いい人みつけた

先日、目黒のホールに柳家小三治師匠の独演会を聴きにいってまいりました。この十数年師匠の”おっかけ”に夢中です。でも中々チケットが取れず・・・でも今回は2階の後ろの席でしたがラッキーにも入手できました!

双眼鏡を持参し、師匠の細やかな表情、しぐさなど落語は聴くだけでなく観るもの、と実感いたしました。おしゃべりとしぐさだけで、舞台の上にドラマが生まれ、また師匠の”まくら”は最高です。

何度かお仕事で対談はさせて頂きましたが、ふっと35年ほど前のTBS(東京放送)のラジオ番組でのお話を思い浮かべました。私が40歳になった時にスタートした番組です。

毎日、月~金の10分番組を13年つとめさせていただきました。当時の番組を「浜美枝のいい人みつけた」で本にし、師匠のページをめくりました。よみがえりました。35年前が。

そうそう・・・スタジオに現れた師匠の格好!ヘルメットをかぶってオートバイで。あの格好をみたら何とお呼びしていいものか分からなくなりました。「なんとお呼びしたらいいかしら」「小三治です。大三治はお断りしています(笑)」と。落語家とバイクはちょっと結びつきませんでした。師匠、いいお話を沢山して下さっているのです。

”力入れすぎちゃうとうまくいかない。落語もオートバイもゴルフも”と。私のそのときの印象は「悠悠マイペースで独自の噺の世界をいく少年の心を持った人」という印象でした。

噺家らしからぬ噺家っていっても、私たちファンはとうに35年前から小三治さんの個性、そのらしからぬというところに魅かれているのです。噺家ひとりひとりの芸、それを生み出す噺家の人生とか生活とか感性とかは、みんな違います。

人間国宝・柳家小三治師匠。
まもなく80歳になられるそうです。私、やっぱり”追っかけ”はやめられません。

本の中からお二人の方をご紹介いたします。

淡谷のり子さん

スタジオに入っていらしたら、すごくいい香りがしたんです。「黒水仙が好きなんです」と。音大出て、世の中にでました。クラッシックやってましたけど、レコーディングすることになって、もちろん流行歌ですが・・レコード会社で少しまとまったお金をいただいたので、まず買ったのが香水なの、あ、そうそうあと帽子。54年間歌い続け壁にはぶつからなかった、悩まなかった。もし、壁があるならば戦時中ですね。警察と軍隊にずいぶん始末書を書いたりいろいろありました。ほら、おしゃれしちゃいけない、モンペはけとか、いろいろね。そんなみっともない格好してステージ出られませんから。ちゃんとイブニングドレスで、最後まで。何を言われても。非国民だとか言われましたよ、ずいぶん。

”クラッシックをもう一ぺん勉強したい。それが私の夢なの・・・”と。ちょうど『生きること』。という本を出されたときでした。生きることはそれを愛すること。愛されるということよりも、愛することって幸せじゃないかと思うんです。とも。歌って歌って歌いぬいてなお学びたいという意欲に脱帽!

女性としての大先輩、淡谷のり子さんに大敬服するとともに、その美しさへのひたむきな努力と歌にかける情熱のかけらを、私なりに頂戴したいなと当時思いました。コンサートで淡谷さんが歌い終わった瞬間、怒涛のように拍手がわきおこり、拍手するその手で涙をぬぐっている人が大勢いました。もちろん私も。

安野光雅さん

”こどものときに虹を見たんです。津和野の虹。それが私を絵描きにしたのかもしれません”と。

安野さんの絵本は単純に「絵」だけの世界ではなく、「考えさせる」力を持っているような気がして・・・作家の原点はこどもの頃の津和野ですか?と伺うと「小さな頃の思い出という思い出を全部集めてね、たぐり寄せた結果、どうも子どものときに虹を見たときの思い出が、一番最初だった気もします。四つか五つの頃の。津和野という所は盆地ですから、周りじゅう全部山、山、山。ですから、山の向こうはどうなっているんだろうと強く思いますね。山に囲まれて育った人間でないと、ちょっと分からないかもしれない。山に囲まれていることは、ほんとに限りなく山のかなたへの夢をふくらましてくれるものなんです。気持ちは盆地の中になく、外へ外へと行くような気がするんです。」と。

「子どものときに見たもの、驚いたものを、大人は摘んじゃいけないね。あ、いけません。子どもの好奇心ほど強いものはありません。絵描きさんと思うとそうではなくて、偉大な科学者か哲学者か、はたまた天文学者、数学者かとの思いにかられました。アメリカを東から西までうろうろしたときのアトランタ。あの街は南北戦争の激戦地でした。キング牧師の家もあります。あの人の言葉で、僕は読むと涙が出てきてしょうがない演説があるんです。浜さん、読んでいただけますか。読ませていただきます。」

「私には夢がある。
いつの日かジョージアの赤い丘で
かつての奴隷の息子たちと
かつての奴隷所有者の息子たちが
兄弟愛のテーブルに共に座るという夢が・・・
私には夢がある。
いつの日か私の四人の子らが
その肌の色ではなく
その品性によって評価される国で
生活するという夢が。」
キング牧師の演説より

「アメリカ史とは、差別の歴史だったような気もする。インディアン、黒人問題など、いまだに差別意識を持っている人もいるし。でもね、そういう人がいることを知り、またもうそういう人が少なくなったことを知るのも旅なんでしょうね。行って、見て、感じてわかることがいっぱいあるんです。」と。

インタビューから35年がたちました。安野さんは、かつて津和野の彼方の空遠くに見たものを、追い続けているのでしょうね。

たまに、こうして20年、30年前のお話を現代社会で読み返すと、はたして心の豊かさってなんだろう・・・とおもいます。齢を重ねるのもいいものです。

「いい人みつけた」への2件のフィードバック

  1. 等々、今年も梅雨入りの候となり、お楽しみの金曜日は
    朝からシトシト雨が降っています。
    ゆったりした気分で
    浜さんの世界にどっぷり浸っています。
    以前、滋賀の佐川美術館の催しで、安野美術館の紹介がされていて、ずっと気になっていました。
    小京都ブームの頃、津和野も話題になりましたね。
    その時は行けてないので 、今こそ行きたい❗と思っています。

    1. 浜美枝
      17:09 (1 時間前)
      To 自分
      ☆のかけらさん

      ご無沙汰いたしております。
      投稿ありがとうございます。
      木曜日にイギリスから戻り、金曜日に更新いたしました。
      そうですか・・・
      安野先生は私はとても尊敬しております。
      ラジオのスタジオでもキング牧師の朗読をさせていただきなんだか胸がいっぱいになりました。
      津和野の美術館はお薦めです。
      駅からすぐのところにあり、私は何度かうかがいました。
      いくつになっても少年のような心をお持ちなのは素晴らしいですね。
      そう、先生の絵本を孫に読み聞かせをしましょう。
      入梅し、山の樹木が生き生きしております。
      お元気で!

      浜 美枝

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