印象派からその先へ

仕事を終えて帰りに男性だったら、”ちょっと、一杯!”と居酒屋さんへ、いいですね~。女性も軽くワインを飲んで帰る方も見かけます。

私も一日東京で仕事を終えて新幹線に乗る前に軽く一杯!ということもありますが、私の寄り道のなかには”美術館”があります。「あ~疲れた、ちょっと寄り道」でちょくちょく伺うのが東京駅に近い、丸の内にある三菱一号館美術館です。

ビジネス街のオアシスです。明治期のオフィスビルが復元されているため、展示室が小さく、作品をより身近に感じられますし、その日のコンディションで、椅子に座り一枚の絵をじっくり眺められ、絵と向き合えます。

今回の企画展は『吉野石膏コレクション展』です。ポスターの横にはたて文字で  「やさしくなれます」と書かれています。

ルノアール、モネ、シャガール、ゴッホ、コロー、ミレー、クールベなど19世紀フランスの絵画の数々。画家の人生、作品の背後にある歴史や社会に想いを馳せながらの鑑賞は至福のときです。

でも今回はちょっと疲れ気味で全てを見て回るほどの体力がなく、しかし・・・一枚の絵の前で釘づけになりました。始めて観る実物。フィンセント・ファン・ゴッホの『雪原で薪を運ぶ人々』。

「馬鈴薯を食べる人々」に魅せられ10代だった私。人生を大きく変える一枚でした。冬枯れの景色に薪を運ぶ農民一家。背後には赤々とした夕日が描かれています。ゴッホにとって太陽は、教会などの宗教的モチーフといわれますが、オランダ時代の作品では珍しいとのこと。

雪の上をもくもくと歩く農民。でも空の色は温かみのあるグレー。過酷な労働のように見えても、そこに”働く歓び”も感じます。”やさしくなれます”ってこういう気持なのね~、とつぶやく私。

そして、シャガールの部屋へ。1887年、白ロシア共和国(現ベラルーシ共和国)に生まれ郷土色豊かな東方ユダヤ文化の中で育ちます。1910年にモンパルナスに集う芸術家たちとの交流、運命的に出逢った伴侶べラ。作品の数々に登場します。

バイオリン弾き、恋人たちと花束。天使と恋人たち、翼のある馬、そして、最晩年(92歳)の時の作、「グランド・パレード」。美術館の小部屋で作品に囲まれているうちに、シャガールの歩んできた激動の道のり、ロシア革命、第二次世界大戦、アメリカへの亡命など、その絵からは葛藤や苦しみが微塵も感じられず、詩的で美しく、あくまでも優しさに包まれています。生きていくうえでの愛情と喜び・・・92歳にしての瑞々しさ。

身も心も空になり心の泡立ちを感じていた私に、シャガールは温かな手を差伸べ抱きしめてくれているようでした。ひとりの時間、ひとりの空間。その空間に身を置くだけで肩の力が抜けていきます。一枚の絵との出逢い。

そして、美術館に併設されているカフェでワインを一杯いただき帰路につきました。

三菱一号館美術館公式サイト
https://mimt.jp/ygc/

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