこの映画で「助演女優賞」を獲得しましたが、韓国人俳優としては男女を通じて初めてのことです。

こうした動きを受けて、翌日からマスコミ報道は当然、アジアの映画人の活躍にスポットが当てられました。アカデミー賞はこれまでの白人優位から多様性の重視へ大きく舵を切り始めている、というものです。

私もそう感じると同時に、女性達の豊かな才能がスクリーンに溢れ出ている光景にも目を奪われました。ジャオ監督やヨジョンお婆ちゃん。彼女たちは人種や国家や文化などの壁を前にして、私たちに問いかけているようです。「そんなもの、何とか乗り越えましょうよ!」と。

受賞式の会場は例年と異なり、ロサンゼルス市内の鉄道駅に設置されました。関係者はコロナの感染拡大防止に最大限の注意を払いながら、「映画文化は決して不要不急のものではない。必要不可欠なのだ!」と訴えたかったのかもしれません。

主演女優賞を獲得したマクドーマンドさんの受賞挨拶は、いつまでも記憶に残ることでしょう。

「この映画を大きなスクリーンで見てください。肩と肩を寄せ合って!」

映画への限りない愛と、コロナ収束への強い決意に満ち溢れていました。

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