太陽のテノール

31年ぶりの再会でした。今まであまり知られていなかった彼の魅力の原点を、改めて感じ取ることができました。”神の声”持つ天才テノール歌手、ルチアーノ・パヴァロッティ。彼の心の奥底は、プライベートな領域にまで入り込んだ映像と最先端の音響技術とによって十分、伝わってきました。

「パヴァロッティ 太陽のテノール」

これは全編、ドキュメンタリー映画です。パン職人の家庭に生まれたパヴァロッティは、父親の希望で小学校の先生になりました。しかし、母親に「あなたの歌は心に響くのよ」と励まされ、音楽の道を歩み始めます。

まだ世に出る前の彼は、「あの声に恋しない人なんている?」という女性と家庭を持ち、3人の娘にも恵まれて、オペラ界の頂点を目指すのです。周囲の人々を引き付ける天性の明るさは、類まれな美声を世界中に広げる上で、とても大きな役割を果たしたことでしょう。

彼は一歩一歩、成功の階段を登っていきますが、金銭だけでは計れない、音楽と自身の社会的な責任にも心を向けるようになります。

イギリスのダイアナ妃と公演で知り合い、二人は親友となります。それをきっかけに、パヴァロティは世界各地で慈善運動に奔走します。

そして、これからのオペラの世界をどのように切り開いていくのか?パヴァロッティはロック界のスーパースター、U2のボノとのコンサートを実現させました。オペラ界からは当然のように猛烈な逆風が吹きましたが、彼は全くブレませんでした。チャリティー活動もロックとのコラボも、彼が広く世界に目を向けたいと願う、アリア(独唱曲)からの新たな旅立ちだったのですね。

こうした貴重なシーンが、スクリーンには絶え間なく登場します。プライベートな映像の多くは”ホームビデオ”で、撮影者は再婚した妻でした。20人を超える家族や友人たちへの貴重なインタビューは、まばたきすら許さないほど、リアリティーに満ちていました。

そして、パヴァロッティの驚くべき美声をあるがままに伝えた音楽技術の匠。それらをまとめ切ったロン・ハワード監督には、ただ感謝のブラボー!のみでした。

満面の笑みをたたえたステージのパヴァロッティさんにお会いしたのは1989年、東京ドームでしたね。もう、31年も前になります。

そして、今から13年前、僅か71歳で私たちの前から突然、姿を消されました。抱えきれないほどの生きる幸せを与えてくださった人生のアーティスト、パヴァロッティさん。

いつまでも、いつまでも、夢のようなあなたの歌声を聴き続けます。

映画公式サイト
https://gaga.ne.jp/pavarotti/

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