”夏の終わり”に思うこと

とても素敵な映画に出会いました。

主人公は凛とした気高い女性。彼女は映画俳優で、今はゆったりと静かな日々を送っています。彼女がどうしても済ませたかった夏の終わりの”宿題”。それは、家族や友人たちに集まってもらい、自分の大切な思いを伝えることでした。

夫、元夫と息子、そして、仕事上の親友とその恋人。次々に登場する顔ぶれは実に多彩で、彼女にとっては皆、”肉親”なのです。

彼らと改めてふれあい、それぞれ悩みを抱える心に少しでも寄り添い、自分の夢と希望を手渡していきたい。そんな一日だけの舞台として彼女が選んだのは、ポルトガルの避暑地、シントラでした。

首都・リスボンの郊外にひっそりと佇むシントラ。ユーラシア大陸の西の果て、大西洋が眼の前に広がる古い歴史の街では、緑豊かな森が人々を包み込んでいます。世界遺産にも登録されたこの美しい街は、物語の展開になくてはならない、もう一つの”主人公”でもあるのです。

今回の映画は、「ポルトガル、夏の終わり」でした。

主人公の女性を演じるのはフランスのイザベル・ユペール。これまで、「カンヌ」、「ベネチア」、「ベルリン」の国際映画祭で受賞を重ねた実力派です。そして監督はアメリカのアイラ・サックス。彼は女性の微妙な心のひだを実に繊細に映像化しています。共演者もアメリカ、ベルギー、イギリス、アイルランド、フランスなど、各国から集まりました。

主人公が家族や仲間たちに伝えたかった思いとは何だったのでしょうか?

森の中を一人ゆっくりと歩む彼女の衣装は実に意思的です。パープルのスカーフとスカート、そしてブルーのジャケット。周囲の緑に吸い込まれそうな色彩が、最後まで背筋を伸ばして存在を主張しています。

来し方行く末へのさまざまな思いを受け止めながら、自分の足跡を見つめ直し、できれば、仲間たちがそれを受け継いでいってほしい。病の存在を知らされた主人公は、気丈さと優しさを込めて舞台にたったのです。

この映画のエンディングは、おそらく忘れられないでしょう。主人公と仲間たち全員が、大西洋を見下ろすシントラの山頂に登ります。大陸の果ては海の始まり、頂の大舞台に並んだ彼らへのカーテンコールは、繰り返し打ち寄せる大西洋の波でした。

それは、いつまでも命をつないでいくことへの、大自然の限りない賛歌でもありました。その時、主人公は目の覚めるようなオレンジ色のスカートを身に着けていました。

まだ見ぬシントラ。是非行ってみたいと心から願った、今年の夏の終わりでした。

映画公式サイト
https://gaga.ne.jp/portugal/

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