声のサイエンス(NHK出版新書)

大変興味深い本に出会いました。

皆さんはご自分の声って意識したことはございますか?初めて自分の声を聴いた時、びっくりする人が多いのだそうです。

そうですよね、アナウンサーや私もですが、ラジオへの出演などで、自分の声を聴く機会があります。でも普通は自分の声を聴く機会ってありませんよね。そして、なんと「自分の声を嫌い」と回答した人が80%なのだそうです。

このご本を書かれた方は山崎広子さん。国立音楽大学を卒業後、複数の大学で心理学や音声学を学び、認知心理学をベースに、人間の心身への音声の影響を研究されています。

声には、いろいろな情報が含まれ、身長、体格、顔の骨格、性格、体調など山崎さんは初めて電話で話す人でも、声を聴けばだいたいどんな人なのか、イメージできるそうです。

ご本の中に『あなたの声は社会によって作られている』とあります。考えたこともありません。「生育環境やその人の職歴などがまるで履歴書のようにあらわれます」とあります。

「環境によって作られる民族の声の特性」

ヨーロッパの石造りの住宅の多い地域では、人々の声はおおむね低く深くなり、中東にさしかかると、むき出しの岩や低木が目立ち、現代の中東地域の都会部では高層ビルが林立しているものの庶民の住宅は伝統的に土、藁などで固めた日干しレンガで造られていて体格はヨーロッパの人々に劣りません。しかし、発声は、喉を絞めて砂漠の乾燥した風土、土でできた家で暮すわけですから男女ともに甲高いそうです。

では東に進んだアジアの街では?

特に日本では体格にあわせるように、住居も小さめです。天井は低く木と草(畳)と紙(障子、襖)で作られていて声は響きません。ヨーロッパの人々の声が石によって作られた声に対し、日本人の声は木と紙によって作られた声ということになるそうです。

西洋から東洋に向うほど街がうるさくなる、といわれます。たしかに・・・東洋の街にはさまざまな音が溢れ、澄んだ正確な音が作られないために、ハーモーニーが生まれなかったのですが、中国も韓国も賑やかな音は環境が左右するのですね。現代社会の日本はかつてのような住環境ではありませんが基本的にはベースは一緒です。

山崎さんのご本の中で書かれている部分で特に興味を抱いたのは『国内では異質なものに対する寛容度がどんどん低くなっている』ということ。

『日本人女性の声が異常に高い』とおっしゃいます。そうですね、私もそれを感じることが多々あり、なぜなのかしら・・・と思っておりました。かつては、もっと低い、落ち着きのある声で話していたように思います。

年齢を問わず。身長が低ければ声帯が短いので声が高くなる、しかし、今は背の高い人も声帯の長さに見合わない高音です。

そこで、ラジオのゲストに山崎広子さんをお招きしていろいろお伺いいたしました。

「女性同士でも男性と一緒でも、声の高さはあまり変わりなく、無理に高くしているのでハイテンションに感じます。周波数だと350ヘルツ前後で、これは先進国の女性のなかで信じられない高さです」とおっしゃられます。

「女性の声の高さは「未成熟・身体が小さい・弱い」ことを表します。女性がそのような声を出すのは、男性や社会がそのような女性像を求めていて、女性が無意識にそれに過剰に適合をしようとしているのでしょう。社会進出における男女格差を”ジェンダーギャップ”といいますが、日本は144カ国中114位です。日本女性が異常なほど高い作り声で話すのは、女性が素の自分でいられない社会だということです。そこにジェンダーギャップとの相関関係を感じずにはいられません。」ともおっしゃいます。

そうですね、接客業や営業職などマニアル通りの声ですものね。自分らしい声、個性があってもいいと私は思うのですが・・・。

『本当の自分の姿を出したくないという思いの表れです』ともおっしゃいます。”みんなと一緒”が安心なのでしょうか。

他方では人の声に心揺さぶられることもありますよね。『声』って不思議ですね。まだまだたくさん興味深いお話を伺いました。ぜひラジオをお聴きください。

文化放送 「浜 美枝のいつかあなたと」
放送日 10月13日 日曜日
10時30分~11時まで

「声のサイエンス(NHK出版新書)」への2件のフィードバック

  1. 興味深いご本をご紹介頂きありがとうございました。
    声の高さはいつも気になっていたいたことの一つです。
    以前言語によって自分の声の高さが変わる事を感じたことがあります。特にスペイン語で話すと声が低くなります。アラビヤ語もです。そしてそこから生まれてくる文化があるように感じます。

    別件ですが、お写真の浜様のニット、10月の展覧会の石井先生のニットですね!先生のニットは夢があってとても素敵です。

    1. Neferさん投稿ありがとうございました。
      ”言語”によって声の高さがちがうのですか。
      知りませんでした。
      でも、確かに日本人の女性の
      声は(特に若い人の場合)高いですね。
      今回の本では知らないことばかりでした。

      それから石井先生のニット、よくご存知ですね。
      そうなのです。
      わが家の”やまぼうし”で4日から展覧会がございます。
      先生のニットを着るとなんだかラブリーな気持になれます。

      浜美枝

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