『ピエール・ボナール展』 オルセー美術館特別企画

「色彩の魔術師」と呼ばれるフランスの画家ピエール・ボナール(1867~1947)展を観に東京・六本木の国立新美術館に行ってまいりました。

今回の展覧会は画業を振り返る「オルセー美術館特別企画」。オルセー美術館はパリ、セーヌの辺にあるかつての駅を美術館した見やすく、光も感じられ、パリに行くとかならず立ち寄る美術館です。

そう・・・最初に<猫と女性あるいは餌をねだる猫>を観たのもオルセーでした。なぜか、このモデルの女性に興味を覚え、ボナールという画家の人生を知りたくなりました。女性の名は『マルト』。本を読むと二人が知り合ったのは路上とされています。

1893年。マルトは常にボナールの傍らにいて刺激を与えていた・・・と言われ後年に結婚届を出す際に初めて本名や年齢を知ったとありますが、そんなことってあるのかしら?

しかも<浴盤にしゃがむ裸婦>などは入浴という営みをボナールは写真に収め、キャンバスへ。さらに<男と女>では男女の営みのあとを描き、そのベットに腰掛ける女は光の中に。右に立つ男の姿からボナールと思われるその男の表情から何か・・・不思議な距離感を感じます。不思議な絵画だわ~でもフランスらしい優美さがある。

今回の展覧会ではフランスらしい愛情、性愛、をとても都会的に描かれた作品の数々に出会え、また都会から自然へとボナールの人生の遍歴を写真と合わせて観られることも素晴らしいです。

パリを離れてからは頻繁に旅を続けてイギリス、イタリア、スペインへと、時にはルーセルを持っての旅など「色彩の魔術師」と呼ばれたのは自然のなかで注がれる光の効果などを得たのでしょうか。

ゴッホなどと同じように日本美術にも深い感心をもち”日本かぶれのナビ”とも呼ばれていたそうですが、やはり「浮世絵」や「琳派」からの影響で絵画、木版画、工芸品など日本美術への感心の深さが感じられます。やはり、かつて、オルセー美術館で観た<格子柄のブラウス>はまさに日本の格子の柄をモチーフにしています。

今回の展覧会ではこうした絵画130点が観られます。瞬間・瞬間を・・・それは自然と対峙しても、ボナールならではの切りとり方で描かれています。

そして、最後に出会えるのが<花咲くアーモンドの木>です。絶筆といわれています。のびのびと枝を伸ばし、青空の中、白い花を咲かせるアーモンド。死が目前にあり絵筆も持てなかったといわれます。

甥に頼み作品に手を入れ続け完成させたこの絶筆には、生命への再生、生きることの意味、(第二次世界大戦を経験している)戦争を感じさせる絵画はいっさいありません。それは展覧会130点を見終わったあとに”生命・いのちの尊さ”を教えられたような気がするのです。

日常のなかから、自然のなかから、入浴から、性愛から・・・親友や妻など愛する人々を次々と失った喪失感を乗り越えての絶筆はこの展覧会で最後に出逢える幸福(しあわせ)の一枚の絵画でした。

12月17日まで。
国立新美術館公式サイト
http://bonnard2018.exhn.jp/

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